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報告第38号

(鴨木生涯学習課長)

 報告第38号放課後子どもプラン基本方針の策定についてご報告する。

 1番目は、そもそも放課後子どもプランとは何かということであるが、最近は特に年齢の異なる子どもが一緒に遊ぶ時間、空間を確保することが難しくなってきている。学校の放課後や休日などを利用してそのような機会を提供しようという考え方である。具体的には国庫補助事業もあり、放課後子ども教室、いわゆる子どもの居場所、これは文部科学省所管の国庫補助事業である。その他、厚生労働省所管の放課後児童クラブもある。さらには、子どもの読書活動、スポーツ少年団、その他子ども会など地域において様々な取組がされている。お互いの連絡が必ずしも十分でないという実態もあるので、相互の連携、協力の下で活動が実施されるために、具体的には市町村に事業計画の策定を求めるものである。

 2番目は、市町村が小学校区ごとに具体的な計画を策定するにあたり、県としてその小学校区ごとの検討の視点、ポイントなどを示すものである。

 3番目は策定の経過であるが、推進委員会という有識者会議を組織し、学識経験者としては島根大学から田中昭夫教授、子どもの居場所などに携わっておられる現場の方々に参画してもらっている。2回の委員会のほか、各委員の個別ヒアリングも行い、基本方針をまとめている。既に島根県ホームページで公開し、市町村に対しては9月末に通知をしている。今後、分かりやすいパンフレットを約3,000部作成し、小学校、公民館などに送付予定である。

 具体的な基本方針の案文は資料のとおりであるが、要点について説明する。

 「1放課後子どもプランのねらい」は理念のようなものを掲げている。現在の教育の抱える問題、特に家庭、学校、地域社会にどういう課題があるかを整理している。家庭、学校、地域社会が連携、協力することは容易ではないが、島根県内ではふるさと教育で地域の大人が学校教育に携わっており、学社連携融合の歩みもあるので、それを生かしながら、地域の子どもを地域で育んでいく取組を進めていくというものである。

 次に子どもプランをどのようなものとして進めていきたいかという考え方について整理しているが、この取組は地域の教育力を再構築していく具体的なきっかけとなるものであり、また、学校と地域社会との連携協力や信頼関係の構築につながるものである。さらに保護者は、新しくこのような放課後、休日の居場所ができると、新しい便利なサービスができたということで、サービスの利用者の側に留まってしまうことがありがちであるが、この取組を通じて家庭の教育力を地域の側は支援していくような理念を持ってもらいたいと思っている。

 資料5の3からは具体的な検討の視点を掲げている。各市町村、特に各小学校区で検討してもらいたい留意点などを整理している。

 「4放課後子どもプランを推進するためのポイント」にポイントを幾つか掲げている。ポイント1について、新しい取組を全部立ち上げなければならないということではなく、既存の組織や取組などをうまく活用、連携し、実施していけばよい。ポイント2について、ボランティアの活動が非常に重要であり、参加した大人にとってはそれが地域貢献の機会ともなり、参加した大人自身にとっても生きがい、やりがいにつながることもある。

 保護者や学校関係者もこの放課後の取組に積極的に関与してもらいたい。保護者は単に便利なサービスを享受する側に回るのではなく、この取組を通じて保護者が無理なく地域との接点を持つきっかけを提供したいと思っている。学校も地域の活動に関心を持ってもらい、学校に対する支援や協力の気持ちを培っていく機会にしてもらえればと思っている。

 ポイント3について、放課後子どもプランを進めていく上でのコーディネーターの存在が非常に重要である。また、安全確保の問題。さらに、放課後子どもプランの中で国庫補助事業に2本の柱があり、文部科学省所管の子どもの居場所と厚生労働省所管の放課後児童クラブがあるが、単純な一体化、一本化するのではなく、実情に応じて弾力性を持った取組をしてもらいたいと考えている。

 ポイント4について、遊びの中で子どもは育つので、このような時間、空間を提供するために、どうしても大人の側が色々なことを押しつけてしまうことがありがちである。過剰な活動、過度な干渉は必ずしもよくないということで、何かをしてもいいし、何もしなくてもいい、そんな場、時間が大切である。年齢の異なる子どもたちが遊び、その中で様々なことを得てもらうという発想である。

(山根委員)

 この国庫補助事業は、従前からあったのか。また、どの程度の利用があるのか。

(鴨木生涯学習課長)

 厚生労働省所管の放課後児童クラブは従前から国庫補助事業がある。児童福祉法の取組として、子どもが家に帰っても親が仕事などで家にいない家庭の場合に夕方まで子どもを預かるという事業内容である。従前は学童保育と呼んでいた。

 文部科学省所管の子どもの居場所は、家庭に親がいても、家に帰ってテレビゲームをすることしかできない、近所で群れて遊びにくい実態があり、みんなで遊ぶ時間、空間をつくるための取組である。これまで3年間は試行であり、文部科学省の国10分の10の委託事業で全県展開を図ってきたが、今年度から国庫補助事業になり、厚生労働省所管と文部科学省所管の両方が整合性のとれた国庫補助事業として進めることができることになった。

 特に子どもの居場所は、3年間の国の委託事業により全県展開を図ったが、まだ地域的に偏りがあり、全小学校区の約4割しか普及していない。この基本方針をパンフレットにし、それを多くの県民に見てもらい、この取組の普及、拡大を図っていきたいと思っている。

(北島委員)

 親が放課後のことは任せておけばよいという考えになってしまうと逆効果になってしまう気がする。親が積極的にかかわっていくべきであると思う。親や兄弟のつながりを強められるようにしてもらいたい。

(鴨木生涯学習課長)

 その点については、推進委員会でも重点的に議論された点である。実際に子どもの居場所をつくってみると、年齢の異なる子どもたちが一緒に汗を流して遊ぶことは良いことであるが、親の顔が見えなくなってしまい、地域のボランティアの力で便利なサービスを新たに立ち上げれば立ち上げるほど親がそれに乗っかってどんどん引いてしまうし、後退してしまう。そういうことがないようこの取組を家庭の教育力を高めることにつなげていくように意識してやろうということを推進委員会で議論されたところであり、基本方針の中に織り込んでいる。

(七五三委員長)

 厚生労働省の補助事業と文部科学省の補助事業の2本立てであるが、県で言うと県教育委員会と健康福祉部の連携がどのように保たれているのか。

(鴨木生涯学習課長)

 この基本方針を策定するにあたり、教育委員会だけではなく健康福祉部に相談して、健康福祉部の青少年家庭課や少子化対策推進室も含めた関係課でワーキンググループをつくり、議論を重ねている。文部科学省の事業が委託事業から国庫補助事業になると、厚生労働省の補助事業と融合化されてしまうのではないかという誤解もあり、放課後児童クラブを実際に設置、運営をし、それを利用している立場の方々から、自分たちが守り通してきた放課後児童クラブのサービス品質を落とすことにつながるのではないかと心配の声があった。厚生労働省の事業は従来どおり放課後児童クラブの品質をきちんと確保し、その上で文部科学省の事業と連動、連携していく関係になっている。


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