県内の起業に関心を持っている方等に向けて、県内起業家の魅力などを情報発信するため、島根大学法文学部の学生１０人と島根県立大学総合政策学部久保田典男研究室の学生１２人の計２２人により、起業家や創業者を直接取材し記事作成を行う事業を実施しました。

　なお、この事業では、大学生が起業家や創業者への取材経験により、起業への想い、島根で起業する理由など、起業家マインドを学ぶ機会にもつながっています。また、記事作成にあたっては、ローカルジャーナリストの田中輝美様と本宮理恵様（株式会社ＭＹＴＵＲＮ）に学生への指導、監修に携わっていただいたことも特徴となっています。

　起業家や創業者のお話を伺い、学生が何を感じたのか、是非ご覧ください。

取材先

　株式会社おはつ

　代表取締役

　秋田光晶様

　“はじめまして”から“ずっと”お付き合いをしていきたい。そんな想いから誕生した介護教育施設おはつ。「個をつくり、孤をなくす」をテーマに2015年1月に創業しました。より多くの人に想いを届けるため、2018年4月に広島で分校を開校。更に福岡にも分校を開校するなど、今後は西日本を中心に展開を広げていく予定です。介護に関する社会的課題が山積みする日本社会で、独自の事業形態を築き上げていった秋田光晶さんにお話しを伺いました。

■事業内容と事業の特色を教えてください。

　「まなぶ」「福祉業界サポート」「御はしら事業」の三つの事業を行っています。「まなぶ」は資格取得のための教育事業。最終的に福祉の専門資格を発行します。「福祉業界サポート」では専門家や講師を派遣し、運営などの改善のお手伝いをします。「御はしら事業」は国内唯一の事業です。悩みを抱えている施設に、施設長など決裁権限を持った状態で職員を派遣します。施設の職員に第三者としていいところに気づいてもらい、一緒に伸ばしていくことが目標です。

■起業されたきっかけを教えてください。

　30歳での心筋梗塞です。初めての感覚に襲われました。「俺、死ぬんだ」って。「死ぬなら家で、今まで関わってくれた人たちがいる中で死にたい」と同時に「家で死ぬことができる世界をつくっていきたい」って思いに駆られたんです。理想の施設をつくろうと一度起業しました。でも、失敗したんです。一人で出来る事なんて全然ないと気づき、仲間づくりや福祉経験のない方も思いを共有できるような教育システムが大切だと。「まなぶ」から新しく起業しました。

■起業されて苦労されたこと、また、今後の目標や展望を教えてください。

　不安なことは担い手の問題があります。まだ4年しかたっていないし、僕もまだ頑張れるとは思うんですけど、次の世代に繋げていくのはちゃんと考えなきゃと思っています。今後は、日本国内を「個をつくり、孤をなくす」という状態にしたいです。200年後に「昔、孤独っていう言葉があったらしいよ」って国民全員が言えるような世界にしていきたい。具体的には各都道府県に、僕たちの思いを広げていきたい。土台はできてきたので、本格的に施設運営に取り組んでいきたいです。

■それでは最後に、これから起業したいと思っている人へのアドバイスをお願いします。

　そうですね、伝えたいことはたくさんありますが、大事なことは二つ。まず、周りの人たちが「やってみ」って言ってくれるような状況をつくることです。やりたいことをお客さんに届ける前に、第三者に良さをわかってもらうことが重要。特に、一番近い人、例えば家族とかにですね。自分のしたいことをみんなに理解してもらうことが必要です。もう一つは、身の丈にあった、自分の分際をわきまえながら起業していくことですね。

■会社概要

・創業年･･･2015年1月19日

・会社名･･･株式会社おはつ（まなぶところ御はつ）

・代表･･･秋田光晶

・所在地

（本社）島根県出雲市小山町63番地
（広島分校）広島県廿日市市駅前1-3
（福岡分校）福岡県北九州市北区田町11-10

・業務内容

　介護職員を目指す方へ資格取得のサポート、介護職員向けの研修、施設経営に関するコンサルティング事業等。「関わる全ての方に関心を持ち、一緒に皆さまの役割を見出すこと」を一番の目的に、これから介護に関わっていく人から介護職員経験者まで幅広くサポートを行っている。

・HP･･･https://www.ohatsu.jp/(外部サイト）

■取材後記

（島根大学）青山柚紗

　秋田光晶さんに様々なお話を聞かせていただき、感じたのは、想いの強さ。秋田さん自身が起業家スクールに通っておられた時、講師の方がテクニカルな部分はもちろん、「理念や想いをきちんと構築していないと起業する意味がない」ということをとことんお話してくださったそう。だから、理念や想いは起業する前から特に大事にしておられたそうです。社是の「真実一路」をはじめ、５つの運営理念、テーマの「個をつくり、孤をなくす」などが、会社の壁に貼られていました。

　また、職員さんに対する想いの強さも感じました。「経営者として大切にしていることは、自分の会社だと思わず、職員さんたちが何をしたいのかを頭に入れておくこと」「一番の喜びは、職員さんがやりたいと思っていることを仕事として持って帰れた時。」「会社の魅力はずばり職員さん」。何よりも職員さんのことを尊重していることがよくわかり、ここまで職員のことを想ってくれる社長さんはそういないと思うので秋田さんのもとで働ける職員さんたちを羨ましく思いました。また、そこまで想うことのできる仲間と出会えた秋田さんのことも羨ましく思いました。株式会社おはつは本当に素敵で温かい会社であるとわかりました。