報告第88号
(原田特別支援教育室長)
報告第88号「今後の特別支援教育の在り方に関する検討委員会」の答申概要についてご報告する。
島根県においては、平成19年3月に、今後の特別支援教育の推進に向けた盲・ろう・養護学校から特別支援学校への転換基本計画を策定し、複数の障がい種に対応した学校づくり、多様な学習機会の確保、地域における特別支援教育のセンター的機能の充実といった、当面の特別支援学校の在り方についての方向性を示してきたところである。
しかしながら近年、特別支援教育の対象となる児童生徒の在籍者数が急増しており、様々な課題が生じてきている。例えば、幼稚園から高等学校の通常学級に在籍している発達障がいのある子どもへの支援、特別支援学校の狭隘化とセンター的機能の充実、特別支援学校卒業後の就労支援、そして教員の専門性等々が挙げられる。
今後も対象となる児童生徒の増加が予測されること、新しい障がい種である発達障がいに対する指導方法、支援について対応が求められていることから、昨年の5月に「今後の特別支援教育の在り方に関する検討委員会」を立ち上げ、喫緊の課題である10項目について諮問をしたところである。
今年度の5月から1月までの間に9回にわたって中身の濃い熱心な審議をいただき、先般3月8日に、検討委員会会長から答申をいただいたところである。
答申は10項目からなるが、この中から何点かピックアップしてご報告する。
まず、諮問課題〇2の知的障がい者等の卒業後の就労対策への提言内容は、知的障がい特別支援学校高等部生徒の増加に伴い、一層の雇用の開拓が必要であること。さらに、社会的自立を目指すためにも就労は特に重要であることから、求められる生徒像の実現と望ましい教育環境を整備する上での提言として、島根県らしい職業教育を目指すこと。第1次産業に従事する者の割合が高く、高齢化率の高い島根県においては、農林水産業又は介護分野に着目し、地域と密接なつながりを生かす取り組みをしてはどうかという提言である。あわせて、地域や専門的職業と結びついた職業教育のより一層の充実を図るために、知的障がい特別支援学校高等部に職業コース制を取り入れてさらに充実を図り、現場実習等の充実を図ることが挙げられている。
続いて諮問課題〇3の各圏域の複数障がい種への対応について、平成19年3月策定の転換基本計画において未実施であった、出雲・益田知的障がい特別支援学校における肢体不自由教育部門の設置について挙げられている。さらに同計画には記載されていなかった隠岐養護学校についても、知的以外の障がいのある児童生徒が入学を希望した場合に、適切な丁寧な就学指導に基づき、その受け入れが可能な体制整備を行うことの提言である。
続いて諮問課題丸7の幼稚園・保育所から高等学校までの支援についてである。就学前や高等学校における発達障がいのある幼児、生徒の対応として、まず幼稚園、保育所等に対しては、発達障がいを中心とした研修の機会を整えていくこと。そして、高等学校の新しい取り組みへの提言として、通級指導教室に類する指導等ができる仕組みをつくることが挙げられている。小・中学校では通常学級で支援を必要とする児童生徒のために通級指導教室が設置されており、島根県の特徴として小・中学校の通級指導教室は、ほぼ全県に設置されている。現在、高等学校にはこのような国の制度はない。しかしながら、中学校まで通級指導教室等で指導・支援を受けてきた生徒に対して、指導・支援を途切れることなく継続して行う方策の一つとして、この通級指導教室に類する取り組みをしてはどうかという提言をいただいたところである。
諮問課題〇8関係部局との連携・役割分担については、県が中心となって、関係機関やNPO、親の会等と連携協力を行い、早期発見や適切な支援に取り組んでいくことが挙げられている。
2月の教育委員会会議においてご報告した際、教員の理解・啓発について、例えば採用試験に特別支援教育に関する項目があるのかご質問いただいていたのでこの場をお借りしてご報告する。毎年、一般教養試験においては特別支援に関する項目が取りあげられており、また、小・中学校教諭の場合は、面接試験において特別支援に関する質問を行っている。
この提言内容については、今後約10年における本県の特別支援教育の在り方について述べたものであり、今後、県内各地域における障がいのある子どもたちの教育環境をより充実、発展させるために、この答申内容を踏まえて実効性のあるマスタープランを策定していくこととしている。
(安藤委員)
地区別広聴会の浜田会場に参加したが、やはり保護者の方にとっては切実な問題であり、すぐに解決して欲しい課題が沢山あるようであった。今後10年の特別支援教育の在り方についての提言ということであるが、10項目の提言の中には早急に対応しなければならない課題もあると思う。それに対する考えを伺う。
(原田特別支援教育室長)
ソフト面に関しては可能なところから取り組んでいかなければならないと考えている。ハード面については、予算や計画的な学校整備が必要であるので、教育施設課等々の協力を得ながら計画的に進めていかなければならないと考えている。
(安藤委員)
今すぐに対応できるというものはないのか。例えば、益田養護学校の肢体不自由部門の設置はいつ頃になるか。
(原田特別支援教育室長)
益田養護学校及び出雲養護学校に関しては、学校から一日も早く取り組みたいという要望があるので、肢体不自由部門の設置は早い段階で取り組んでいかなければならない、順位性の高いものだと考えている。
(土田委員)
特別支援学校に限らないことであるが、諮問課題〇6の老朽化対策については10年間で取り組むことが答申されているが、東日本の大地震の影響があるので少し見直して、古い施設から着手する等の対策をとられているか伺う。
(黒崎教育施設課長)
県立学校については、基本的に建物を60年使うということを前提にしており、そのために15年程度でリフレッシュと呼んでいる大規模の修繕を行っている。そうしなければ60年の間、建物がもたない。原則として、おおよそ建築50年頃に、今後改築するのかあるいは新築するのかという方向性を出すようにしている。但し、いわゆるソフト的な学科再編等の理由で、その原則によらずに建て替えを行うことはある。現在、耐震性の観点から、平成22年度も耐震診断や耐震工事を行っており、県立学校で耐震化が終了しているのは推計75%程度となっている。特別支援学校については、耐震化率が県立高校より高くなっている。
老朽化対策については今後10年間を見据えた計画として理解しており、緊急度あるいは重要度に応じて随時措置をしていくことを考えている。
(山本委員)
答申に、小・中学校の特別支援教育コーディネーターに対して指導、助言のできる者を早く養成しなければならないとあるが、どのような指導を行いながら徐々にレベルを上げていくのか、その手立てについて伺う。
(原田特別支援教育室長)
県立学校については、毎年、全コーディネーターを集めて研修を行っている。小・中学校のコーディネーターについては、市町村教育委員会、教育センター又は教育事務所単位で研修を行っている。コーディネーターは各学校に少なくとも1名ずつ配置されているが、初めて特別支援教育の仕事に就かれる方がいるのも事実である。そのような場合には、小・中・高等学校、幼稚園等の要請に応じて、特別支援学校が、例えば個別の教育支援計画、子どもとの関わり方、学級設置、経営の仕方について支援を行っている。今回の提言では、要請を待っているだけではなく、もっと特別支援学校から支援に入っていくべきである旨のご意見をいただいている。研修の内容等を吟味しながら、新規のコーディネーターに対する研修、経験者に対する研修に継続的に取り組まなければならないと考えている。
(北島委員長)
特別支援教育については、島根の教育においても非常に大きなウエイトを占めているものと認識しており、我々委員も高い関心を持っていることであるので、必要に応じて報告や協議をいただきながら進めていきたいと考えている。
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