県議会答弁:令和5年11月定例会(福井議員質問分)令和5年12月8日
※関連する知事答弁から掲載しています。
(議員質問)
知事が国に要望した学習指導要領の見直しに伴い、県でもできる事を検討してほしいと教育委員会にお願いし、具体的には島根が誇ってきた「ふるさと教育」の運用の見直しを依頼した。この事の真意について伺う。
(知事答弁)
本会議場でも再三申しあげております、今年の四月に実施されました、全国学力・学習調査の状況を見ますと、子どもさん方に基礎的・基本的な学力がしっかりと身につけられているというふうに思うのが難しい結果が出ている。私は、その理由の大きな要因として、現在の義務教育の内容に、この必須の内容に加えて、できた方がいいこと、がたくさん盛り込まれている、長年の間盛り込まれてきたということで、その結果、盛りだくさんになっているということが要因としてあるのではないかということ、そして、教職員のみなさんの状況につきましても、確かな学力の育成ですとか、個別の生徒さんの学習のつまずきに対応する時間が充分にとれていない、といった課題がございます。
生きる力を育むということは、今の学習指導要領の基本的な理念だったり、あと、社会の在り方として、誰一人とり残さないといったことがよく言われますけれども、そういったことをちゃんと実現しようと思えば、私は、難しい大学に通るような、そういう学力を身につけてほしいと思っているわけでは一切ありません。私は日常生活で、我々が無意識のうちに繰り返しやっているようなこと、それに必要な知識や能力といったものを、身に付けてもらって義務教育を終えてもらうということ、それが、義務教育をやっている基本・根本的な理由だと私は思っています。
そういったことを実現することが、義務教育の役割でありますし、義務教育に携わる、教育の世界の方々も、予算措置をしていく立場の我々も、義務教育に携わる大人の責任だと私は思っております。
そして、この基礎的な学力だけではなく、学校での指導上の諸課題に対応するためにも、今よりも子どもさん方と向き合う時間を教職員のみなさんに確保する必要があると考えています。
そのため、先月、全国知事会議におきます提言の中に盛り込んでもらう、また、今回の秋の重点要望から本県の重点要望にも盛り込んでいただきまして、それぞれ提言・要望させていただきました。そして、11月上旬の閣僚との意見交換の中では、盛山文部科学大臣に島根県として、問題提起をさせていただきました。
しかしながら、大臣の回答は、至極当然ではあるのですが、中央教育審議会の審議結果を踏まえて取り組んできたことなので、中央教育審議会でしっかりと検討してもらおうというご回答でありました。まだバツとも言われてないですけど、マルとも言われていない状況でございまして、シビアに言うと、学習指導要領見直しということが今後採用されるかどうかということは、現時点では不明ということで、客観的に見れば難しいだろうと。放っておけば見直してくれるという状況があるとは思えない。
また、これがより深刻なんですけれども、仮にハードルをクリアして採用されるとしても、学習指導要領の改訂というのは、大体10年に1回のペースとなっております。前回の小中学校の学習指導要領の改訂が平成29年であったことを踏まえますと、今回の、仮に見直すという内容が実現するとしても、それが実際に適用されるのは、だいぶ先ということになるわけであります。
したがいまして、この今のような子どもさん方の基礎学力が十分に身についていないのではないかという疑念がある状況に対して、改善策を打つということもなく、何年も置いたままで、国の対応を待ち続けると、しかも、その国の対応というのは、そういう結果は来ないかもしれない状況でございますので、要望しました。
政府の対応を待ちますということは、よくあるパターンでありますけど、何も改善せずに次の改訂が行われ、その次の改訂といいますと更に10年後です。20年弱先でしかない、といったことになりますので、そのため、県として、独自でできることはないかという観点から、この独自に取り組んでいるもので見直せるものは見直してもらう必要があると私から考えまして、県教育委員会に対しまして、できることを検討してほしいということを、10月末に依頼したところであります。
私も、県教委から詳しく話を聞いて、最近認知したんでけども、授業の構成というのは、基本的には学習指導要領に基づいて編成されておりますので、都道府県独自の裁量で付け加えることができる余地というのはわずかであり、本県の場合、この裁量に該当して、見直せる余地があるというものが、このふるさと教育しか見当たらなかったという内実でございます。
そのため、基礎的な学力の定着における、このつまずきへの対応、対応策、なおこれは具体的には、どういう風に対応するかを考えておかなければならない、時間を作るだけじゃいけない、そういう検討に加えまして、県独自に取り組んでいるふるさと教育につきましても、当然、いい取組でありますので、教育の内容を担保した上で、運用の見直しを検討してもらうようお願いしたところであります。
当然、本県のふるさと教育には、ふるさと教育を受けられた子どもさん方が大人になってから、どこに住んでいても、住んでいる地域に関心を持ち、ふるさとに関心をもち、地域課題の解決に関与したり、地域の方々との関わりを持って、一緒に地域の発展を支えていく人になってほしい、という強い願いが込められています、このことは、重々承知をいたしております。その上で、ふるさと島根の教育資源を活用することによって、この学習効果がより高まり、確かな学力を育むことにも寄与する、そして、島根に残ろうと、また、一度出ることがあっても、いつか戻ってこようと思ってもらう動機付けになっている、という効果も発生していると思っております。
また、このふるさと教育に、その多くの皆様方にご協力をいただいておりまして、学校の先生方だけではできない、本物を子どもさん方に伝えるという役割を熱心に果たしていただいています。そういったことが、子どもさん方に、学習効果を更に高める結果を生み出していただいていることに感謝しているところでございます。
今回の見直しのお願いは、決してこれまでのふるさと教育が取組や成果が不十分であるからということではなく、また、今後取り組まなくてもよいというふうに評価しているわけでも決してございません。ふるさと教育は、島根創生計画にも掲げておりますけども、この、島根の子ども達に生きる力を育む、基礎学力と同じような、役割を担ってもらっていると思っておりますし、大切な教育活動であることの認識は変わらないものであります。
そのため、ふるさと教育の運用を工夫するということで、教職員の皆さんが子どもさんに向き合う時間を確保した上で、これまでの事業効果、教育効果を落とさずに、これからも持続可能な事業として実施していただけるように、県教育委員会に検討をお願いしたところであります。
県教育委員会においては、実際に事業を差配されます市町村教育委員会とよく相談しながら進めてほしいというふうに思っているところでございます。
県教育委員会へのお願いは、窮余の策というところでございまして、確かに先ほど申しましたように、決して進学実績とか、全国学力調査の順位を上げるとか、私はそんなことは毛頭、私はそんなことはどうでもいいと思っているんです。ただ、本当にその実生活をする上で、本当に使わなきゃいけない、身に付けていないと困ることが身に付けられずに、社会に出していってしまうことが、その子どもさんの人生の幅を大変狭めてしまうということ、これを、そういうことができるだけ生じないように、今できることを、今やらなきゃいけないんじゃないかと思っているところでございます。
拙速ではないかとご批判もあろうかと思いますけれども、残念ながら、国の対応を待って、先ほど申し上げたように状況が何も改善せずに、毎年毎年、掛け算や割り算やそれを同じような教わり方をしても同じ結果が繰り返されるということが何年も続いてしまうということが、本当に子どもさんにとっていいのかどうか、ということとの兼ね合いとの苦渋の選択でございまして、本当に本来的な学習指導要領の中で、もっと削るところをつくっていただいて、そこを子どもさんに向き合う時間に充ててもらうことが本意ではありますけれども、それが実現するのに時間がかかるということで、やむを得ずこういった形でのお願いにさせていただいたということで、ご理解を賜りたくお願い申し上げる次第でございます。
(議員質問)
今、知事から「ふるさと教育」の運用の見直しについて、その真意を聞いたが、これを受けて教育委員会はどのような見解を持っているか、教育長に伺う。
(教育長答弁)
市町村では、ふるさと教育を教育の中心に据え、身近な本物の教材としての「ひと・もの・こと」を活用し、子どもたちの育成に取り組んでおられます。
また、ふるさと教育の実施に当たっては、市町村が配置するコーディネーターや公民館職員、そして多くの地域の方々の大きな協力をいただいており、感謝申し上げます。
県教育委員会では、このふるさと教育に対して、交付金を交付して支援しております。この交付金の交付条件として、小中学校の全学年・全学級で、年間35時間以上ふるさと教育を実施することとしておりますが、各学校では、各地域の実態に応じた特色ある活動が、35時間を大幅に上回る時間、実施されているところもあります。
一方で、ふるさと教育を行うに当たっては、教育課程と関連付けた体験活動の立案、外部人材・組織との交渉、学校内外での事前の打ち合わせ、活動後の経費の支払い等の事務手続き等に教員が時間を要することがあり、個別の学習支援やノート添削などの子どもと向き合う時間に影響が出るといった課題があります。
このため、ふるさと教育の質を担保しつつ、子どもと向き合う時間が確保できるよう、交付金の交付条件である「年間35時間以上」を「年間20時間以上」に緩和したいと考えております。
そして、何よりも大事なことは、これを機会に、市町村教育委員会のご判断で活動の見直し・精選を促進していただき、無理のない教育課程を組むことを可能にすることで、教員が子どもと向き合う時間を、今よりも増やすことが出来るようにしたい、と考えております。
具体的には、県教育委員会は、指導主事・社会教育主事が連携して授業や活動の精選等の支援を行うこと、市町村教育委員会では、各中学校区内の小学校と中学校が同じねらいで、同じ活動をするなどの重複を避けたり、学習をより深めていく等の観点から、小中9年間の学年進行を考慮してふるさと教育を推進するよう体系の点検を行っていただくことを考えております。
なお、小中学校1校当たり7万円とした現在の交付金額については、もともと額も少額でもあり、運用見直し後も最低限の活動が実施できるようにするため、変更しない考えでございます。
今回の見直しを機に、市町村教育委員会でふるさと教育の内容を点検していただき、活動の重複が整理され、無理なく教育課程を組むことができた結果として、ふるさと教育の授業時間を仮に20時間まで減らすことになったとしても、交付金を交付することが可能となります。
反対に、点検の結果、すでに充分に教職員の負担が軽減されている場合には、これまでどおりの教育内容をそのまま行っていただくこともあると考えております。そのような場合も多いかも知れません。
現在、これらの見直しについて、市町村教育委員会のお考えを伺い始めたところでございます。
お問い合わせ先
島根県教育委員会
〒690-8502 島根県松江市殿町1番地(県庁分庁舎) 島根県教育庁総務課 TEL 0852-22-5403 FAX 0852-22-5400 kyousou@pref.shimane.lg.jp