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島根県農業試験場研究報告第7号(1966年3月)p35-42

水稲の乾田直播栽培の施肥法に関する研究(3)

 


基肥窒素の肥効と硝酸化成との関係


山根忠昭、松浦一人


摘要

 水稲の乾田直播栽培の基肥に施された窒素肥料の肥効は土壌の性質や施肥法の違いによって著しく異なる。その原因について検討した結果を要約すると次の通りである。

 

  • 基肥窒素の肥効の高い水田は畑状態の期間(1ヶ月)においても土壌の硝化作用は貧弱である。

 

  • 硝化作用の弱い土壌はpHが低く(pH5以下)硝酸菌も少ない。

 

  • CaCO3の添加は硝酸化成の促進と硝酸菌数の増加をもたらし、土壌間の硝酸化成能の差異はほとんど消失した。

 

  • 数種類のアルカリ及びアルカリ土金属化合物を添加した場合もCaCO3を添加した場合と同様硝化作用は促進され、その程度はpH(8まで)の変化に対応した。

 

  • 局所施肥(窒素肥料とリン酸およびカリ肥料を共存状態で施す)は全層施肥に比較して基肥窒素の肥効が高く、その理由の一つとして塩類濃度が高まるためで、土壌の飽和浸出液の浸透圧が8気圧以上になるとほとんど停止することを認めた。

 

  • 硫酸鉛と塩化物とではカリ及び窒素量が同じければ後者の浸透圧が大きく硝酸化成抑制効果が高い。

 

  • 局所施肥の場合一部が硝化することにより施肥部位が酸性化し、以後の硝化の振興を抑える。また過石の混用も施肥部位の酸性化を強め硝酸化成の抑制効果を高めるために役立つ。
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