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事例13年生苗を用いた造林の低コスト化

 

島根県中山間地域研究センタ三島貴志

島根県東部農林振興センター出雲事務山中啓介

 

キーワード

 

スギ、3年生苗、ポット苗、枝切苗、根系

 

 

調査地

 

島根県出雲市佐田民有林

標高:360〜390m年平均気温:12.4年平均降水量:2,137mm

地質:花崗土壌型:褐色森林積雪:多い

 

 

施業履歴

 

 2007年以前

チュウゴクザサが繁茂するアカマツ・広葉樹混交林の伐採跡地

 

 2008年4月

スギの3年生挿木裸苗(苗高約56cm)、3年生挿木ポット苗(ポット容量570cc、苗高約80cm、図1)、枝先を1/2切除した3年生挿木裸苗(苗高約57cm、図2)、島根県で一般的に使用される2年生挿木裸苗(苗高約45cm)(以下、それぞれを「3年生苗」、「ポット苗」、「枝切苗」、「普通苗」とする)をそれぞれ40本植栽した試験区を設定した

 

 2009年以降

下刈りを毎年実施した。また、成長休止期に成長調査を行った

 

 

調査結果の概要

 

・普通苗、枝切苗は全て活着した。3年生苗、ポット苗で枯死した個体がみられたが、各枯死率は5%以下であった。今回の試験では、苗木の種類によって枯死率に大きな違いはみられなかった。

・枝切苗は、蒸散量を抑えて活着を促すため、葉量を減少させた苗木である(図2)。しかし、今回の試験では他の苗木と枯死率に大きな違いがみられなかったため、枝の切除が枯死率の低下に与える効果を評価することはできなかった。

・3年生苗は伸長、肥大成長ともに最も良好であった(図3)。

・ポット苗は植栽時点で苗高、地際直径とも最も大きかったが、その後の伸長、肥大成長は他の苗木と比較して劣る傾向がみられた(図3)。

・ポット苗は活着が良好であるが、その後の成長が普通苗より劣る場合も報告されている(梶谷1973)。今回の試験も同様に、植栽したポット苗は苗高と比較して根系の発達が不十分で、根巻きも発生しており、初期成長の不良に影響していると考えられる(図1)。

 

 

今後の施業への示唆・留意点

 

・今回の試験では、活着が難しいと思われた3年生苗も、他の苗木と同様に活着が良好であった。使用した苗木は適期を選んで通常よりも丁寧に植栽されており、このため枯死率が低くなったと考えられる。3年生苗を用いて造林の低コスト化を図る場合、温度条件、水分条件、土壌等の植栽環境、植栽時期に問題がなければ、ポット苗や枝切苗を使用しなくても、裸苗で十分と考えられる。

・一般的に、ポット苗はサイズが大きくても、根系を傷めずに植栽できるため、枯死率の低下や初期成長の向上が期待できる。ただし、根系の発達が不十分だったり、根巻きが発生していると、その後の成長が抑えられると考えられる。ポット苗を使用する場合は、できるだけ根系が発達した、根巻きが発生していない苗木を使用する必要がある。

 

 

引用文献

 

梶谷孝(1973)島根県林業試験場業務報告3:28-31

 

 

図表

 

(写真)ポット苗

1ポット苗

 

 

(写真)枝切苗

2枝切苗(左:処理前、中:処理後(植栽した苗木)、右:切除枝)

 

 

(図)

3植栽から5成長期までの成長の推移

 


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