●発生状況
他のサルモネラ症とちがい、感染源はヒトに限定されます。1970年以降、衛生水準、生活環境整備により
国内感染例は減少してきましたが、国外感染による輸入例の比率が高くなっています。
島根県内でも、2003年11月と2004年9月に患者の報告がありましたが、これは1987年以来16年ぶりの報告で、海外から
の輸入例でした。
●病原体
パラチフスA菌(
Salmonella Paratyphi A)です。
●感染経路
病原体はヒトが保有し、患者、感染者の便・尿に汚染された食べ物、水を介しての経口感染ですが、
接触感染もあります。
未治療の場合は、症状が軽快しても排菌が続きます。
●潜伏期と臨床症状
潜伏期は、2週間前後です。その後39~40℃以上の発熱、下痢、バラ疹、脾腫、徐脈、腸出血がみられます。
●検査室診断
血液、便、尿からの菌の分離培養をおこないます。すでに投薬が行われている場合は、1〜2日間休薬して
検体を採取します。
白血球減少、血小板減少、GOT、GPT、LDHの軽度上昇などがみられます。
●治療と予防
ニューキノロン剤を第1選択剤として使用します。クロラムフェニコールも使用されますが、やや再排菌率
が高くなります。
発症1か月以上経過してから、治療終了、服薬を中止した後48時間以上を経過した時点から、24時間以上の
間隔で連続3回以上便培養で病原体陰性であることを確認します。
胆のう結石者で長期排菌者の場合は、胆のう切除またはニューキノロン剤の長期投与で除菌をおこないます。
最近クロラムフェニコール、アンピシリン、ニューキノロン剤などの耐性菌も出現しています。
●感染症法での取扱い
患者、無症状病原体保有者を診断した医師は、感染症法第12条の3類感染症として直ちに
最寄りの保健所に届け出ることになっています。