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県内大学生による起業家情報の発信事業

 県内の起業に関心を持っている方等に向けて、県内起業家の魅力などを情報発信するため、今年度、島根大学法文学部の学生10人と島根県立大学総合政策学部久保田典男研究室の学生12人の計22人の学生により、起業家や創業者を直接取材し記事作成を行う事業を実施しました。

 なお、この事業では、大学生が起業家や創業者への取材経験により、起業への想い、島根で起業する理由など、起業家マインドを学ぶ機会にもつながっています。また、記事作成にあたっては、ローカルジャーナリストの田中輝美様と本宮理恵様(株式会社MYTURN)に学生への指導、監修に携わっていただいたことも特徴となっています。

 起業家や創業者のお話を伺い、学生が何を感じたのか、是非ご覧ください。

 

取材先

 株式会社おおち山くじら

 代表取締役

 森田朱音様

 

地域の取り組みを起業で活かす猪加工販売事業とは

おおち山くじら代表取締役森田朱音様

 

 自然生い茂る中山間地域に位置する美郷町。そこでは野生動物の畑荒らしから畑を守り、自然と共存して生活するため、野生の猪を捕獲する取り組みが15年以上続いています。この事業を引き継ぎ、捕らえた猪を加工・販売する株式会社を立ち上げたのが森田朱音さん。この事業は、美郷町に住む猪捕獲者たちの協力がなければ成り立ちません。地域全体で作り上げるビジネスとはどのようなものなのか。その設立の背景や思いを聞きました。

 

事業内容を教えてください。

 野生猪の「食肉製造」「革利用」「ペットフード利用」の3つです。食肉加工した肉は東京を中心に飲食店へ、加工の際にとれる皮や内臓は地域の婦人会やペットフード業者へ納品します。地域一丸となり猪の捕獲、販売を行う事例は全国的に珍しく、地域の捕獲者が捕らえた猪を生きたまま食肉処理場に運びます。猪を命あるものとして扱い、お客様に安心安全な猪肉を安定的に供給したいという思いを大切に、衛生的で美味しい猪肉を提供しています。

 

■起業されたきっかけは何ですか?

 東京で生活をしている時から、田舎に住んで事業を作りたいという思いがあり、どこで何をしようかと考えていました。その時、美郷町のおおち山くじらの取り組みを株式会社化してくれないかとお話を頂いたのです。全国的にジビエブームが起こっていて、その取り組みが面白そうだと感じたのと、地域ぐるみで行われている事業に私も関わりたいと思い、起業を決めました。そして2014年に移住し、下積みを積んだ上で独立しました。

 

■起業されてから大変だったこと、苦労されたことはありましたか?

 去年の西日本豪雨で水害に遭いました。食肉処理場が床上浸水して、設備が壊れて在庫のお肉も一気にだめになってしまったのです。設備を直すためクラウドファンディングで資金集めをし、友人や集落の方の助けを借りて2週間の復旧作業を行いました。

 また、直近では人手不足に悩んでいます。田舎は仕事がないとみなさん言いますが、意外と募集は多くて。募集はしているのですが、なかなか集まらないですね。

 

■これからの目標やこうしていきたいという展望はありますか?

 正直あまり大きな展望はないのですが、うちの事業がなくなったら、町内の 100 人強の捕獲者が獲った猪の処分ができなくなってしまうんですよ。地元の人たちが始めたおおち山くじらの事業を預かっているので、ちゃんと継続しなければと思っています。

 他には、高齢化による捕獲者の減少に備え、会社にも猟師免許を持ち罠の管理ができるスタッフを確保したり、一般消費者向けに販路を拡大して、さらなる販路先に進出していけたらと考えています。

 

■会社概要

・設立年・・・ 2017 9

・会社名・・・株式会社おおち山くじら

・代表・・・森田朱音、石崎英治
・住所・・・〒 699-4626 島根県邑智郡美郷町乙原 363

・事業内容

 自然と共存・共栄し、衛生的に高い品質が担保されるシステムを確立することを理念とし、野生の猪肉を食肉加工し、出荷する。食肉以外の部分は他企業の製品の原料として納品している。

・HP・・・http://yamakujira.jp/(外部サイト)

 

■取材後記

(島根県立大学)鈴木理恵

 私は、起業とは新しい事業を一から立ち上げることだと考えていましたが、地域にあるものを活かし、発展させるような起業の仕方もあるのだと、取材をきっかけとして起業に対するイメージが変わりました。また、おおち山くじらの事業は美郷町ならではであって、そのように限られた地域でしか起こせない事業を起こす
可能性を持っていることが、地方中山間地域の利点だと私は思います。

 森田さんの事業は地域の人々や共存していくべき動物たち両方の生活に重要な役割を担っており、その取り組みにかける地域に対する思いに強く感銘を受けました。会社を設立してすぐに水害に遭われても、すぐに行動を起こし事業再開して困難を乗り越えられたのは、森田さんの前向きで積極的なお人柄があってこそではないかとお話させていただいて感じました。これからのことをお聞きした時、先行きに不安をお持ちだとはそこまで感じず、やりたいことを楽しそうにお話される様子が印象に残っています。私もその姿勢を見習いたいと思い、大変勉強になる機会でした。

 


お問い合わせ先

中小企業課

〒690-8501 島根県松江市殿町1番地
・商業・サービス業支援係(起業・創業、大規模小売店舗立地法、地域商業等支援事業などに関すること)TEL:0852-22-5655
・金融係(県内中小企業に対する融資、貸金業法及び割賦販売法、信用保証協会などに関すること)TEL:0852-22-5883
・管理係(高度化資金などに関すること)TEL:0852-22-6203
・商工団体係(中小企業等協同組合法、事業継続力強化アドバイザー派遣事業などに関すること)TEL:0852-22-6554
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