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島根県農業試験場研究報告第12号(1974年12月)p26-41

積雪、低温、寡日照地帯におけるイチゴのハウス栽培に関する研究(第2報)

苗質について

 


 


斎藤斉、上野良一


摘要

 1970〜'74年にわたって、短期株冷蔵栽培、GA処理栽培における苗質について検討し、次の結果を得た。

 

1.短期株冷蔵栽培

 

  • 苗床における元肥は、窒素施用量の多いほど大苗となり、開花期、収穫始めがおくれ、初期収量も少ないが、総収量は多かった。

 

  • 花芽分化後苗床に追肥を行なう場合は、10月上旬が適当である。

 

  • 6−7月採苗は夏期高温、乾燥のため生育が順調でない場合があり、9月採苗のものと苗の大きさでは大差がみられないこともある。

 

  • 収量については、採苗時期による相違は認められず、入庫時における苗の大小が関係し、大苗ほど多収の傾向を示した。

 

  • 遮光、短日育苗は開花始め、収穫始めともに早く、初期収量も多かった。しかし総収量は9月上旬採苗の普通育苗のものよりも少なかった。

 

  • 高冷地育苗は開花期、収穫期ともに明らかにおくれたが、収量は最も多かった。

 

 以上の結果から、採苗時期は8月下旬−9月初めとし、a当り苗床肥料は元肥に三要素各1.0kg程度を施し、花芽分化初めの10月上旬苗の生育状況をみて、窒素0.5−1.0kg程度の追肥を行なうのがよいと思われる。なお入庫時の苗の大きさについては充実した花芽を多くもった苗重35−40g程度の大苗を育成することが、多収を得るためには重要と考える。

 

2.GA処理栽培

 

  • 採苗時期の早いものほど大苗となり、開花も早く、開花数も多くなる傾向がみられ、初期収量、総収量ともに多くなった。しかし採苗時期があまり早すぎることは、苗数確保、育苗期間などの点から問題があるので、7月上旬−中旬を中心とし、おそくとも20日すぎごろまでには採苗を終るのが適当と思われる。

 

  • 苗の窒素栄養を中断するために、定植15−20日ごろに行う断根は、ずらしよりも窒素肥料分の極端に少ない苗床に移植するほうが、効果的と思われる。

 

  • 遮光処理による開花促進効果はあまり明瞭でなく、開花も不揃いの傾向がみられた。また初期収量、総収量とも早期採苗のものより少なかった。

 

  • エスレル処理による開花促進効呆は明らかでないが、総収量は2か年の試験結果とも多収を示した。処理時期,濃度および他の花成促進方法との組合せなどについて、さらに検討する必要があると考える。

 

  • GA処埋による開花促進効果は明らかでないが、総収量は多収の傾向を示した。

 

  • 仮植床における窒素施用量については、施用量の多い区ほど大苗となる傾向がみられた。定植前の断根による窒素栄養の中断が徹底すれば、窒素施用量と開花期との間には、一定の傾向が認められないようである。

 

  • 仮植床における元肥施用量は、大苗育成の面からa当り三要素各1.0kg程度は、必要と考えられる。
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