しまねの旬の魚一口メモ(12-1月)
島根で12-1月ころに水揚げされる水産物の特徴と「売り」について、県の調査結果や外部リンクを交えて解説します。
※文中の脂の量は三枚におろした際の可食部に含まれる脂質含有量です。
参考リンク:島根のさかな(島根県でとれる主な魚介類についての解説です)
目次
ズワイガニ(マツバガニ) | 『隠岐の松葉がに』は活きの良さが自慢です! | |
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ベニズワイガニ | 身の甘さではズワイを超える!安くて美味しい庶民の味方! |
ワカメ | 柔らかくてシャキシャキ美味しいワカメ! | |
サワラ | 曳き縄釣りのものは大きさと鮮度の良さが自慢です | |
アカムツ(ノドグロ) |
脂の乗りが一番の売りです |
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ブリ | どんな料理にも合う、早春ブリを召し上がれ! | |
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アンコウ | 冬の鍋といえば鮟鱇鍋! |
カレイ3種
(ソウハチ・ムシガレイ・ヤナギムシガレイ) |
子持ちガレイの季節です! | |
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ヤリイカ(テナシイカ) | 雄はお刺身、雌は煮付け、雌雄で料理法が異なります! |
スルメイカ | この時期沿岸でも漁獲されます | |
マトウダイ(バトウ) | 地元浜田では人気!フライや刺身で美味しい! | |
イボダイ(シス) |
塩焼き、煮付けなど、どんな料理にもOK! | |
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マサバ | 適度に脂が乗ってます!シメサバや一夜干しには最適! |
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マアナゴ(あなご) | 脂の乗りや鮮度が売りです |
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キダイ(れんこだい) | 漁獲量は秋から冬が最も多いのです |
足一本あれば、家族みんなが大満足! | ||
カワハギ類 | この時期一番漁獲量が多いです、骨離れも良く、色々な料理に活用できます! |
●ズワイガニ
山陰のカニといえば松葉がに!活きの良さが自慢
隠岐松葉ガニのタグ |
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島根県のズワイガニ(松葉ガニ)の水揚げ量は、年間およそ130トン程度です。隠岐の島周辺の水深200~500mの海域で、籠(カゴ)で漁獲されるため、底曳網で獲れるカニと比べて、脚折れが少なく鮮度も良好です。大型(700g以上)で身入りの良いものは『隠岐松葉ガニ』として、漁獲した漁船の船名が表示されたタグ(写真)をとり付けて認証されています。漁獲されるカニには『隠岐松葉ガニ』銘柄より小型のものや、脚が折れたもの、水ガニ(柔らかいカニで通常やや身入りが悪い)、雌ガニ(セコガニ、親ガニ)もあり、予算や目的に応じて選ぶことができます。
●ベニズワイガニ
-身の甘さではズワイを超える!安くて美味しい庶民の味方!-
ベニズワイガニかご漁業の「マリンエコラベル」マーク |
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深い水深(数百~二千m)において、籠(カゴ)で漁獲されます。このカニは漁期が長く、夏場の7~8月を除くほぼ周年漁獲されます。ズワイガニよりも安価ですが、身が甘く、松葉ガニよりも美味しいという方がたくさんおられます。しかし、鮮度落ちが早いので生のカニを調理したもの(例えば、刺身、素揚げ、煮付け、鍋など)が食べられるのは地元中心です。通常は現地で茹でたものが流通します。島根・鳥取のベニズワイガニかご漁業は、日本初の「マリンエコラベル」(資源と海に優しい持続的な漁業として認証されたラベル)を取得しましたが、漁業者だけでなく、加工業者も含めて、地域でベニズワイガニ資源を守っていこうという先進的な取り組みが行われています。
●ワカメ-柔らかくてシャキシャキ美味しいワカメ!!-
島根県では、ワカメは主に特産品である板ワカメに加工されますが、12~2月の時期には地元では柔らかくそれでいてシャキシャキして美味しい新芽も好んで食べられます。現在は新しい種苗生産技術により、柔らかい葉を今までより少し早く生産する技術もできつつあります。生の葉の食べ方は塩蔵品と同様ですが、湯通しした際の茶色から緑色への変化が美しいのが特徴です。もう少し遅れて登場する茎はキンピラやからし和えで、メカブはゆでて粘りがでたものを刻んで三杯酢やポン酢しょうゆで味付けして食べると美味です。なお、ゆがいた茎、メカブは、冷凍保存にできます。
●サワラ
-曳き縄釣りのものは大きさと鮮度の良さが自慢です-
島根県での漁獲量は8~11月が最も多いですが、12月の漁獲量も比較的多くなっています。大部分は定置網で漁獲されますが、引き縄釣りでは大型のものが漁獲されます。松江市美保関・福浦地区では、釣りで漁獲した際に活け〆や最適な冷却処理を行った高鮮度処理サワラを出荷していますが、身割れや歯応え低下などの肉質の劣化が通常の出荷のものよりも抑えられ、生食にも良好な素材として高い評価を得ています。小型のサワラ(サゴシ)については、定置網や浜田のまき網等で多く漁獲されますが、こちらは脂の乗りはあまり良くないものの、西京みそ漬けや一夜干し等に加工され、ネット販売やスーパーの商材として好評のようです。
※参考リンク
●アカムツ(のどぐろ)
-脂の乗りが一番の売りです!-
島根県では主に底曳網で漁獲されます。地元でも人気の高い魚ですが、浜田市ではどんちっちの名で、マアジ、カレイ類とともにブランド化されています。産地により脂の乗りが異なり、県外で漁獲されたものの中には、脂の乗りが極端に低いものもあります。島根県水産技術センターにおいて、ノドグロの脂の乗り(脂質含有量)をポータブル測定器(上の写真)で測定する技術を開発しましたが、浜田ではこの装置を用いてセリ前や店頭において脂質含有量を測定して表示販売する試みがなされています。11月から、浜田の水産加工業者がこの技術を活用し、ノドグロを脂の乗りごとに分けて作った一夜干しの販売を開始しました。この取り組みは全国発といえますが、将来的には個人の好みに応じた脂の乗りの加工品や鮮魚が普通に販売されるようになるかもしれません。
とびっくす
No.25(平成19年11月)「のどぐろ」の美味しさ脂の乗りでどう違う?(PDF)
No.26(平成19年12月)「のどぐろ」の美味しさ脂の乗りでどう違う?2(PDF)
県報道発表「脂の乗り」を数値表示した「ノドグロ開き干し」を県内企業が販売開始(外部サイト)
●ブリ
-どんな料理にも合う、早春ブリを召し上がれ!-
島根県では大型のいわゆる「ブリ」が最も多く漁獲されるのは2-4月頃ですが、12-1月にも少し漁獲されます。漁獲されるブリの脂の乗りはやや低めのものが多いのですが、一部脂ののりの良いものもみられます。出雲大社のお膝元のJFしまね大社支所では、漁業者が船上で「活け〆」を行うことで、高品質な肉質のブリを出荷していますが、2月以降も脂質に富んだ高品質なブリが多く漁獲されることから、さらに脂質測定器を使って「脂の乗り」を測定し、「脂の乗った」ブリを特別なブランドとして出荷する取り組みを行う予定です。ブリといえば冬というイメージがあるかもしれませんが、早春の薫り高いブリもぜひご賞味ください。
●アンコウ
-冬の鍋といえば鮟鱇鍋!-
島根県ではアンコウ類(アンコウ・キアンコウ)は底曳網で年間600トン前後が漁獲されていましたが、近年増加傾向にあり、昨年は1,270トンもの漁獲がありました。漁獲量が最も多いのは9~11月で、12月は需要の高まりと漁獲量の減少から、やや価格が高くなります。一般的には鍋料理に用いられるアンコウですが、鍋以外にも色々な調理法があります。一例をあげると、身は唐揚げ、皮は酢の物、肝は酒蒸し、肝ステーキに・・・食べ方が非常に多い食材といえます。
●カレイ3種(ソウハチ・ムシガレイ・ヤナギムシガレイ)
-子持ちガレイの季節です!-
ソウハチ(えてがれい) |
ムシガレイ(みずがれい) |
ヤナギムシガレイ(ささがれい) |
島根県で漁獲されるカレイの多くをこの3種類が占めます。この時期は3種ともまとまった漁獲がみられ、これら3種とも産卵期は1-2月なので、今の時期は雌は子持ちガレイになります。
ソウハチ(エテガレイ):年間を通じた漁獲量はカレイ類で最も多く、肉厚で脂が乗ります。
ムシガレイ(ミズガレイ):関西で浜田のカレイというとムシガレイの干物を指すほど有名です。
ヤナギムシガレイ(ササガレイ):ヤナギムシガレイはササガレイとも呼ばれ、高級なカレイの代表格といえます。その理由は、通常カレイ類の旨み成分であるイノシン酸は死後短い時間で速やかに減少するのですが、このカレイだけは減少速度が遅いため、干物として食べる場合でも十分イノシン酸が残っているのでより美味しいのです(島根県水産技術センターでの分析結果より)。
カレイ類は一般にイノシン酸の減少速度が速いので刺身にするには高鮮度であることが要求されますが、高鮮度のカレイの刺身は大分の城下ガレイが珍重されているように、旨み成分であるイノシン酸が豊富に含まれているので、超お勧めの一品です。
●ヤリイカ(てなしいか)
-雄はお刺身、雌は煮付け、雌雄で料理法が異なります!-
小型底曳網で漁獲されたヤリイカ |
大型の雄 |
左側の写真は10月に小型底曳網で漁獲されたヤリイカですが、12-1月になると、雄は右の写真のように大型が多くなり、漁獲量も徐々に増加します。また、11月までは底曳網だけで漁獲されますが、12月に入ると産卵のため接岸するため沿岸のイカ釣りや定置網でも漁獲されるようになります。雌よりも雄の方が大きくなり、雌は子持ちイカの煮つけが、雄は刺身が美味しく、冬のお薦めの一品といえます。
●スルメイカ
この時期漁獲量が最も多く、沿岸でも漁獲されます-
スルメイカは以下の代名詞とも言える代表的なイカです。島根県では12-1月の漁獲量が最も多く、この時期は定置網などでも大量に漁獲されます。島根県ではこのスルメイカのことを「マイカ」、「シマメイカ」、「サルイカ」など色々な名前で呼んでいます。これらの呼び名の中には、地域によって同じ名前が別の地域では違うイカを指すことがあるので注意が必要です。調理法も名前と同様、刺身、天ぷら、いか飯、酢の物のほか、塩辛、スルメなど、癖のない味わいから、色々な調理、加工品に利用されます。
●マトウダイ(バトウ)
-地元浜田では人気!フライや刺身で美味しい!-
主に底曳網で漁獲されますが、定置網、釣り、刺網でもわずかながら漁獲されます。島根県では年間100~200トン程度水揚げされますが、そのうち3分の2が、9~12月の間に漁獲されます。身は白身で淡白、鮮度のよいものは肝とともに刺身にされますが、加熱すると身に旨みが出るので煮付け、塩焼き、フライ、バター焼にされます。また、フランス料理の素材にも活用されます。バトウフライは「浜田のソウルフード」と呼ばれるほど地元では親しまれています。
●イボダイ(シス)
-地元浜田では人気!フライや刺身で美味しい!-
主に底曳網で漁獲されます。比較的安価で、塩焼き、煮付けなど、どんな料理にも利用でき、重宝される魚種といえます。関東では一夜干しに加工されたものに人気があります。山陰で漁獲されるものはやや小型の個体が多いようです。
●マサバ
適度に脂が乗っていてシメサバや一夜干しには最適!
島根県のマサバの漁獲量は秋?冬に最も多くなります。山陰のマサバはやや小型のものが多く、太平洋側と比較するとやや脂の乗りが旬(秋~冬)の時期に低いのが特徴です。しかし、年間を通じて脂の乗りに大きな差がみられないので、浜田では一部の加工業者が開き干しにして、日本橋しまね館に出荷していますが、ノルウエーのサバと違って、脂の乗りが適度で美味しいと評判です。また、シメサバにするには、旬のサバは脂が多すぎるという声も聞きますが、山陰のサバであれば、どんな料理にも合うレベルなので重宝されること請け合いです。
●アナゴ
-脂の乗りや鮮度が売りです-
アナゴはこの時期、主に底曳網で漁獲されます。アナゴは瀬戸内海産などのものが有名ですが、島根県のアナゴは比較的大型のものが多く、分析結果から脂の乗りは良好なものが多いことが分かっています。現在は底曳網であっても活魚出荷したり、活け締めして出荷されています。高品質にこだわり、活け締めしたアナゴを開きにし、一夜干し等に加工する業者もいます。また、温泉旅館の中には、アナゴ料理を売りにするところもでて来るほどになりました。
マアナゴ(活けしめによる鮮魚出荷) |
マアナゴの活魚出荷 |
●キダイ(れんこだい)
-漁獲量は秋から冬が最も多いのです-
キダイ(レンコダイ)はタイ類の中でも特に美味とされ、高級惣菜物として塩焼き、吸物、煮付け、刺身などにされます。
島根県のキダイは、夏場に脂の乗りがピークに達し、秋には減少するので、この時期の脂の乗りはいまひとつです。しかし、身にはタイ類独特の旨みがあるうえ、秋の時期には底びき網による漁獲量が多く、値段も手ごろになることから、お勧めの一品といえます。
●ミズダコ
-足一本あれば、家族みんなが大満足!-
ミズダコは深い場所に住む冷水性の大型のタコです。これから冬にかけて水揚げが増加します。大きくて柔らかいので、タコのしゃぶしゃぶや、白い部分をそいで刺身にすると美味です。一般に足が食卓に上がりますが、頭の方が柔らかく、味があって美味しい、と漁師さんの間では評判です。また、タコには血液中のコレステロール値を下げるタウリンが多く含まれていますので、健康食品ともいえます。
●カワハギ類
-骨離れも良く、色々な料理に活用できます!-
島根県で漁獲されるカワハギ類のうち、8割以上をウマズラハギが占め、約1割がカワハギです。秋から冬にかけ、主に定置網や底曳網で漁獲されます。鍋物にはよく利用されるカワハギ類ですが、鮮度のよいものは刺身(薄造り)で美味しいほか、煮付けや唐揚げなど、意外にも色々な料理に向いている魚といえます。調理しやすいだけでなく、身離れがよいので、魚料理の苦手な方の魚料理入門の魚ともいえます。
お問い合わせ先
水産技術センター
島根県水産技術センター(代表) 〒697-0051 浜田市瀬戸ヶ島町 25-1 TEL.0855-22-1720 FAX.0855-23-2079 E-Mail: suigi@pref.shimane.lg.jp