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県議会答弁:令和6年9月定例会(出川議員質問分)令和6年9月24日

(議員質問)

 教育現場では、2022年度文部科学省委託事業「学力調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究」及び「島根県子どもの生活に関する実態調査」の調査結果をどのようにとらえ、要因の分析をされているのか。また、その調査結果をどのように施策に生かしているのか、その成果についても併せて伺う。

 

(教育長答弁)

 議員がお取り上げになった調査結果から、家庭の経済的困窮が子どもの学力に一定程度影響を与えていることがわかります。このことから学校現場では、例えば、学びに向かう意欲が急に減退したといった児童生徒の変化が見られた場合、その背景に、例えば、保護者の方が失業したなどの家庭の経済的困窮が生じたのではないかとの視点も持つ必要がございます。こうした場合、学校では児童生徒や保護者からの相談に乗ったり、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーといった外部人材も参加した校内のケース会議で対応を確認し、場合によっては市町村の福祉部局につなげ専門組織に対応を委ねます。こういった学校現場での対応は、経済的困窮に限らず、ネグレクト、虐待、ヤングケアラー、家庭不和といった家庭内に起因する他の背景でも同様であります。加えて、いじめ、人間関係、さまざまな要因による無気力など、複合的な背景が関連した場合には、つなげる専門組織を医療、警察などにも広げて対応します。教員は児童生徒の様子を多角的な視点で観察し、一人ひとりと信頼関係を築くことで、学習に向かえない要因やそれぞれが抱えている課題を早期に察知できるよう努めております。学校はこうした児童生徒に起こっているさまざまな出来事を早期に発見しやすい場であります。学校教育に起因しない原因の根本的な解決は学校では不可能であり、学校が果たす役割は児童生徒に表れた例えば学力不振そのものへの対応であります。急なものに限らず、家庭の経済的困窮を背景とする学力不振への学校の対応は、ネグレクトやその他の背景も含めた複合的なものを解決する対応と異なった特別なものはございません。
先週の尾村議員のご質問に対する答弁の中でも触れましたが、これからの学力育成策として、児童生徒の分数が分からないといった教科上のつまずきと、例えば自分の左右は分かるけれど、向かい合った人の左右がわからないといった空間認識、質感・量感などのつまずき、この二つのつまずきを解消していくための方策として、全国学力・学習状況調査の活用と、たつじんテストの活用を考えています。例えば経済的困窮が、子どもたちから広い空間での遊びを奪い、また対人関係の希薄さを生み出し、そのことが空間認識の成長を阻害しているかもしれません。議員は、この因果関係を調べるべきとのご意見ではないかと推察いたしますが、空間認識を成長させるために学校ができることすべきことは、背景の経済的困窮を解決して、そこから成長を促すのではなく、成長できていない部分を捉えて、さまざまな指導方法により個に応じた教育を行って成長を促すことであります。先ほどの相手の左右が分からないという例の場合、まず実際に右、左と書いたシールを貼り、皆で動く中でシールを確認しながら、相手がどういう場合にどちらが右手なのか左手なのかを体験しながら学ぶ感覚を身に付けることが必要です。この対応は経済的困窮に限ったものではなく、ネグレクトなどの背景であっても同じ対応となります。したがって経済的困窮に特化した因果関係を分析調査することは必要はないと考えています。私はさまざまな調査研究により明らかになったいわゆる貧困の連鎖と言われる現象を断ち切るために、行政が経済的困窮家庭の子どもだけを集めて福祉的観点から学校外での学習支援をすることは、社会的に許容されると考えていますし、現に、議員がお取り上げになった例もございます。そこでは経済的困窮であることそのものに対して無料で支援するといった対応は考えられますが、指導方法に経済的困窮に特化したものがあるとは思いません。やはり私は、最善の指導方法は学校における指導と同様に、一人ひとりに寄り添い、個別のつまずきを一つ一つ解消していくことに尽きるのではないかと思います。
県教育委員会といたしましては、児童生徒のさまざまな背景が学力に関係があることを真剣に受け止めておりますので、経済的困窮を背景として学力不振である児童生徒を含めてすべての児童生徒の学力育成を小中学校の設置者である市町村と一緒になって図ってまいります。


 

 


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