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県議会答弁:令和6年9月定例会(尾村議員質問分)令和6年9月19日

(議員質問)

 文科省は、全国学力テストについて「数値データの上昇のみを目的にしていると取られかねないような行き過ぎた取り扱いがあれば、それは調査の趣旨・目的を損なう」とする通知を出している。しかし、「行き過ぎ」は全国の子どもをテストして点数を比べるという制度そのものに原因があり、抽出調査にする以外に解決の道はないと考えるが、如何か。

 子どもの自己肯定感を損なわせ、不健全な競争教育に繋がりかねない国の全数調査による結果公表は行うべきではないと考える。ましてや、学力調査に関する数値目標を設定することなど論外と考えるが、所見を伺う。

 現在、国が4月に全国学力テストを実施し、県が12月に学力調査を実施している。その上、益田市や出雲市など県内の市町でも学力調査を実施しているところがある。テストを受けるのは子どもたちであり、子どもにとって、国であろうと県であろうと市町であろうとテストを受けることに変わりはない。島根県学力調査については、子どもたちや学校現場への負担となっていないかなどの弊害についての検証を行うべきである。その上で、必要なる見直しを行うべきと考えるが、所見を伺う。
 

 

(教育長答弁)

 関連しますのであわせてお答えします。
全国学力・学習状況調査が全数調査であることは、児童生徒一人ひとりの個別の学習状況を見取るために、有効な手段だと考えております。例えば、間違えた問題の解答類型を見ていくことで、この児童生徒はどのような考えをして、何につまずいたのか、このクラスはどういう状態であるのか、学年全体の様子はどうか、などを確認することができます。
学校では、自分の学校の何年生の、どの単元で習得が十分でなかったかを確認し、授業の改善に役立てることができます。仮に、小学校で身につけるべき基礎・基本が身についていない場合、中学校でその基礎・基本をやり直す必要が生じ、中学校で学ぶ応用的な内容を学習するための時間が不足してしまいます。
このようなことから、一人ひとりの児童が、小学校の各学年の段階で、どの様なつまずき等があるのかを確認し、小学校6年生の時点で分からなかったことをそのままにせず、中学校に送り出していくことが重要であると考えています。
具体には、小学2年生のかけ算や3年生のわり算が十分に理解できていない場合、そのまま進級すると、5年生の比例や割合、中学1年の方程式の学習に支障をきたします。子どもがしっかり理解できるよう、該当学年での授業を見直し、基礎・基本を固めることが大切です。
全国調査の問題は、非常によく練って作られており、授業改善の効果や、子どもたちの理解度を検証するためにも、有効であると考えています。教員が全員で、全ての問題でなくとも、その学校で課題のある問題を解き、分析をし、課題の原因が明らかになった時、その問題を、例えば6年生の最初の授業で毎年度繰り返し実施することで、学校全体の授業改善の進捗状況を経年で確認することができます。
学力育成への取組は、子どもたちが今より少しでも理解が進み、自ら考え、論理的な思考ができるようになること、自らの進路決定の動機となり、実際にそこに進むことができるようになること、実社会に出たときに困らないこと、などが目的であります。これらの目的を実現するために、学習において一人ひとりの子どもたちがつまずかないよう、また、つまずいたとしても教員が個に応じて支援をしていくことができるよう取り組むことが重要であります。数値目標の設定や、公表された結果の順位づけなどは、本筋ではなく、私は、行う考えはございません。したがいまして、そういった点から生じる例えば事前対策などの悪影響を排除するために、抽出調査とする必要はなく、ご説明した通りその効用から見て、全数調査が望ましいと考えております。
私は今年の春から、市町村の教育長さんと一緒に、主に小学校を訪問しています。各学校における、学力育成の取組について、校長から話を伺い、全国調査の問題を効果的に使って、卒業までに、子どもたちが、しっかりと力をつけることができるよう、授業改善や家庭学習の取組を進めていただきたいという提案を行っています。
今年度実施した「学びの基盤に関する調査」いわゆる「たつじんテスト」では、これまであまり取り上げられることもなく、子どもたちの個々の状況について全く分からなかった空間認識や量感・質感などでのつまずきを把握して子どもの指導に役立てることを試行しています。この結果分析を行いながら全国調査の活用を進める中で、県学力調査を含めて、今後の学力向上対策について市町村教育委員会とよく意見交換をして考えてまいります。


 

 

(議員質問)

 教員が専門職としての役割を発揮し、子どもたちに向き合うには、教員の異常な長時間労働をなくす必要がある。現状を放置すれば、専門性が発揮できないばかりか、過労死や教員不足をますます悪化させることになる。現場の要求は、授業の持ち時間数の上限を定め、教員の基礎定数を増やすこと、残業代不支給制度の廃止に取り組むことである。文部科学省は、来年度の概算要求で、残業代不支給の代わりに、月給に一律4%上乗せする「教職調整額」を13%にするとしているが、この措置は、残業代を固定化することによって、「定額働かせ放題」になっている問題の根幹を固定化し、長時間労働の常態化を放置するものと考えるが、所見を伺う。

 

(教育長答弁)

 昨年度の教職員の時間外勤務は、全校種の月平均で34.6時間と、働き方改革プラン策定前の平成30年度から、約47%減少しております。しかしながら、重点期間として取組を進めた令和元年度から3年度までの間に約44%減少してからは、横ばいとなっています。
先ほど申し上げましたとおり、今年度、市町村の教育長さんと一緒に小学校を中心に学校訪問をしております。現在、約50校の訪問を終えました。1校1校で、生活時程や総授業時数の見直し状況、サポート人材の配置や、地域のご協力を含めた外部委託の状況などを確認し、他校の取組を紹介しながら、個々の学校に応じた有効な対策を私から提案しています。
午前中の園山議員のご質問に対する答弁のなかで、このテーマでの学校訪問を一旦終えると申し上げましたが、今後は、各学校に個別に提案した内容について、各市町村内の校長会で情報共有したり、市町村の教育長さんと意見交換を行っていただくなど、多くの学校で様々な具体的な取組が進むよう期待しております。
引き続き、このような取組により、教職員の総労働時間を減らし、子どもに向き合う時間や教員がリフレッシュできる時間を生み出せるよう働き方改革を進めてまいります。
また、学びの質の向上と教員の持ち授業時数の軽減に向けた教職員定数の確保につきましては、文部科学省が、これに向けて4年度から小学校の高学年において、教科担任制を進めており、7年度概算要求では、これまでの高学年に加えて、中学年に拡充する方針が示されました。これらの動向を注視しつつ、今後も、国に対して、基礎定数と加配定数を十分確保するよう、要望を行ってまいります。
標準授業時数のさらなる削減につきましては、学習指導要領の見直しが必要であり、このことについても国に対して、引き続き、要望を行ってまいります。
なお、現状では教員不足により一部の学校において、欠員が生じており、また、常勤の代わりに、やむを得ず非常勤講師を配置している場合もありますので、引き続き、教員の確保に努めてまいります。
議員がお取り上げになったとおり、国において、現在、教職調整額を引き上げる検討がなされております。6月議会において、須山議員の一般質問に知事がお答えしたとおり、中央教育審議会の特別部会におきましては、教員の業務は教員自身の裁量に委ねる部分が大きく、教員の自主的・自律的な判断に基づく業務と、管理職の指揮命令に基づく業務とが一体となっており、時間外勤務命令になじまないとの考え方が示されております。仮に、時間外勤務命令に基づき行うこととなれば、学校の管理体制の見直しも必要になると思います。
国においては、予算編成などを通じて政府としての考え方がまとまると思いますし、その後、法律改正作業や予算案への盛り込みにより、国会での審議が行われると思いますので、その状況を注視してまいります。


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