ふるさとと人への思いやりのある子供たちを
島根県教育委員会教育長今井康雄
校長先生方には日々教育現場を統括しながら島根の子どもたちの教育に尽力いただいており、感謝申し上げます。
さて、島根の教育がめざすところは、ふるさとに貢献する(できる)人材や、社会性を備えた生きる力(思考力、想像力、忍耐力、思いやり等)を持った人材の育成であります。
そのためには、ふるさと教育、キャリア教育、学力向上、読書活動、ふるまい向上、体力向上等の取り組みそれぞれがいずれも大切であります。その上で、今、特に力を入れて取り組むべきこととしては、
一つは、子供たちに自らの地域を誇りに思い、地域の未来を担うという気概を育てたいと思います。そのために、本年度は、島根にゆかりの深い「古事記」の編纂千三百年を迎え、東京、大阪での企画展や、高校生の文化発信、全国子供神楽大会等を実施するとともに、ふるさと教育のための新たな副読本を作成するなど、島根の歴史文化のすばらしさを子供たちが実感できるような取り組みを行いました。
今年は、「風土記」編纂の命が発せられてから千三百年。「出雲風土記」は全国で唯一ほぼ完全な形で現在まで写し伝えられています。大陸との交流をうかがわせる雄大なスケールの「国引神話」をはじめ、風景、地名の描写等古代出雲の世界を生き生きと今に伝えています。この「風土記」を通じて、島根の歴史の奥深さを子供たちに県民に全国に伝えていきたいと思います。
二つ目は、メディアの進歩はめざましく、子供たちの回りも携帯、インターネット、スマフォ等々大変便利になりました。そうした中、ネット中毒、メディア依存などの弊害から島根の子供たちを守るため、その対策に工夫をこらして取り組んでいきたいと思います。
また、最近は効率性を求めるあまり、結論を急いだり、明快な答えを求める傾向も強まり、人間関係にも潤いが少なくなってきたように感じます。世の中は単純には○×や白黒を付けられないことが大半です。子供たちには思考力、想像力などをしっかりと身につけさせたいものです。
三つ目は、いじめ対策は、今学校現場で最も苦労されていることの一つであると思います。よく言われることですが、集団生活の中では、「いじめ」はいつでもどこでも起こりうるものです。大切なことは早期発見、迅速・適切な対応で、深刻な「いじめ」を生じさせないことです。来年度に向けて、学校現場を支援する体制のさらなる充実を図っていきます。
ただ、深刻な「いじめ」が発生する根本は、忍耐力、卑怯を恥じる心、思いやり等が乏しくなってきた子供たち(大人を含めて)の心の有り様の変化であると思います。学校教育では、読書活動やふるまい向上、道徳教育等にさらに力を入れていきたいと思います。また、こうしたことは本来は家庭教育が担うべきものでもあります。互いに一層の連携を図りながら取り組みたいものです。
様々な教育課題に対処し、島根の教育の振興を図るために校長先生方の一層のご協力をお願いいたします。
『校長樹林第43号(平成24年度)掲載文』
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