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島根県農業試験場研究報告第6号(1963年11月)p41-54
水稲の稚苗植栽培に関する研究
新田英雄
摘要
水稲の稚苗植栽培は普通期栽培を対象としては勿論,早期栽培においてもそれが可能なことが明らかである。これによって育苗の簡易かつ短期化が図られるとともに、地域及び栽培時期によって初期生長量確保の意義の大きい場面においては、直播栽培にかわって発展することが考えられる。しかして、稚苗植え水稲の生育、収量及び栽培上の2,3の問題点は次の如く要約できる。
尚、稚苗田植機の早期完成が挨たれる。
1.普通期稚苗植栽培
A.育苗
- 室内育苗器播種箱当たり播種量は200g位、苗令は1.5乃至2.0までを目標として、育苗日数は10乃至15日前後が適すると考えられる。
B.椎苗植された水稲の生育、収量ならびに、それに及ぼす栽植密度、窒素質肥料分施法の影響
- 椎苗植稲は植傷みが少なく、草丈は終始高く経過した。しかし、最高分けつ期後から幼穂形成期前後までの生育中期に、やや長期間にわたる伸長緩慢期が認められた。
- 稚苗植稲の葉の生育は、下位葉は短大で健全型生育であったが、中位葉は葉身が長く、葉巾は狭い徒長的生育を示した。かかる徒長的生育の度合は、最高茎数の多少にほぼ比例する傾向が認められた。
- 節間長については、下位節間長は元肥重点施肥が、上位節間長では穂肥重点施肥が優った。稚苗植稲は稈長が長く、かつ細稈化して倒伏し易い傾向が認められる処から、節間長の上/下比率を大きくする等、稈の生育の健全化を重視すべきと考えられる。
- 稚苗植稲の主稈の出葉速度は、生育初期は早かったが、その後、草丈伸長緩慢期の少し前の10葉出葉期前後から漸次遅延し、主稈総葉数は水苗区よりも1乃至2葉少なかった。
- 稚苗植稲は低節位分けつの発生割合が高く、かつ最高茎数が多く、有効茎歩合の著るしい低下にかかわらず穂数が多かった。最高茎数及び穂数は、密植によっては明らかに多かったが、窒素質肥料分施法の影響は比較的少なかった。
- 稚苗植稲の地上部風乾重は、初期は水苗区より重かったが、その後、増加量が漸次減退し、出穂期ころには若干劣った。出穂後は登熱の速度が早かった。また、稈及び葉鞘重の変化が顕著であり、出穂期前後に茎葉に蓄積された同化生産物量が多く、かつ穂部への転用も能率的に行なわれたことが考えられる。
- 稚苗植稲の収量は水苗区のそれに勝るとも劣らない結果であった。収量構成要素では穂数が多く、1穂当頴花数は少なかったが登熟歩合は高く、面積当たり登熟粒数では若干多かった。栽植密度及び窒素分施法の相違は主として穂数の多少に影響したが、穂数と登熟歩合及び収量との間には関係が認められなかった。
- 稚苗植稲の生育経過及び収量構成要素から、中位葉の生育には若干徒長的傾向が認められても、稈の生育は健全型となる栽値密度及び窒素質肥料分施法を重視すべきことを考察した。
尚、特に直播播種晩期限界以降における稚苗植の研究は今後に挨たねぱならない。
2.早期稚苗値栽培
- 稚苗植稲の生育経過は普通期のそれに類似する処か多かった。しかし、最高分けつ期が幼稲形成期とほぼー致したことから、穂数の多い割合に1穂当り頴花数が多く、登熟歩合が低下し、かつ玄米干粒軍も軽い傾向であった。
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