宍道湖・中海湖底貧酸素化に関する用語解説
宍道湖・中海の湖底貧酸素化調査に関連する用語です。
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DO 溶存酸素についてはDOという表現がよく使われます。DOというのは溶存酸素(DissolvedOxygen(英語))の略称です。
溶存酸素量(mg/l) 水中に溶存している酸素の量を水1リットルあたりのミリグラム数で表した数字です。ppmも同義です。水に溶ける酸素の量は水温や塩分によって変わってきます。一般に水温が高くなるほど、また塩分が高くなるほど酸素は水に溶解しにくくなります。
溶存酸素量(%) ある状態の水に溶存している酸素の量を、その水に飽和状態で溶解しうる酸素の量を100とした場合の百分率(%)で表した数字です。たとえば、水温20℃の淡水1リットルには最大(飽和状態)で8.0mgの酸素が溶けることができますので、水温20℃の淡水1リットルに4.0mgの酸素が溶けていた場合の溶存酸素量は50%になります。
溶存酸素の過飽和 湖の表層などで植物プランクトンが大量に光合成を行うと、飽和状態以上に水中に酸素が存在するようになります。この状態を過飽和状態と呼びます。
PSU(PracticalSalinityUnit;実用塩分単位) 塩分の単位で、1PSU=1‰(パーミル)=0.1%となります。水1kgに溶解している塩分の量をgで表した数字と同じになります。海水の塩分は約35PSUです。
汽水 海水と淡水が混合した水を言います。宍道湖・中海のように汽水からなっている湖は汽水湖と呼ばれます。
塩分躍層(えんぶんやくそう) 汽水域で淡水(あるいは薄い塩水)と海水(あるいは濃い塩水)が混合するとき、すぐに均一に混合することはありません。海水は淡水より比重が大きいため、淡水の下にすべりこむように入ってゆき、ちょうど水と油を混ぜたときのように2層に分かれます。汽水湖の塩分を鉛直に測ってゆくと、この2層の境界で急に塩分が変化します。この2層の境界を塩分躍層と呼びます。塩分躍層ができると上層と下層で水の交換があまりなくなるため、下層が貧酸素化しやすくなります。
貧酸素 水中の溶存酸素が欠乏している状態を言います。貧酸素という言葉に対して明確な定義はありませんが、ここでは魚介類に影響が出るとされている溶存酸素量3.0mg/l未満の状態を「貧酸素状態」としています。
貧酸素水塊 貧酸素状態の水がまとまった水塊として存在する場合、貧酸素水塊と呼ばれます。汽水湖では塩分躍層の存在により上層からの溶存酸素の供給が絶たれやすいため、下層に滞留した高塩分水がそのまま貧酸素水塊となりやすいことが知られています。
貧酸素水塊の這い上がり 湖に塩分躍層が生じて湖が2層化している場合、湖の上を強い風が吹くと上層の水が風下方向に移動して風下側の水位が高くなり、そのことによって下層の水は底を這うようにして風上方向に移動します。風が強いと底層の水はかなり浅い水域まで這い上がるようにして上がってきます。湖の下層が貧酸素化している場合、塩分躍層より浅い水域は通常は貧酸素水塊の影響をあまり受けませんが、強い風が吹くとこの貧酸素水の這い上がりによって浅海域も酸欠状態になり、魚介類が大量に死亡することがあります。 貧酸素水の這い上がりの模式図
苦潮(にがしお) 貧酸素水の這い上がりが起こると、その水域の水が赤茶色に変色することがあります。これは下層の貧酸素水に還元状態で溶解していた鉄やマンガンが表層の酸素に触れて酸化し、その酸化した鉄やマンガンの色により水が赤褐色に見えるためです。
青潮 下層の貧酸素水の這い上がりが起こった時に、その水域が青白い色に変色することがあります。これは、下層に硫化水素として還元状態で存在していたイオウ分が酸素に触れることによって、イオウ(S)として析出してくるためです。青潮は東京湾など海洋でも起こることがあり、青潮が起こると多くの生物が死亡することが知られています。 貧酸素水の這い上がりがあった沿岸。岸近くは青潮で水が白濁し、少し沖は苦潮で赤褐色に水が変色している。(2002.8.20、本庄工区)
富栄養化 人間の活動や自然からの流入物によって湖の栄養分(チッソ・リン)が増えることです。チッソ・リンが増えると、それを栄養にして植物プランクトンが増えます。富栄養化が進むと植物プランクトンや生物の遺骸が分解しきれずに湖底に堆積するようになり、底質が悪化します。底質が悪化すると、高水温期に底質の有機物が分解する過程で酸素を消費するため、湖底の貧酸素化が起こりやすくなります。宍道湖・中海の湖底の貧酸素化も根本的な原因は湖の富栄養化にあります。
高塩分指数 大橋川の水質測定に関して内水面水産試験場で独自に設けた指標で、中海側からの高塩分水の流入頻度・濃度の指標としています。計算方法は「下層に10PSU以上の塩分が観測された期間(1分を1単位とする)×(観測時の塩分濃度)PSU」を積分して算出しています。(宍道湖からの塩水は10PSUを超えることはほとんどないため、10PSU以上という数字をもって中海からの塩水と判断しています。)
溶存酸素欠損量 大橋川の水質測定に関して独自に設けた指標で、大橋川における溶存酸素欠乏の指標としています。この調査はヤマトシジミ等の底生生物に対する貧酸素の影響を主眼に置いています。ヤマトシジミが生存に影響を受ける溶存酸素濃度は約1.5mg/l以下であることから、DOが1.5mg/lを下回る状態になった期間と酸素欠乏量((観測値−1.5)mg/l×観測時流量)を積分して算出します。理論的にはこれと同じ量の酸素を貧酸素水出現時に供給してやれば、大橋川においてヤマトシジミの生存に必要な溶存酸素量は確保できるということになります。
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