教育長挨拶~平成22年度第1回県立学校長・事務長会議
はじめに
皆様方には、新学期早々のご多忙のところ、今年の第一回県立学校長・事務長会議にご出席いただきましてありがとうございました。
私は、この四月に教育長に就任いたしました。四月一日に辞令を受けて以来、今日まであっという間でした。以前教育委員会には、数年勤務していましたが、随分昔のことであり、全てのことが新鮮に感じる毎日です。四月一日の新規採用教職員の辞令交付式では、新規採用教職員一人一人と握手をし、辞令を交付しましたが、これからの島根の教育を担う若々しい人材を前にし、大変心強く感ずるとともに、私自身も身の引き締まる思いをいたしました。
今、教育を取り巻く環境は、大きく変化しています。私はこれまで県行政の中で、あるいはマスコミ等を通じて、外から教育行政を見てきましたが、随分多くの課題がある、それも困難な課題が多いという印象をもっておりました。昔であれば学校や地域が果たしてきた役割の多くが学校に投げかけられています。そうした中、皆様方も御苦労されていると思います。
私は、これまでの島根県教育の基本的な理念や精神を引き継ぎつつ、よりよい島根の教育をめざし、皆さんとともに考え、行動していきたいと考えております。
さて、この会議は、昨年から校長・事務長おそろいで出席いただき開催しているところです。申し上げるまでもなく、学校運営にあたっては、校長・事務長・教頭の皆さんが連携し、コンプライアンスを徹底しながら機動的、機能的に事務や事業を執行していただくことが必要であります。
そして、各高校にあっては、運営の最終責任者は校長でありますが、事務長の皆さんが会計等の面だけでなく学校運営全般に校長に十分協力して積極的に取り組まれるようお願いいたします。そうした意味もこめて、本日の会議は、両者に出席願っているところです。
次に、本県の教育課題について申し上げます。私もまだ、島根県の教育全体を把握したわけではありませんが、現時点で私自身が考えている課題について申し上げます。
(1)「宍道高校開校」について
かねてから準備を進めてきました学習時間選択制の宍道高校が初めての入学生を迎え、先日、すばらしい青天のもとで開校式・入学式が執り行われました。新聞報道でもありましたように、若いときに高校を中退された六十才の方が、子育て等を終えられ、このたび新入生として宍道高校に入学され、第二の人生をスタートされました。このことを含めて、これまでの定時制・通信制にはない新しいタイプの高校として、学習の履歴や動機も様々となっている生徒の多様なニーズに応えられるものと期待しております。同校が、島根の高校史に新しい足跡をきざんでくれることを期待しています。
(2)「学力向上」について
学力向上については、近年の島根教育の大きな課題の一つであります。昨年度から高校教育課に配置しました学力向上対策スタッフの調整監を中心に、義務教育課・高校教育課が連携した学力向上対策を推進しております。
また、昨年、学力向上と医師等の確保を目指した「夢実現進学チャレンジセミナー」を実施し、意義があったと聞いております。引き続き、この事業を実施し、社会的要請にも応えつつ、生徒の望む進路が確保できるよう努めることとしています。
今後、各高校と県教委が「チームしまね」として一体となり、高校生の学力がどう変化したのか、その原因は何か、学力向上のために何をどう進めていくべきなのか、十分に議論し、対応しながら、できるだけ早く結果を出していくことができるよう取り組んでいただきたいと考えております。
この課題は、高校だけでなく、小・中学校からの学習に対する意欲・習慣を育てることが何よりも大切であると思っております。最初に申し上げたように教育委員会内においても連携を図ってまいりますが、各高校におかれても、中学校との連携に十分に意を用いていただきたいと思います。
(3)「産業人材の育成及び県内就職の促進」について
県内就職については、生徒が学校で学んだことが生かせるそうした働きの場の確保が重要なことは勿論でありますが、私達教育委員会としては、産業界や地域との連携を深めながら、実践的な産業人材を育成し、県内就職の促進を図ることが重要であると考えています。
このため、昨年度から、専門高校における課題研究の拡充などを図っております。例えば出雲商業高校ではファミリーマートとの提携により「ぜんざいスイーツ」の商品開発を行いました。また、益田翔陽高校では地元のパン屋と洋菓子店との協働による米粉パンと洋菓子の開発に結びつけるなど成果を生んでいます。こうした今までにない研究事業は、地元で周知されることで、地域と高校生の相互理解の好循環を呼んでおります。今年度はさらに、離島・中山間地域の小規模普通高校にも拡充して事業を実施することとしています。
こうしたことにより、高校生にも、より地域・地元を見つめ直す、あるいは、地域の産業に興味を示す契機にしてもらいたいと思います。
また、雇用情勢の急速な悪化に伴い、高校生の就職も厳しくなってきており、昨年度から進路指導代替非常勤講師の配置を拡充したところです。
依然として厳しい雇用情勢ではありますが、関係者の連携した就職支援活動、県内中小企業への就職支援事業等、様々な県内就職支援施策が実施されたこともあり、三月末の就職内定率は九十九.一%、就職未内定者は九名と、過去六年間でもっとも少ない数となりました。今後は、未内定者全員が就職できるように引き続き取り組んでいただきたい。ただ、就職から進学へと進路変更を行った生徒もかなりいると思います。今後とも、生徒の進路確保及び地域と連携した実践的な人材育成に努めていただきたいと考えております。
(4)特別支援教育の推進について
特別支援教育については、県立特別支援学校に加え、幼・小・中・高校における特別支援教育の一層の充実を図るため、体制を強化することとし、四月からこれまで高校教育課の内室であった特別支援教育室を課並みの外室とし、また、発達障がいなど新しい障がい種への対応や高等部の生徒増への対応など、直面する様々な課題の解決に向け、今後の特別支援教育のあり方について外部の委員による検討委員会を立ち上げて検討することとしています。年内には、委員会から答申をいただくこととしております。
今後も特別な支援を必要とする子ども達への対応を進めて行くためには、特別支援学校間の連携、特別支援学校と高校との連携が必要不可欠と考えておりますので、校種を超えた広い視野で一体となって課題に対処していただきたいと思います。
(5)高校の授業料無償化について
この四月から専攻科を除く公立高校の授業料が無償化となりました。県では、先の二月議会で高等学校等条例を改正し、当面、授業料の納付を猶予することとしました。法律の施行を受けて、六月議会において法律との整合を図ることとしています。
なお、留年生や学び直しの生徒については、徴収しない方向で検討を進めております。この問題について、円滑な執行をお願いします。
(6)服務規律の確保について
これまで申し上げた点も含め、抱える課題を解決していくにはかなりのエネルギーを要します。全職員が一丸となって取り組んで欲しいと願っております。
そうした中で、近年、教職員の不祥事や不適切な事務処理が起きていることは誠に残念であります。内容的には、公金の取扱、交通違反、セクハラ、体罰等が主なものです。
特に公金の扱いについては昨年度は一昨年の反省を踏まえて、県費外会計の取扱要綱を見直し、一丸となって信頼回復に努めていた矢先に、再び教職員による同様の横領事件や不適切な事務処理が発生し、学校教育に対する信用が大きく揺らいでおります。
こうした不祥事は、その事柄により、原因も様々でありますが、大切な点は、管理職の皆さんの責任の重大さであると思います。特に、校長先生には、組織の責任者、リーダーとして、「プロ」の教職員の育成と資質の向上に努めるとともに、教職員への目配りにも十分配慮し、学校の組織マネジメントにあたっていただく必要があります。そして、悩みや問題を抱えている教職員が気軽に相談できるような雰囲気づくりに努めていただきたいと思います。
最初に申し上げた校長・事務長・教頭の皆さんが十分に意思疎通を図りながら、学校全体として、取組が進められるような組織づくりをお願いしたい、この問題については特に、強調して申し上げたいと思います。
(7)情報の受信力について
最後にお願いしたいのは、情報の受信力についてであります。学校経営にあたっては、アンテナを高く張り、社会や地域の動向に敏感であって欲しいということです。
社会や教育を取り巻く環境は急速に変化しており、また、社会や地域のニーズも多様化しています。今までの「常識」や「慣行」だけでは対応が難しい課題も多くなっています。そうした点に十分注意を払って対応していただきたいと思います。
もとより、流行に過度に動ずることなく、これまで培ってきた教育についての不易の信念には、しっかりと自信をもって事に処していただきたいということは、申し上げるまでもありません。
以上、本年度の諸課題について述べました。
今後、各校で抱える課題等に、教育委員会も一体となって解決に向けて取り組んで参ります。そして、今後も一層各校への支援等を図る考えであります。
これからの島根をつくるのは、人であります。その人をつくる教育という任務は、行政の中でも最も重要なものと考えています。島根百年の体計「ひとづくり」のために、今一度、原点・基本・基礎を大切にする精神的土壌の醸成に努めていただき、校長・事務長・教頭の連携のもと、全教職員が一丸となって島根の教育に取り組んでいただくことをお願いして、挨拶とさせていただきます。
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