県内大学生による起業家情報の発信事業
県内の起業に関心を持っている方等に向けて、県内起業家の魅力などを情報発信するため、島根大学法文学部10人と島根県立大学総合政策学部久保田典男研究室の学生12人の計22人により、起業家や創業者を直接取材し記事作成を行う事業を実施しました。
なお、この事業では、大学生が起業家や創業者への取材経験により、起業への想い、島根で起業する理由など、起業家マインドを学ぶ機会にもつながっています。また、記事作成にあたっては、ローカルジャーナリストの田中輝美様と本宮理恵様(株式会社MYTURN)に学生への指導、監修に携わっていただいたことも特徴となっています。
起業家や創業者のお話を伺い、学生が何を感じたのか、是非ご覧ください。
取材先
かとり司法書士・行政書士事務所
代表
香取亜希様
ひ孫ターン、町でたった一人の司法書士
島根県邑智郡川本町、江の川の流れる小さな町に町内唯一の司法書士事務所があります。ここで司法書士を務めるのが香取亜希氏です。東京都出身で、大学時の専攻は土木工学。在学中に海外のインフラ事業に携わられましたが、より人に寄り添い人の役に立つ身近な存在でありたいと思ったことがきっかけで自分の進むべき道を見出されました。大学卒業まで東京で過ごした人が?20代の女性が?島根県?しかも川本町で?その理由を聞いてみました。
■事業内容、経営理念について教えて下さい。
業務内容は土地や建物、相続の登記の他に会社の登記などを扱っています。ここでの業務は畑や山林の登記も必要になることや、12年間司法書士がいなかったため何代も前から名義変更されていないものもあり、古い戸籍を読み返す場合があることは都会とは少し違いますね。経営理念は、敷居を低くして身近で相談できる窓口になれればと思っています。この町には私以外に司法書士がいないので、分からないことがあれば何でも相談できる身近な専門家でいたいなと思っています。
■起業された経緯について教えて下さい。
司法書士として独立しようと思い、どこで開業しようか考えた時に、東京は司法書士が溢れていて、私じゃなくてもよく、だったら「司法過疎地」といわれる自分の仕事が求められている所で必要とされる仕事をしたいと考えたのがきっかけです。私の曾祖母の生家が金城町にあり、よく話を聞いていたことから島根県を開業拠点の候補に選び、その中で江の川や町の景色が気に入り川本町に決めました。今の時代ネットさえ繋がっていれば会議だってでき、東京に住んでいる必要もないと感じたので川本町に来ることに抵抗はなかったです。
■起業されて大変だったこと、苦労されたことはありましたか?
司法書士という職業自体どこに行っても需要のある、全国どこでも開業しやすい職業なので割と開業はしやすかったです。ですが私が突然東京から来た、全く外の人間なので、信頼を得ることは難しいと開業した時から今でも感じています。仕事自体が重要な財産を扱う仕事で、資格があっても抵抗がある人が多いと思うので、町で開かれる会合や料理教室など人の集まる場には積極的に参加して色んな人と関わり、知ってもらう努力はしていました。
■将来のビジョンなど、今後の目標・展望を教えて下さい。
小さい町だと周りの人と実験的に小さいことから始めやすいので、そういう需要のあることと私に出来ることが合えば、司法書士に限らず、ここに、周りの人に求められることをやりたいなとは思っています。今も空き時間には、事務所で地域の中高生に勉強を教えたり、家庭教師をしたりした時期もありますし、司法書士に限らずいろんな事に取り組みたいです。小さい町だと人が足りないので、来て数年の私でも色々な事をさせて頂いていて、関われることは関わっていきたいと思っています。
■会社概要
・創業年・・・ 2016 年
・会社名 ・・・かとり司法書士・行政書士事務所
・住所・・・邑智郡川本町大字川本623-2
・代表者・・・香取亜紀
・事業内容
司法書士・行政書士の一般的な業務。土地や建物に関する不動産登記や会社などに関する商業・法人登記などの登記業務がメイン。地方であることから高齢者がとても多く、相続や遺言に関する業務も扱っている。
■取材後記
(島根県立大学)藤原知乃
今回、香取さんの取材をさせて頂き、初めて事務所内に入った時に、アットホームな印象を受けました。私の想像していた堅そうな事務所のイメージは一切なく、町の人が気軽に入れるような、「身近に相談できる窓口」を経営理念としている事務所らしい空間だと感じました。起業というと何かクリエイティブな事業を始めるイメージがどこかありますが、既存の司法書士という職業でも、やりがいのある仕事を追い求め、20代という若さで川本町に拠点を移した香取さんの行動力にただただ驚きました。
私の感じる島根県の魅力は、「地産地消を推奨している為、食べ物が安全で美味しい」ところだと思います。それだけでなく、U・Iターンする人目線の魅力もあると感じていて、「需要と供給が成り立っていないところ、需要に対する供給が可能な人にとっては良い市場であるところ」です。私は島根県の出身なので、ただ単に「島根県の魅力を知ってほしい」という想いもありますが、島根県の行政機関もU・Iターンに対して全国に先駆けた支援施策を充実させているので、今後もそういった志を持って島根県にU・Iターンをしてくる人が多くなってほしいと思います。行政だけではなく私たち個人も、消費者目線でのおすすめのお店や病院など、日常生活において過ごしやすくなるような情報、地元の人しか分からないような情報をU・Iターンする人に向けて発信することなど、何か力になることがあるのではないかと考えさせられる良い機会となりました。
お問い合わせ先
中小企業課
〒690-8501 島根県松江市殿町1番地 ・商業・サービス業支援係(起業・創業、大規模小売店舗立地法、地域商業等支援事業などに関すること)TEL:0852-22-5655 ・金融係(県内中小企業に対する融資、貸金業法及び割賦販売法、信用保証協会などに関すること)TEL:0852-22-5883 ・管理係(高度化資金などに関すること)TEL:0852-22-6203 ・商工団体係(中小企業等協同組合法、事業継続力強化アドバイザー派遣事業などに関すること)TEL:0852-22-6554 ・経営力強化支援室(事業承継総合支援事業、経営革新計画、中小企業・小規模企業振興基本計画などに関すること)TEL:0852-22-5288 FAX:0852-22-5781 E-mail:keiei@pref.shimane.lg.jp