報告第58号
(大矢世界遺産室長)
報告第58号石見銀山遺跡との組み合わせによる佐渡金銀山の世界遺産暫定一覧表への追加記載について御報告する。
資料15ページをご覧いただきたい。本案件は、国の文化審議会特別委員会において佐渡金銀山が「石見銀山遺跡との組み合わせにより顕著な普遍的価値を持つ可能性が高い」として、日本政府の世界遺産暫定一覧表へ追加記載されることが適当であるとの結論が出され、それをこのほど文化庁が公表されたことに係る案件である。
県とのかかわりにおいての経過は、9月9日に文化庁の文化財部長が教育長に面談され、佐渡を石見銀山に関連づけることが審議されているという情報提供があった。その際は具体的な話ではなく、非常にぼんやりとした話であった。しかし、県としては、県や大田市の意向を十分聞いてもらうように意見を申し上げたところである。24日になり文化庁から、26日に特別委員会の審議結果を公表するということで発表資料のファックスがあった。25日、県と大田市は直ちに審議結果に対する意見書を文化庁へ送った。そして26日に文化庁の審議結果が公表されたことに対して教育長のコメントを発出したところである。
実際の資料をご覧いただきたい。1ページ、報道発表資料とあるが、これが文化庁から公表されたものである。「文化審議会の委員会は、我が国の世界遺産暫定一覧表への追加記載に係る調査・審議を行ってきた、そして地方公共団体から提案、再提案がなされた32件の文化資産について調査・審議の結果をまとめた」とある。
要点だけ申し上げると、3番のところの調査・審議の観点。平泉の登載延期など世界遺産の新規推薦に係る審査が厳格化する傾向などが考慮され、そういったことが観点にあげられており、4にあるように、5件が世界暫定一覧表に記載された。そして次の2ページであるが、5件の名称が挙げられている。北海道、北東北の縄文遺産群、そして「金と銀の島、佐渡」、九州・山口の近代化産業遺産群、宗像・沖ノ島と関連遺産群、百舌鳥・古市古墳群、そういった5つが挙げられている。3ページに「金と銀の島、佐渡」の個別の提案資産別の発表が載せてある。総合的評価のところをご覧いただくと、ここに掲げられているように、石見銀山から導入した採掘・精錬の技術をもとに効率的な金銀生産システムを確立させたというところを引いており、末尾で、「『石見銀山遺跡とその文化的景観』との組み合わせにより顕著な普遍的価値を持つ可能性が高い」という評価をしている。
今後の課題である。文化庁は、提案地方公共団体である新潟県佐渡市及び関係地方公共団体、これは島根県側、島根県と大田市となるかと思う。こういった団体の緊密な協力のもとに「石見銀山遺跡とその文化的景観」と拡大・統合を図るべき資産として、主題、資産構成、資産名称等に関する十分な検討を行う必要があるとしている。ここでいう拡大・統合、あるいは総合的評価の中で掲げられている組み合わせ、こういった概念について我々は初めて目にすることであり、正確な分析はできない。
4ページの米印のところに、「暫定一覧表記載までに、石見銀山遺跡との拡大・統合を図る資産として、適切な名称を設定し、その名称で暫定一覧表に記載する必要がある」となっている。このたびの案件の最大のポイントはその部分等にあって、文化庁からの説明、これは記者会見で言っているが、2つをあわせた遺産としてふさわしい名称にする必要があると言っている。「石見銀山遺跡」という固有名詞、また、世界遺産委員会の中で高く評価された「自然と共生した鉱山運営によって満たされた文化的景観」といった我々にとっては宝のようなイメージが、統合によってどのような形で提起されるかというところが非常に心配なところである。
5ページに意見書をつけている。1番で、事務連絡を受けた。2番で、島根県、大田市の意向を十分聞き調整しないままに石見銀山と佐渡金銀山の組み合わせによる暫定一覧表に記載という方向づけがなされたことは、大きな戸惑いを感じる。3番としては、もとより佐渡金銀山の世界遺産登録については協力を惜しむものではない。4番として、石見銀山独自の価値が認められて昨年世界遺産に登録されたはずである。5番として、10年余にわたって地元が島根県、大田市民一丸になって取り組んできた経過がある。そして6番として、関係者の意見を十分に聞く必要があるということで意見書を出している。
7ページは26日の教育長コメントであるが、「大きな戸惑いを感じており、島根県としては、現時点ではこれについて受け入れる状況にない」というものである。
今後、まずは文化庁からこれまでの経過や審議内容、そして組み合わせによって石見銀山の大事なコンセプトにどのような影響があるか説明を受け、これまでお世話になった研究者、専門家の意見を踏まえ、また県民の皆さんのお声にも耳を傾けていく必要があると考えている。
(藤原教育長)
少し補足させていただく。17日に文化庁が来県することになり、大田市で大田市長とともに文化庁に考え方をただしたいと思っている。今接触している中で、その場を設けるに当たっても、まず冒頭の部分はマスコミの公開の中でやりたい。公開で、今回のこの取り扱いについて、地元の県なり大田市の意見聴取を全くしないままにこういう方向づけをしたということはまことに遺憾であったという表明が文化庁から公の場でなされて初めて話を聞こうと思っている。
いずれにしても、よくよく話は聞いた上で、先ほど室長が申し上げたような我々の考えを言おうと考えている。
(七五三委員)
世界遺産登録が非常に厳しくなってきている。一方で佐渡も非常に熱心に運動を展開してきた今日までのいきさつがあるので、石見銀山と同列に記載をしようということなのだろうが、そんな思想ではつまらない。これを認めてしまうと、長い目で見たら石見銀山が主となるか、佐渡が主になるかわからない。教育長のおっしゃるとおり、文化庁に対して声を大にして主張すべきである。
(山根委員)
説明の中で、一覧表への記載が適当とされた5件の中に佐渡が入っているとのことだったが、どういう段階で石見銀山と組み合わせたいということなのか。
(大矢世界遺産室長)
具体的にはこの文化審議会を受け、国は関係省庁の連絡会議で政策決定され、暫定遺産リストに載せるということである。そのときの載せ方として、石見銀山と統合するということを条件にするということをお考えになっているようである。
(山根委員)
仮に石見銀山と組み合わせて国内の一覧表にあがり、ユネスコで落ちた場合、石見銀山への影響があるか。
(大矢世界遺産室長)
まだ正確な説明を受けていないが、仮に新たなコンセプト、統合型で推薦してユネスコの審査で落ちた場合は、現在の「石見銀山とその文化的景観」というものに戻るだけだという説明であった。
(石井委員)
意見の中の4番目のところ、「石見銀山は鉱山遺跡と文化的景観としての独自の価値を認められた」というところ、特にこの独自性を重視し、佐渡とは違うというところを主張して欲しい。
(北島委員長)
教育長のお話を聞いて、全く私も同感である。やはり石見銀山と佐渡金山をくっつけて金山を何とかしようというくらいにしか思えないので、あまりおもしろい話ではない。教育委員会としてはそのような気持ちであるということを踏まえて対処していただきたい。
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