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島根県農業試験場研究報告第26号(1992年3月)p1-24

 


山陰地方における水稲の湛水土壌中直播栽培適用条件の解明


安原宏宣、神田正治、角治夫、伊藤淳次、山根忠昭、中島幸次、永瀬勝正、藤原建比古、出川正幸


摘要

 水稲生産費の低減を目的として、山陰地方における湛水土壌中直播栽培の適用条件を検討し、地域適応技術としての体系化を図った。

 

  1. 湛水土壌中直播栽培に対する適応性が最も高い品種は「アキヒカリ」、「ヒメノモチ」、「黄金晴」及び「みほひかり」であり、他にも多くの適用可能品種があった。ただし、「コシヒカリ」など数品種は適応性が低かった。

 

  • 苗立ち安定のために酸素発生剤粉衣が有効であった。ただし、その効果は不完全であり、播種時の温度条件、土壌の還元状態、播種の深さなど、栽培面での注意が必要であった。

 

  • 「コシヒカリ」などの早期栽培用品種を用いる場合には、平均気温15度Cになった段階で直ちに播種する必要があった。「みほひかり」などの早植栽培用品種の播種適期はこれより広かった。

 

  • 窒素施肥量は地力窒素発現量に応じて、「日本晴」では10a当たり10.0−15.0kg施用する必要があった。また、保肥力の低い土壌では細かい分施法又は被覆肥料の利用が有効であった。

 

  • 転び型倒伏の防止に土壌中播種が有効で、播種深は1cmが適切であった。その他、倒伏防止のためには、中干しを励行し、穂肥重点型の施肥法を行い、場合により倒伏軽減剤を使用することが有効であった。

 

  • 雑草発生量が水稲収量に及ぼす影響を表す重回帰モデル式を導いた。これから得られた雑草の要防除水準は、他雑草がない状態で1m当たりノビエ約0.4本、ホタルイ約16本、コナギ約6本であった。また、播種後、ピラゾレート粒剤を処理し、播種25日後頃の雑草残存量が要防除水準以上であれば中期剤を使用する方法で、効率的に除草できた。

 

  • 湛水土壌中直播栽培によって慣行の稚苗移植栽培より労働時間、農機具費、その他費用の節減が図れ、収量が低下しない条件においては、生産費の約1割の低減が可能であった。
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