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県議会答弁:令和6年6月定例会(須山議員質問分)令和6年6月18日

(議員質問)

 「しまねの学力育成プロジェクト」のこれまでの取組状況と成果について伺う。

 

(教育長答弁)

 4年度から5つの市でモデル的に実施している「しまねの学力育成プロジェクト」では、普段の授業を、勉強が分かって、わくわくどきどきする授業に変え、子どもたちが論理的な思考ができるようになり、自分の言葉でそれを語尾まできちんと話したり書いたりすることまでできることで、学力がより身につくようになることを目指しております。
実施している5つの市の取組例として、参加教員一人ひとりが、自分自身が授業を行う意識で取り組めるように、参加教員同士で指導案を作成して代表者が授業を行い、学習指導の改善について話し合うまでをひとつのパッケージとする研修の実施、めあてと振り返りを意識した「授業スタンダード」を市内全ての学校で実施、また、研究校では、島根大学や松江高専、NPO法人等による本物に触れる体験活動などが実施されています。
現在、約2年間の取組を終えたところですが、一つには、言語活動を重視する授業、解答を求めるよりプロセスを重視する授業、児童生徒が最後まで説明しきる授業など、児童生徒の主体性を引き出す授業が多く見られるようになった。二つには、算数・数学科の学習状況に変容が見られ、「算数・数学の勉強は好き、大切、よくわかる」の質問に肯定的な回答をした児童生徒の割合が増加した。三つには、ICTの活用により、学習過程の中に、子ども同士で考えを伝え合う場面が増えてきた、などの変化が現われた学校もあります。
昨年度11月に開催した県教育委員会主催の「しまね教育の日フォーラム」で、5つの市に実践の一部を紹介していただき、県及び市町村の指導主事がその取組を共有いたしました。また、これらの取組から、参考にしたいと思う点を各市町村教育委員会で活用していただいております。本年度が最終年度となりますので、3年間の取組の成果と課題を検証し、横展開してまいります。
 

 

(議員質問)

 今年度から実施する「たつじんテスト」の具体的な内容と、その成果をどのように測り、授業にどう生かそうとしているのか伺う。


(教育長答弁)

 深い子どもの理解に基づいた誰もが伸びる授業を目指すため、今年度、モデル的に一部の学校に対して、「学びの基盤に関する調査」を実施しております。
これは、いわゆる「たつじんテスト」と称される「学びの基盤に関する調査」を活用して、教科学力の基盤となると考えられる、一つには、「言葉、語彙」といったものであるとか、二つには、「数、形、量」といったものであるとか、三つには、「思考力、推論力」など、における一般の学力調査では見取れない学習のつまずきを、客観的な分析をもとに把握して、それに応じた支援を行うことを目的としています。
この「たつじんテスト」では、例えば、0と100だけが書かれた数直線を与え、「定規を使わずに、18だと思う箇所に印をつけなさい」といった問題が収録されています。「18」の場合、100を目分量で10等分して20に近いところに線を引く、あるいは、100を4等分して、25に当たるところから少しだけ0に近いところに線を引くといった方法で、解答ができます。このような方法が使えるということは、整数が等しい間隔で並んでいることや、数の相対的な大小について理解していると言えます。
これまでの他県での調査結果によると、小学校3年生で、この問題に正しく答えることができたのが40.4%であり、この問題ができない子が現に一定数いるという事実や、そういった数の相対的な大小の概念が持てない子どもに対しては、分数や小数を学ぶ時に特段の配慮や支援が必要であることが分かった、という事例がございます。
この「たつじんテスト」は、各教科の各単元の導入で活用したり、教材の一部として活用したりすることも可能です。どの子ができて、どの子ができなかったか。なぜできないのか。また、子どもたちが勘違いしている点、例えば、「小数より分数の方が大きい」とか「文章問題に『少ない』という言葉が出たら引き算と考える」など、何が原因でつまずいているのかを教員が理解し、授業改善をしていくことが大切です。
子どもたちの声を聴く、実態をしっかり把握する、日々、教員が当り前にやっていることではありますが、具体的なつまずきを把握するひとつのツールとして、この「たつじんテスト」が活用できるのではないかと考えています。
 

(議員質問)

 誰もが分かりやすい目標値の設定が必要と考えるが、所見を伺う。

 

(教育長答弁)

 学力の育成、向上への取組は、子どもたちが今より少しでも理解が進み、自ら考え、論理的思考ができるようになること、自らの進路決定の動機となり、実際にそこに進むことができるようになること、実社会に出たときに困らないことなどが目的であります。
この目的を実現するために、子どもたちがつまずかないよう、また、つまずいたとしても自ら克服できるよう、先程申しあげた取組や、全国調査なども活用しながら、児童生徒一人ひとりに向き合うことが必要であると考えています。
全国学力・学習状況調査により測定できるのは、学力全体からみれば、その一部分であります。
したがって、この調査結果を、先ほど述べた目的を達成するための評価値とすることは十分ではなく、また、その数値結果のみにとらわれることで、全体を正確に捉えることができなくなる恐れがございます。
こうしたことから、学力調査に関する数値目標を設定することは、難しいと考えております。

 

(議員質問)

 教育職員の業務量を考えた場合、県単独事業で実施をしている学力調査については廃止すべきと考えるが、所見を伺う。

 

(教育長答弁)

 4月に行われる全国学力・学習状況調査の結果を踏まえ、多くの学校が夏季休業中に結果を分析し、児童生徒一人ひとりの学習状況を客観的に把握するとともに、授業改善に取り組んでいます。また、県の調査を12月に行うことで、その間の課題の改善や学習状況等を把握し、年度末に向かってその学年のうちに身に付けるべき力が習得できるように指導するなど、各学校の学力育成の取組の評価・改善に役立てております。
この1年間の取組は、学力育成のPDCAサイクルとして行っており、教員の業務として最も大切なものの一つであり、最優先に行う必要があると考えております。したがって、これらの取組が十分行われるよう、他の業務を精選する必要がございます。
先ほど申し上げました「しまねの学力育成プロジェクト」は今年度までの取組であり、また、「たつじんテスト」は今年度、試行として実施しております。
これらの結果が、近いうちにまとまりますので、それを受けて、具体的に学力育成のPDCAサイクルを今後どうしていくのか検討することとしております。
そのため、今年度は、これまでよりも市町村の教育長とお会いする機会を増やし、また、一緒に小中学校の訪問も行っております。各学校の校長と教頭から、個別に学力育成の取組や、働き方改革の取組を聞き取り、時間の許す限り、授業の様子も見ながら、学校の実態把握に努めております。
今月末までに、全小中学校の約1割に当たる30校を訪問することとしておりますが、まだ訪問していない地域や学校がございますので、現場の実態をよく把握しながら市町村と意見交換をし、今後の学力育成のPDCAサイクルの在り方について、県学力調査を継続するか否かを含めて総合的に検討してまいります。


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