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島根県農業試験場研究報告第3号(1961年3月)p1-53
中海干拓地土壌に関する研究
村上英行、入沢周作
摘要
中海干拓予定地の土壌調査を行ない、その特徴を明らかにし土地分類をした。この分類の内2つの型の土壌につき、島根農試内で鉢試験、框試験を、島田干拓地では現地圃場試験を行なって、干拓後、作物栽培に障害になる点と、それに対する対策を検知しようとした。未だ不充分で今後に残された問題は多いが、得られた結果を総括すると次の如くである。
1.土壌の性質
- 土性は埴土が大部分の面積を占め、砂土がー部分布し、その中間の土性は少ない。埴土は極めて重粘で、含水量大きく、無構造状態である。
- 水浴性塩素が多くNaCLがその大部であり、埴土では風乾土当たり塩素濃度はそのほとんどが1%以上である。
- 置換容量は比較的小さく、30meを越えるものは少ない。置換塩基にマグネシウム、ナトリウムが多いのは海面干拓地の特徴である。主要粘土鉱物としてはHalloysite、Illiteの存在が予想される。
- 腐値、窒素は埴質中性型では概して少なく、一般の乾田程度である。埴質酸性型では豊富である。
- 硫化物を含み、畑状態で強酸性化する地帯がある,框試験では最低pH2.32現地盛場では2.98を示した。河口、入江、湾の内部に分布する、その分布の特徴について考察した。
- 酸性化する土壌でFeSを主とするもの(黒色)よりもFeS2を主とするもの(暗灰色)の分布面積が広く、また硫黄含量は後者が大きく、SO3として4.8%に達する土壌もある。
- 土性と畑状態の反応によって実用的な土地分類を行ない4つの型に分類した。この4つの型は土性、硫化物合量の他に、塩分、腐値、窒素の含量に対してもある程度の関係を持っている。
2.埴質中性型土壌について
- 除塩は、暗渠あるいは明渠により地下水を下げ、水の縦浸透を促進し、下層からの塩分の上昇を断つならば容易である。又高畦あるいは畑状態に放任して土壌を乾燥させると、表層における横への水の移動により除塩の効果は大きい。又塩分が多い時に水稲では掛流しの効果は大きい。
- 水稲作畑作共に窒素はきわめて欠乏しており、また塩害を考慮するならば初期より多量の窒素肥料を必要とする。燐酸、カリはやや豊富である。耕作をつづけるに従い窒素の施用量は減少し、燐酸、カリの施用量は増加する必要がある。
- 周年湛水状態で水稲栽培をすると、土壌の還元により鉢試験では根腐れ、框試験では赤枯れが発生した。これを防ぐには、裏作期間にはつとめて土壌の乾燥、酸化につとめるべきである。
- 畑作の障害は塩害を解消した後は物理性不良が第一であり、乾湿をくりかえし、作物を栽培すると団粒を生成し物理性が著しく改良されることをみた。
- 堆肥は水稲作には還元障害を考慮するならば当初は不要であり、畑作には効果が大きい。石灰の効果はみとめ難い、石膏の効果はみられす、水稲作には施用により収量がおちた。
- 作物生産力は大きい。4年目に框試験でアール当たり77.6kgの玄米収量を得た。畑作も年次と共に収量は上って来た。
3.埴質酸性型土壌について
- 埴質酸性型土壌は湛水のまま稲作するならば、三要素の肥効は埴質中性型と同様である。
- 含有される可酸化性硫黄は、畑状態で温度が高いと容易に強酸性化する。框試験で夏期畑状態にすると酸化が著しく早く、現地圃場の自然状態でも短時日に強酸性化する。
- 酸性化により生じた硫酸は、雨水、灌漑水により比較的容易に流亡するが、鉄は流亡せす、塩酸可溶性の鉄が土壌中に増加する。土色が干拓直後の暗灰色から乾燥に伴ない黄澄色,次いで褐色になるのは、パイラィト(FeS2)硫酸第一鉄塩基性硫酸第二鉄酸化鉄の経路によるものであることをみとめた。
- 酸性化した土壌は石灰で中和、湛水すれば水稲は栽培可能であり、この際は過剰の硫酸塩を掛流し、暗渠等で洗い流すことは有効である。乾燥しない土壌に比較して窒素の肥効は小さい。框試験では2年目に無肥料でアール当たり61.6kgの玄米収量を得た。
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