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島根県農業試験場研究報告第10号(1972年12月)p159-176

 


果実吸蛾類に関する研究(11)
吸蛾類に対する防除試験


藤村俊彦


摘要

 1959−'68年にわたって主として浜田市において吸蛾類の生態調査と並行してその防除試験を実施してきたが、得られた結果を要約すれば次のとおりである。

 

  • 0.07mm以上の厚さを有する有色ポリエチレンフィルム果袋は有効であり、数年の使用に耐える。とくに10%程度の犠牲果(紙果袋)を残すとほぼ完全に防除できる。しかし袋かけの効率は著るしく低下し、また連年使用のためには殺菌の必要があり、経済性はかなり劣る。

 

  • 山間部のブドウについては新聞紙果袋をかけることによって被害をかなり軽減できるが、労力と着色の点で実用性に乏しい。

 

  • 隠岐島においては新聞紙果袋によってリンゴの被害を防止し得たが、その普遍性については再検討を要する。

 

  • 防蛾網は0.5cm以下の網目のものは十分な効果があるが、経済性を考慮する必要がある。古漁網は網目がやや大きく、急傾斜地のモモでは実用性はない。

 

  • 高圧水銀灯による照明は黄色桃園では誘殺、忌避ともに不十分であり、モモ園における電灯照明はその光源や点灯数、位置などについて再検討が必要である。

 

  • 森林害虫防除用の塩素剤の燻煙剤は効果が期待できない。

 

  • 哺乳類忌避剤WAMは、散布、果袋塗布、地上散布のいずれも効果がない。

 

  • 松脂を主体とする果袋塗布剤は、処理果袋を通常の袋かけ期(5月)に用いても、吸蛾の加害期に新しくかけ直しても効果は低く実用牲はない。

 

  • 市販の殺虫剤、忌避剤など数10種を試験したが、有効なものは見出されなかった。

 

  • Y字管を用いてアカエグリバで定性実験を行なったが、羽化後まもない成虫はモモ果に集まるが、6日位経ると幼虫の食草であるアオツヅラフジに集まる個体があらわれる。しかし絶対的な走性の転換ではない。

 

  • 8mの現地の網室内で、腰高シャーレを用いて種々の植物の侵出液または抽出液を試験した結果、幼虫食草であるアオツヅラフジ、ツヅラフジを中心に成虫が穿孔しない効果のあるものが得られた。

 

  • これらの溶液の穿刺忌避力は1−2夜のみでそれ以上の効果はない。

 

  • これらの溶液に合成樹脂を添加しても効果は持続しない。

 

  • これらの溶液の成分は全く不明である。

 

  • 圃場の黄肉桃樹にアオツヅラフジの工一テル抽出液を散布した場合、2夜については吸害を認めなかった。

 

  • 果袋に塗布したこれらの溶液は圃場では効果が認められなかった。この原因は吸蛾類の加害期間が7−10日に及ぶためと考えられる。
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