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島根県農業試験場研究報告第11号(1973年12月)p16-30

宍道湖底土客土土地における土壌条件の変化とその生産力について

 


 


村上英行、澤田真之輔、古山光夫


摘要

 1963年に島根県簸川郡斐川町沖洲地区において、地盤沈下対策、地力増強、区画拡大を目的として、83haの水田に厚さ15−35cmの宍道湖底土の客上が行なわれ、その後5年間にわたり、土壌断面、理化学性、水稲生育の推移について調査、試験を実施した。

 結果は次のとおりに要約される。

 

  • 客土前の土壌は作土直下からグライ層の強グライ土壌砂土および壌土還元型であった。客土後4作目の調査では旧作土はグライ化し、客土前と同様に作土直下からグライ層となり、暗渠のある水田および幹線排水路に近い水田は下層に斑紋を生じ、暗渠のない水田、幹線排水路より遠い水田では下層に斑紋はなくより還元的であった。その後1973年の調査でもほとんど変化がなく、地盤沈下対策としては効果はあったが、土壌の酸化還元性の改善にはそれほど効果はなかった。

 

  • 客土直後の泥土の乾燥と酸化は、まず表面から亀裂が生じ、亀裂の面から土壌内部の乾燥と酸化が進行する。内部が十分乾燥しない間に深耕すると亀裂を破壊して乾燥、酸化を妨げることになる。

 

  • 客土の一部には塩分、可酸化性イオウを含有するものがあり、1作目には塩害、1作目、2作目には酸性害が起った。

 

  • 宍道湖底土は客土前の土壌に比較し塩基置換容量が大きく、置換性塩基、可給態珪酸および遊離酸化鉄含量が高く、水田土壌としての肥沃度は顕著に秀れている。

 

  • 潮底土は多量の置換性アンモニアを含有しており、これが1作目の水稲の窒素過剰の原因となった。これは水稲1−2作で吸収しつくされて3作目以降の無窒素区の収量は激滅し36−39kgとなった。しかし十分な施肥をした場合の収量は高く、ほ場試験では4作目、5作目は66kg程度、多い場合は70kgの収量を得た。この場合の特徴は窒素の利用率が高く、窒素施肥に対する応答が大きいことである。

 

  • 宍道湖底土の客土は、宍道湖西岸の砂質および壌質の水田の地力増強対策としては秀れた方法である。しかし有機物含量は低いので、堆厩肥、わら等の粗大有機物の施用と、暗渠等による排水改良および水管理に対する注意が必要である。
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