しまねびとNo.04
地域に根ざす作品を作りたい
町の中心を江の川が流れ、面積の約8割を山林が占める自然豊かな川本町。静かな工房で黙々と作業するのは山内ゆうさんです。地域の素材を使った紙布の制作に力を注いでいます。
京都府や安来市で染織技術を学び、令和元年に川本町の地域おこし協力隊員として移住。草木染に用いる植物が身近に採れることや、周囲の落ち着いた環境が物作りをする上で合っていたといいます。
移住した年には石州和紙との出会いもありました。浜田市三隅町の工房でサンプルなどをもらい紙布を試作。糸作りを行ってみると他の和紙とは違う滑りや粘りを感じ、糸が切れにくい利点がありました。また一般的な紙布に比べて、しっとりとした感触と弾力性があり、見た目の美しさにも引かれました。
移住後は紙布織の技術を磨き、石州和紙で手掛けた作品は島根県総合美術展で金賞に輝きました。これまでに身につけた技術に、石見地方の伝統工芸が組み合わさり、山内さんこだわりの作風となっています。
早いもので、この春で移住して5年。「地域の皆さんがとても優しい。ここが好きで夢中で過ごしていたらあっという間でした」
今後はより芸術的な作品に挑戦していきたいと考えており「ここでしか織れないメッセージ性のこもった作品を作りたい」と意気込みます。
山内(やまうち)ゆうさん
神奈川県出身。京都府で和裁や染織の技術を学び、安来市の工房に入門。その後、独立し、川本町で木綿や石州和紙を用いた紙布の制作を行う。第53・55・56回島根県総合美術展(県展)金賞、第54回同展銀賞、第46回全国伝統的工芸品公募展全国商工会連合会会長賞を受賞。
紙布(しふ)とは
和紙を細く切り、こより状にして作った紙糸を使用して織った布を紙布といいます。張りや硬さを感じる肌触りが特徴です。
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