杉原通信「郷土の歴史から学ぶ竹島問題」
第30回日本の領土としての竹島
島根県内の小学校教師M先生が1995年初版、2007年改訂新版として絵本「ある小さな小さな島の物語」を出版されました。絵は松江市内の主婦Kさんが描いておられます。
M先生が最後に「お話によせて」として書かれていることによれば、先生が隠岐の学校にご勤務中の時、一人の少年が先生の目を見すえて「島は人間のものなのですか」と質問したそうです。その時の衝撃を思い出して作成された絵本で、ストーリーは「ある小さな小さな島」にアシカや海鳥が平和に暮らしておりましたが人間という者がやって来て、アシカを殺したり捕って帰ったりし、また飛行機が飛んで来て島を標的に爆撃の訓練をしたりします。
M先生が「島に起きる出来事は事実に基づいています。」と記されているように、この島は現在の竹島で、そこで起こった出来事を正確に表現されています。少年が質問した時は竹島問題が新聞やテレビで度々取り上げられた時だったそうです。純粋な少年の質問は絵本を通じ、多くの人の心をとらえ、島根県内でも話題となりました。私もM先生の正面から教え子の質問に対応されている教育愛に満ちた姿勢に感動すると共に、Kさんのきれいな挿絵にも誘われて何度もこの絵本を手にしました。
しかし、最近私はこの少年に教えてあげたいことがあると思うようになりました。国家とは何か、領土とは何か、国と人間の関係といったことです。国家は目に見えない漠然としたものに見えますが、人・国民を守り、領土・領域を保護し、主権・政府を維持しています。また、それぞれの国家は他の国家との関係を国際連合憲章等の国際法を順守することで維持し、国際社会の中に存在しています。たとえば、国際法には領土の取得に関するルールがあります。また、国連海洋法条約は、海に面した国は、その沿岸から12海里(1海里は1852メートル)の「領海」や200海里の範囲を「排他的経済水域(はいたてきけいざいすいいき)」として、それぞれの国の権利が生じる水域と規定しています。
少年の純粋な質問には酷ですが、島はアシカや海鳥のものである前に、国家に所属する存在なのです。私達の現在までの研究では竹島は日本の領土であることは間違いありません。人間の平和的な営みも自然環境の保全も、領土権を確立してこそ行えるのです。
M先生に「島は人間のものですか」と質問した少年も、すでに中学校、高等学校等を経て成人になっていると思います。竹島問題の一端にふれて純粋な気持ちで疑問を吐露した日から現在まで、今も続く竹島問題の論争に関心を持ち続けていることを信じています。
この少年のように現在の中学生、高校生の諸君にも竹島問題に疑問や関心を持って欲しいと、私は「杉原通信」と題して30回にわたる歴史を中心とした話題を提供して来ました。ひとまず今回でこの作業を終了します。
数々の激励や内容に対する質問、批判等有難うございました。私自身大変勉強をしたという充実感に浸り、今後の幅広い竹島問題への取り組みに一層の意欲を燃やしています。
絵本『ある小さな小さな島の物語』
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