県議会答弁:令和6年2月定例会(絲原議員質問分)令和6年2月21日
※関連する知事答弁から掲載しています。
(議員質問)
知事に今の日本の学校教育の現状についての認識を伺う。
(知事答弁)
学校教育には多岐にわたる課題があると承知いたしておりますけれども、私がとりわけ重要と考えておりますのは基礎学力の向上であります。
議員からもご紹介いただきましたとおり、昨年4月に実施されました全国調査での小学校6年生の算数の問題の平均解答率が55・5%にすぎず、全国の約半数の児童が解けていないということが明らかになったわけでございます。この結果は、全国の小学生の半数が掛け算や割り算を実生活に活用出来ていないか、あるいは、それ以前の掛け算自体、割り算自体が習得出来ていない可能性を示しております。日本の小学校が、子どもたちにあまねく基礎的・基本的な学力を身に付けさせることが出来ていないことが、これは抽出調査ではなくて、全国の全数調査で明らかになったというふうに言えます。
私は、大学入試などで問われるような内容が出来るようになるために、逆算して学習内容を学年別に設定をしていくので、そもそも大学入試で問われる内容を高度化され、それが小学校段階の学習内容まで及び、小学校1年生の時点から学ぶことが盛りだくさんになりすぎていると、私自身は確信をいたしております。その結果、子どもたちが習得したか、つまずいているかを確認する間もなく次の学習に進んでいかなければならないという状況になっているのではないか、と考えております。
最初に取り上げました算数の問題が出来ていないということは、2年生の「掛け算」が出来ていないか、3年生の「割り算」が出来ていないか、5年生の「単位量」という概念が理解出来ていないか、どこが出来ていないかを把握して、そこから改善していく必要がありますけれども、そういうことを学校の現場で出来ていないという状況になっていると理解をいたしております。
つまずきに気が付けないのか、または気が付けたとしてもケアをする時間が取れず、そのままにしないといけないという状況になっていると考えざるを得ませんので、こういった状況というのが日本の学校教育、義務教育の最大の問題であると考えているところであります。
授業につきましては、学習指導要領の内容が盛りだくさんで、先生方が追い立てられているような状況で教えざるを得ない状況になっていると思います。学校の先生方に余裕があるのだけどそれをやってくれてないとは、一切思っておりません。
以上のような問題認識を基にいたしまして、学習内容を基礎・基本を中心となるよう、削減をするといった内容の学習指導要領の見直しを、重点要望や全国知事会を通じて訴えてまいりましたし、昨年秋の政府主催の全国知事会議では、直接、文部科学大臣にもこの問題をそのまま伝えまして訴えたところであります。残念ながら、「中央教育審議会で決まった内容なので、中央教育審議会でよく検討してもらいます」という手続き論のご回答しかいただけませんでした。
学習指導要領が改正されるかどうか、されないかもしれません。されるとしても、長期プロセスで検討されますので、すぐには直ることはありません。
したがいまして、当面は、県内において子どものつまずき対策を行いながら、授業をしっかり見直すことで、集団で行う授業の中でも一人ひとりのフォローをしていってほしいと願っているところでございます。
基礎学力をしっかり身に付けたうえで、段階的に学習を進めていかないと十分な教育効果は得られませんし、義務教育を終えた後に、日常生活・社会生活を送るうえで大変な苦労をすることになります。
私が求めている基礎学力というのは、義務教育段階の基本的な内容でありまして、それ以上の力を身に付けて、難関大学に進むとか、専門的な学びを身に付けるといったことは、これも大事ではありますけれども、自分の将来の選択肢を拡げていくためにも、義務教育の内容の習得が必要不可欠であります。
こういうことを実現するために、学習内容の重点化のための学習指導要領の見直しや、教員定数やスクール・サポート・スタッフなどの充実など、国における大きな枠組みの見直し、大きな枠組みを改善するように、重点要望や全国知事会を通じて政府に訴えていくとともに、義務教育は市町村立小中学校で基本的に担っていただいておりますので、市町村教育委員会において、こういった問題認識を共有していただいて取り組んでいただけるかどうか、県知事として注視をしてまいりたいと考えておりますし、市町村長さん方にもそういう期待をしていきたいと思っております。
そういったことにつながるように、県教育委員会には、しっかり取り組んでいただきたいと期待しているところでございます。
(議員質問)
県として社会や日常生活で必要となる基礎的な学力向上にどのように取り組むのか伺う。
(教育長答弁)
まず、来年度から新たに、小学校低学年段階における学習のつまずきを把握し、授業改善や子どもたちの学習支援を行うための調査を初年度は抽出ではありますが、実施したいと考えております。
学力調査等において、どの問題ができていないかは把握できますが、なぜ、その問題ができていないのか、学習の内容の、どの段階で、何につまずいているのかは、子どもたち一人ひとり異なります。
近年の学力調査結果の分析から、小学校5年生から中学校3年生において、算数、数学のように特に学習内容に系統性のある教科においては、下の学年で習ったところまで遡って指導が必要になる場合があることが、全国的にも明らかになっています。
既に習った学習内容におけるつまずきは、次の学習内容の理解に影響を与えることが多く、児童生徒の学力の育成を図るためには、特に小学校の低学年段階において、どこで子どもがつまずいているのか、また、それはなぜなのかを把握し、学習支援につなげていくことが大切です。
この調査は、子どもを理解し、教員の指導に活用できる調査であり、教員が、知識や経験による対応ではなく、客観的な分析をもとに、授業改善の視点をもつことが期待されます。
このために必要な経費を、当初予算案に盛り込んで、今議会に提案しております。
二つ目として、4年度から5つの市でモデル的に実施している「しまねの学力育成プロジェクト」では、普段の授業を、勉強が分かってわくわくどきどきする授業に変え、子どもたちが論理的な思考ができ、自分の言葉でそれを語尾まできちっと話したり書いたりすることができることで、学力がより身に付くようになることを目指しております。来年度が最終年度となりますので成果、課題を検証し、横展開してまいります。
三つ目として、市町村と県の教育長が一緒に主に小学校を訪問して、個別に学校の実態を把握していきたいと考えています。
冒頭に述べました、つまずきに関する調査の結果や学力育成、働き方改革、放課後児童クラブを含めた家庭学習の充実、ICT活用などをテーマとして、学校設置者と共に学校管理職との意見交換を行うことで、個別に現実的な対応・対策がとれると考えております。
四つ目として、市町村教育長全員との会合を、これまでの年一回から増やしたいと思っております。先程の学校訪問で得た知見などを共有し、意見交換をして横展開を図りたいと考えます。
五つ目として、これまで四月実施の全国学力調査の結果を踏まえて秋に実施していた、五つの教育事務所管内ごとの市町村教育長との学力育成会議の形式を改めたいと思っています。各市町村と県との、一対一の会議として、より時間をかけ、個別具体的に検討を深めたいと考えています。
この三つ目から五つ目までの私の思いは、今月15日に市町村教育委員会連合会に提案をいたしましたので、現在、各市町村教育委員会で対応をお考えいただいているところですが、私としては是非必要な取組だと思っております。
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