議決第18号
(卜部文化財課長)
議決第18号島根県文化財保護審議会に対する諮問についてお諮りする。
文化財保護条例第4条3項に規定している島根県文化財保護審議会に、安富家文書を島根県指定有形文化財(古文書)として指定することについて、また、周布家文書を島根県指定有形文化財(古文書)として指定することについて、諮問を行いたい。
まず安富家文書であるが、1の2ページをご覧いただきたい。文書は15通ある。益田氏の庶子家で、鎌倉幕府御家人である安富家では、平安時代末から室町時代に至る文書群を所有している。特に大事なところは、足利尊氏が九州に逃れ、再起して戦を行うわけだが、そのときに石見の丸毛兼幸という武将が足利方として活躍してきた跡が示されていることである。
提案の理由としては、中世益田氏の一族である鎌倉幕府御家人安富氏の家に伝来した文書として今日に伝えられている唯一の史料であり、多数の原文書を含む史料群であること。このうち南北朝時代の文書は、鎌倉幕府滅亡後の後醍醐天皇の所領政策、足利尊氏の謀反とその後の行動、尊氏に敵対する足利直冬の動きなどの全国的な時代の流れの中で、石見国の武士の動きを示すものとして大変貴重な史料であるということである。
1の3ページをご覧いただきたい。続いて周布家文書についてである。周布氏は益田氏から早くに庶子家として分かれた家であり、石見国の周布郷、現在の浜田市周布町を本拠地として、中世を通じて家を保ち、江戸時代には萩藩毛利家の家臣となった。
陶隆房、後に晴賢というが、それが大内に謀反を起こした。文書は5通であり、1551年9月6日から10月13日までの短期間に、そのときのことを文書で示した史料である。
提案の理由をご覧いただきたい。5通はいずれも文書原本であり、隆房のクーデターの余じんを生々しく語っており、守護大名大内氏の滅亡後の石見の領主間の関係や動向など、種々の情勢について重要な情報を提供している点で貴重な史料である。特に天文20年9月6日、1551年であるが、晴賢の書状はこの事件に関する最も基本的な史料であり、石見の周布氏が陶晴賢の反乱にかかわってきたことがわかる史料である。
(石井委員)
1の2ページで、15通が巻子1巻に表装されているとあるが、15通がすべて張り付けてあるのか。また、未刊文書というのはどういう意味か。
(卜部文化財課長)
15通が張り付けてある。未刊文書というのはいわゆる案文である。おそらく出しているのだと思うが、そのお宅に案文として残っていた文書である。
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