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議決第51号

(卜部文化財課長)

 議決第51号島根県文化財保護審議会に対する諮問についてお諮りする。

文化財保護条例第4条第3項及び第5条第2項に規定する島根県文化財保護審議会に対する諮問について、ご審議いただきたい。

 諮問事項は2点あり、1点目は、出雲大社境外社を島根県指定有形文化財(建造物)として指定することについて、2点目は、島根県指定天然記念物「諏訪神社参道杉並木」の指定の一部を解除することについてである。

 まず、出雲大社境外社を島根県指定有形文化財(建造物)に指定することについて、種別は、有形文化財(建造物)、名称は出雲大社境外社、員数は6棟である。所在地は出雲市大社町、所有者は宗教法人出雲大社である。

 建造物の構造、形式は、神魂伊能知奴志神社本殿である。これは、通常、命主神社と命主社と呼ばれているものであるが、桁行二間、梁間正面一間、背面二間、一重、切妻造、妻入、階隠、桁行一間、梁間一間、切妻造、妻入、柿葺ということである。

 次に、大穴持御子玉江神社本殿である。通称、乙見社と呼ばれているが、桁行一間、梁間一間、一重、向拝一間、切妻造、妻入、柿葺である。

 次に、大穴持御子神社本殿である。通称、三歳社と呼ばれているが、桁行一間、梁間一間、一重、切妻造、妻入、柿葺である。

 続いて、上宮の本殿である。桁行三間、梁間二間、一重で切妻造、平入、柿葺である。

 それから、上宮の拝殿である。桁行三間、梁間三間、一重、切妻造、妻入、柿葺である。

 最後に、出雲井神社本殿である。桁行一間、梁間一間、一重、向拝一間、切妻造、妻入、柿葺ということである。

 7のところを見ていただくと、出雲大社には国宝本殿を中心に、22棟の重要文化財である社殿が境内にあり、近世以降6度、慶長14年、寛文7年、延享元年、文化6年、明治14年、昭和28年に遷宮が行われているところである。

 寛文7年の正殿式遷宮によって、境内、境外社の社殿は一新し、延享の遷宮では、境内の大部分の社殿を移築、あるいは古材の再利用によって造営し、その後の遷宮では屋根がえを中心とした修造であったことから、現在の社殿は、おおよそ延享の造替で整備されたものだというように考えられているところである。

 これらの境外社のほか、出雲大社には境外に約10カ所の摂社、末社がある。これらも遷宮にあわせて造替されたことが史料によって確認されている。これまでの調査で、現在の境外社のうち延享年間に造営された社殿が5社6棟確認されたところである。

 各社殿についてご説明する。

 神魂伊能知奴志神社であるが、本社の東約300メートルの丘陵すそに位置する摂社である。祭神は神皇産霊神で、命主社と呼ばれている。「出雲国風土記」では、御魂社とあるほか延喜式内社でも、中世宝治期の様子を伝えた重要文化財の「絹本著色出雲大社并神郷図」に描かれている。社殿は、南面してと書いてあり、構造は、延享年間の造替をした「出雲大社延享造営傳」の記載と一致することから、造替以後の大きな変化はないと考えている。

 なお、平成17年に行われた修理で、「御向とこ板」とか「南より四」とか「御向床板南より」とか、「御向西かわ三十二」などという墨書が確認されており、この墨書は、延享造替で解体された際に記されたものだと考えられている。命主社は、境内の脇宮3社である御向社、天前社、筑紫社の平面とほぼ同規模、同形式であり、墨書の記述から、延享造替時に寛文造営の境内摂社御向社の社殿を移築したことがわかる非常に貴重な資料となっている。

 次に大穴持御子玉江神社であるが、これも部材に「脇宮床下」とか「東門神」とか「延享弐年」等の墨書があり、やはり延享造替にあわせて、東門神社等ほか、複数の社殿を転用して建てられたものと考えており、これも延享造替の実態を示すものとして非常に貴重なものだと考えている。

 次に大穴持御子神社であるが、これは通称、三歳社と呼ばれている。これも、現状の規模が「延享造営傳」と一致するということであり、野地板にも「東門神」とか「御本社」とかの墨書があり、これも延享造替の実態を示すものとして貴重だと考えている。

 それから、上宮であるが、本社の西950メートルの丘陵すその集落内に位置する摂社であり、これについては、随神門、拝殿、本殿が並ぶ。切妻平家造の本殿と拝殿をつなぐ配置は、他の境外社とは異なる形をしているが、延享造営にかかる本殿、拝殿が揃って残っているという点で非常に貴重だと考えている。

 それから、出雲井神社であるが、これも「神郷図」に描かれている。「延享造営傳」によると、「宮中末社を以白削建直し」とあって、延享造替時に建て替えられた社殿である。乙見社と同じく、明治の造替時に、現在の形式に縮小されている。今後、修理等があれば、墨書の史料等が新たに発見される可能性があると思う。

 提案の理由であるが、出雲大社境外社は、「風土記」や「延喜式」などの文献史料に記載があるほか、「神郷図」でも境内社と同様に描かれている。出雲大社や周辺地域にとって重要な神事が現在も継承されており、歴史的価値を持つ社殿群であり、いずれも切妻造という大社造の系統を持っている。先ほど来、申し上げているが、延享の造替で、境内社のうちの脇宮3社と門神社の2社のみを新造して、その他の社殿は全て寛文造営の社殿を移築したか古材の一部を再利用したとされている。

 これまでの調査で、御向社を命主社に移築し、東門神社の古材を乙見社、三歳社の2社で再利用し、脇宮3社のいずれかの古材が乙見社に再利用されたことが明らかになっている。出雲井神社についても、境内社の部材が再利用された可能性が大となった。

 先ほどから申し上げているように、「白削建直し」というような、上宮でもそういうことがあるので、古材の再利用が図られたということが考えられている。旧社殿の部材をできるだけ再利用して行われた延享年間の造替の状況を如実に物語るという貴重な建造物である。

 以上のように、境外社のうち5社6棟は歴史的建築史学的にも重要な建造物であり、出雲大社だけでなく出雲地方を中心に広がる大社造の社殿の歴史や、神社の造替システムなどを知る上でも貴重な事例であり、国宝・重要文化財の境内社殿群と同様に文化財としての価値が認められることから、島根県指定有形文化財に指定して保護を図ろうとするものである。資料4の6から4の8までは写真である。

 引き続いて、島根県指定天然記念物「諏訪神社参道並木」の指定を一部解除することについてご説明する。

 種別が天然記念物、名称は諏訪神社参道杉並木で、所在地は邑智郡邑南町矢上74番地、所有者が宗教法人諏訪神社である。指定年月日は昭和44年5月23日である。

 解除の理由は、平成16年の台風23号により3株が倒壊し、この3株については指定解除を行ったところである。その後、傾いたものがあり、その内、参道最奥部の2株については、傾きが大きく、幹に割れが入ったりしており、このままほうっておくと、木が倒れて建物に被害を及ぼす可能性があるということで、所有者としてその伐採を検討している。

 この解除については、ほかの建物を倒す可能性があるということで、文化財の保護上やむを得ないと考えている。

 残る16株については、県内有数の杉の老大木群であり、杉の生育には適さない粘土質での老大木化が貴重という昭和44年の指定理由が失われていないことから、今後も天然記念物として保護していく所存である。4の10のところに2枚ほど写真をつけている。上の遠景の写真ではずっと向こうに先端が1本しか見えないが、下の写真のように倒れている。

(藤原教育長)

 4の2の7)の10カ所と5社6棟との関係を教えていだだきたい。

(卜部文化財課長)

 旧境外社というのは、10社あるが、いわゆる延享造替に伴って再建したことがしっかり確認されている5社6棟だけを指定しようということである。

(藤原教育長)

 10カ所の内数が5社6棟だということか。

(卜部文化財課長)

 そうである。

(石井委員)

 それぞれの建物で、それぞれ別々の神事が行われているということか。

(卜部文化財課長)

 そうである。


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