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島根県農業試験場研究報告第16号(1980年5月)p13-41
チョウセンニンジン斑点病の発生実態と伝染に関する研究
広沢敬之、多久田達雄
摘要
チョウセンニンジン斑点病の発生実態および本病菌の越冬、伝染の方法などについて明らかにした。
1発生実態
- 本病の初発生は5月上から中旬で、葉、茎ともにほぼ時期を同じくしてみられた。また、発病最盛期は葉では7月上−中旬(梅雨期)であったのに対し、茎では組織が柔かい、5月までに発病が多く、6月中旬以降の発病はほとんどみられなかった。
- 本病の発病はチョウセンニンジンの2年生圃場では極めてわずかであったが、4年生圃場ではやや増加し、6年生圃場では極めて多くなった。
- 同一の日覆小屋内では北側の屋根の開放した側での発病が著しく多く、降雨との関係が深いことが推察された。
2病原菌の越冬方法
- 本病菌分生胞子の生存には低温、低湿ほど好適であり、5から25度C、空気湿度30%の条件下では240日以上生存した。被害茎葉上の分生胞子も畝の地表、地中および日覆屋根の外などでは急速に死滅したにの対し、雨の入らない日覆屋根の下など、比較的乾燥した場所での生存が良好で、このような場所でのみ分生胞子の越冬が確認された。
- 本病菌分生胞子はまた、日覆屋根の麦稈に付着して越冬しうる。また、麦桿に付着した分生胞子が水湿をえて発芽した場合、発芽菌糸上に新たな分生胞子が形成され、このような分生胞子により再度越冬が継続される場合もあった。
- 本病菌は分生胞子で越冬するほか、罹病根上で菌糸の形態でも越冬し、第一次伝染源となることが明らかになった。
3伝染方法
- 本病菌の分生胞子形成は5−30度C、約94%以上の空気湿度で行われ、なかでも20度Cで湿度が高いほど良好であった。また、光、特にブラックライトブルー蛍光灯の照射は分生胞子形成を著しく促進し、光照射下では雨などで分生胞子が流されたあとも、同一病斑上に繰返し分生胞子形成が行われた。
- 分生胞子の飛散は風速2.5m/sでわずかにみられ風速4.5m/s以上の風で著しく増加し、極めて短時間(1−10秒)のうちに大量に飛散した。また、分生胞子の飛散は水の噴霧を伴なうことによって顕著に増加した。
- 分生胞子の発芽は5−35度C、約90%以上の空気湿度で行われ、なかでも25度C、97%以上の高湿度での発芽が良好であった。また、20−30度Cでは1時間以内に発芽した。
- 本病菌菌叢は5−30度Cで発育し、その最適温度は25度Cであった。
- 葉に対する分生胞子の感染は5−30度C、約94%以上の空気湿度で行われ、なかでも20度C、約97%以上の空気湿度で良好であった。また、感染にはこのような好適条件が最低8時間、概ね12時間以上持続することが必要であった。病斑形成は5−35度Cで認められたが、病勢は25度Cで最も激しかった。潜伏期間は10−25度Cで2日、5、30および35度Cで2−3日であり、温度による差異はほとんどみられなかった。
- 根に対する本病菌の感染は10−30度Cで行われ、なかでも20−25度Cで良好であった。また、病斑形成は5−30度Cで認められたが、病斑の伸展は25度Cで最も旺盛であった。潜伏期間は20−25度Cで2−3日、30度Cで3日、15度Cで3−4日、10度Cで6日、5度Cで8−9日であった。
- 本病菌に対するチョウセンニンジンの感受性は、葉では生育ステージによる差異は認められなかったのに対し、茎では生育初期(5月1日)に感受性が高く、生育中期(7月1日)以降は著しく減退することがわかった。また、生育中期までに茎地際部が罹病した場合、根頭への病変の移行が認められ、とくに生育前期に罹病した場合にそれは速やかであった。
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