• 背景色 
  • 文字サイズ 

報告第29号

(佐藤生徒指導推進室長)

 報告第29号平成19年度児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査結果(小・中学校不登校の概要)についてご報告する。

 文科省の公表にあわせ、本県の結果の公表を行う。

 お手元に5の1ページから5の6ページまでの資料をお配りしているが、平成16年度から3年間、本県の公立の小・中学校の不登校率が全国ワースト1位という大変不名誉な結果、割合を示していた。文科省の方は国立、私立を含めた形での公表もしているが、それも過去3年間1位であった。

 5の1ページの資料であるが、不登校児童生徒数が前年度、小・中学校あわせて1,006名であったが、平成19年度は879名で、小学校、中学校ともに減っている。前年度1,006人は、率にすると1.64になる。それが1.46になった。資料の5の4ページをご覧いただくと、まず、小・中学校の全国47都道府県の割合を示しているが、上から9番目、栃木の1.46がワーストの方から第4位である。14番目、神奈川2位、19番目、山梨1位、長野6位、32番目、本県が5位、39番、高知3位。本県と栃木県が1.46で同じ率だが小数第3位まで計算すると、栃木が1.463、島根が1.455である。

 次に、5の5ページ、小学校の割合だが、20番目の長野の0.47が6位、25番の滋賀が1位、30番、和歌山4位、島根3位、岡山5位、高知2位である。

 続いて、5の6ページ、中学校であるが、9番目、栃木第4位、14番目、神奈川1位、山梨2位、長野6位、奈良5位、島根9位、高知3位という結果である。

 なお、小・中学校あわせたものは、16年度から3年間1位、19年度が5位ということだが、小学校だけを見ても、16年度から連続3年間1位、それが19年度が3位。中学校だけを見ると、16年度が5位、17年度が3位、18年度が5位、19年度が9位となっている。

 5の1ページで、特徴的なことをかいつまんでお話ししたい。

 まず、丸1の不登校児童生徒が在籍する学校数であるが、小・中学校あわせて361校中176校で、48.8%、小学校が257校中91校で35.4%、中学校が104校中85校で81.7%。この割合は、前年度、18年度と比較しても、それぞれ減少している。平成19年度の全国値と比較しても、本県の方が割合が少なくなっている。不登校の生徒がいない学校が増えてきたということが言える。

 丸2番、不登校児童生徒の学年別内訳であるが、括弧内が18年度である。それぞれの学年において減少している。小6から中1にかけてのいわゆる中一ギャップと言われる部分だが、これは全国的に数字が大きく、中学1年生の不登校生徒が増えている状況だが、本県では67から164で2.45倍、全国は3.01倍。さらに、前年度の小6の84名が中1ではどうなったかを比較すると、2倍弱ということになる。全国値もこれが3倍近くになっている。

 丸3番、不登校となったきっかけと考えられる状況について、複数回答であるが、右から3番目のその他本人にかかわる問題、いわゆる極度の不安や緊張、あるいは無気力等で、特に直接のきっかけとなるような事柄が見当たらないのが325という数字で、突出しているわけだが、全国の傾向もこのようになっている。その他、回答数が多いものは、左から2番目のいじめを除く友人関係をめぐる問題、左から4番目の学業の不振、それから右から5番目の親子関係をめぐる問題、これには保護者の強圧的な言葉とか虐待等も含まれると思う。そういったものが数字が高くなっているが、この傾向も全国と大きな差はない。

 丸4番、不登校状態が継続している理由については、これも複数回答だが、不安など情緒的混乱や無気力、いじめを除く他の生徒との関係等が高くなっており、これも全国の傾向と大きな違いはない。

 それから、丸5番、不登校児童生徒への指導結果状況、不登校児童生徒879人のうち、指導した結果、登校する、またはできるようになった児童生徒の数が263人で29.9%。継続した登校には至らないが、好ましい変化が見られるようになった児童生徒が188人で21.4%。この2つをあわせると50%を少し超えるが、平成10年から15年頃は50%に達せず40から45%であった。ここ数年、50%を超えてきているということで、改善率は上がってきている。

 丸6番、効果のあった学校の措置であるが、突出した数字はない。1つの効果でははなく様々なアプローチをしながら子供たちの登校を促しているが、下から4番目、5番目、6番目あたりの登校を促すため迎えに行くとか、家庭訪問、保護者の協力を求めるような生活の改善、いわゆる本人への直接的な働きかけ、あるいは親にわかりやすい形での支援の仕方、親への支援等により、効果が現れていると思う。それから、研修会、事例研究会を通して全教職員のスキルアップを図り、教師全員で、組織で取り組んだ効果も現れているいるのではないかと思う。もちろん上から5番目のスクールカウンセラー、相談員等が専門的に相談に当たったというのも影響していると思う。

 丸7番、相談・指導を受けた機関等であるが、上の6つ、7つ、校外の専門的な機関、この中では教育支援センター、教育センター等の公の機関、あるいは病院、診療所の役割が大変大きいと思う。それから、校内においても、9番、10番であるが、養護教諭、スクールカウンセラーの指導が大きな役割を果たしている。しかしながら、指導を受けていない、指導を受けたくないという生徒も実際にいる。相談・指導を受けた実人数が694人。879から694を引いた185人の子供たちが家庭で引きこもったまま出ようとしないのか、専門的な指導を受けていない。この数は専門的な指導であるので、担任なり副担任、あるいは学年主任等の働きかけはもちろんあるが、もう少し多くの児童生徒が専門的な指導を受けてくれたらな、という感じがする。

 丸8番、9番については、教育支援センターあるいは自宅等で登校することを、学校復帰を前提とした扱いの中で出席扱いとするということだが、丸8番目の方が228人、25.9%。18年度は200人だったので、割合も19.9から25.9と少し増えている。それから、自宅におけるIT等を活用したものについても、18年度は中学校で1人であったが、これが5人に増えている。

 このような結果から、不登校の児童生徒が3年連続全国ワースト1位から、少し順位を下げた、その理由を考えると3つ挙げられると考えられる。

 まず1つが、従来、各教育事務所に5名の生徒指導専任主事を配置していたが、市町村教育委員会を中心とした学校支援体制を推進するために、7名加えて12名体制とした。19年度から始めたが、各学校の支援体制構築が急がれる市町村教委に駐在させ、学校支援をきめ細かく行った成果ではないかなと思っている。

 それから、2つ目として、我々が重点的にやっている不登校対策事業を継続、拡充したことも要因としてあると思う。その中で、まず1つ目が教育相談体制の充実として、スクールカウンセラーの配置事業がある。18年度は国の補助が2分の1で、19年度は3分の1に減らされたが、事業を低下させないよう、本県の負担を多くした。小学校への30%配置及び中学校への全校配置を、平成17、18、19年度と行っている。2つ目が子供と親の相談員の配置事業、これも16年度の17校から、18年度、19年度は25校と、配置を拡充している。

それから、大きな2つ目としては、安心して過ごせる居場所づくりを行ったことが挙げられる。家庭に閉じこもっていることの多い児童生徒の対応として、心のかけ橋支援事業というような事業の回数を増やしたり、教育センターの補助事業等も増やしながらやってきた成果だと思っている。

 それから、3つ目が、教職員のスキルアップのための研修を15年度から逐次増やしてきたことである。生徒指導主任・主事研修や、小・中学校の不登校対応研修、生徒指導危機管理研修、中央講師を呼んでの講演、先進的な取り組み事例紹介、情報交換等をやってきたことにより、教員の不登校児童生徒に対する支援の知識や技能が向上したことが挙げられる。

 このように様々な事業や各学校での取組を通して、組織としての取組の習熟度が高まってきたと感じている。また、いじめ、問題行動等も減少し、学校が落ちついてきたという話を各小・中学校の先生方から聞いている。

 しかしながら、不登校率は依然として高い率を示している。不登校対策事業が低下しないように、教育長がよく言っている「理想はゼロを目指す」というようにやっていきたいと思っている。

 しまね教育ビジョン21の平成23年度目標値として1.3%という値が掲げられている。今後、年当たり0.4%か0.5%ずつ減少していけば達成できる数値である。決して楽な数字ではないが、少しずつでも取組を向上させていきたい。

(渋川委員)

 新たに不登校になったのか、それとも継続して不登校であるのか、それによってケアの仕方も変わってくると思うが、どのように対応しているのか。

(佐藤生徒指導推進室長)

 小学校時代に不登校傾向で、それが高学年になって教育支援センターに通いながら改善され、中学校に入って気持ちを切りかえて学校に出られるようになったという生徒もいる。その生徒に対し、担任が「順番に自己紹介するから1分間考えてきなさいよ」と言われた、そのことがまたプレッシャーとなって休みがちになるという場合も考えられるだろうし、不登校傾向がなかったのに新たに不登校になる生徒もいるだろう。それを一人一人調査して、一人一人に合った改善策を考えていく必要はあろうかと思うが、それは各学校の先生方、あるいは小・中学校が連携して行っている状況である。幸いスクールカウンセラーが近隣の小学校、中学校、高校を担当しており、状況をよく承知しているので、その生徒はこうですよという情報を校内研修会、生徒理解職員会議等を使って、先生方への周知徹底を図るよう申し合わせており、実際にやっている学校もたくさんある。

(山根委員)

確認だが、この879人というのは、19年度末に不登校で欠席している数字ではなく、年度中に30日以上学校に行かなかった生徒数のカウント、累計ということか。

(佐藤生徒指導推進室長)

例えば毎週月曜日休む生徒がいる。年間35週あり、30日を超えるので、その子は不登校にカウントされる。例えば1学期に30日間以上休んだ生徒が3学期にはずっと出席していても、この統計では不登校の数の中に入っている。

(山根委員)

 だから、年度末に全員出ていても、30日以上欠席していれば879にカウントされるということか。

(佐藤生徒指導推進室長)

 そうである。

(七五三委員)

 室長がおっしゃったように、ワーストワンであったものがここまで改善されてきたということに対する成果というものを大いに認めないといけないし、後退しないように今後続けて、教育長がおっしゃるように行く行くはゼロになる方向に向かって大いに努力してもらわなければならない。

(北島委員長)

 ワーストワンから改善されたということは、やはり皆さんの努力などいろいろな創意工夫のあったおかげだと思う。これからこの数字がさらに伸びていくことを期待するばかりであるが、考えるに、おそらくこういう状況に陥ってきたのは、去年おととしからというわけではなく、何十年もかけてこういう状況になっているのではないか。30年くらいかけて不登校だとかいじめだとか、そういう社会現象が起こって来たのだと思うが、これが1年や2年ですぐ回復できるものだとは私は思わないので、努力していただくのはもちろんだが、1年2年ですぐ成果を期待できるものでもないと思う。よって、少し長い目で見て、じわじわと上がっていくのが理想的だと思う。30年くらいかけてこういう状況になったものは、やはり30年くらいかけないと戻らないのではないか。余り焦り過ぎないで、去年よりも0.1でも0.01でも上げていくという、そういう地道な努力が大切ではないかと思う。

(山根委員)

 差し支えなければ教えてもらいたいのだが、不登校で1年間全く学校に出ないというケースがあるのかないのか。そういうケースがあったときの取り扱い、進級はどういう定めになっているのか。

(佐藤生徒指導推進室長)

 全く学校へ行かないで小・中を過ごし、高校進学の選択肢の中で通信制課程に入学してくる方も少なからずある。小中学校の進級、卒業は校長の裁量で判断している。

(石井委員)

 児童生徒に特に効果があった学校の措置という中に、登校を促すため電話をかけたり迎えに行くなどした、というものが挙げてある。ほったらかしにしておくのはいけないということはよくわかるが、電話や迎えが不登校の子供に対する対応として正しいのかどうかが気になってならないが、どうだろうか。

(佐藤生徒指導推進室長)

 個人的な話となるがお許し願う。松江の大規模進学校と言われる学校に勤務したときに、当時は教務部長が、先週1週間の生徒の欠席率、遅刻率、それから早退の数を30クラス分全部プリントされて配られた。そうなると、担任している者にとっては、その数字が多くあると学級経営が下手だという解釈を私自身が勝手にしており、何とか休んでる子供を出させたいというふうに、登校を促すために迎えに行ったりした。実際に私が迎えに行ったのが本当によかったのかどうかということは自問自答しながらであったが、私のそのときの考え方が、数字をゼロに近づけるための自分勝手なやり方だった。そのときに当時の校長が、佐藤君、おまえ何寂しそうな顔しているんだとおっしゃり、毎日学校へ出ることがおかしいと思わんかやという考え方をしなさいと言われ、肩の荷がほっとおりて、それで、その生徒が休んでいる原因は何なのかなということを考えるようになった。家庭訪問して、その生徒が部活動で首に麻痺が来たりして頭が痛い、それで、朝起きられないということがわかり、病院に行ってもらった。そこで改善されて、何カ月後かには学校に出られるようになった。あのとき校長に言われなかったら、私はこれまで考え方を変えなかったのかなと思うと、本当にいい出会いをさせていただいた。

こういう質問項目があって数字が上がっていると、どうしても数字が高い方がいいのかなと思ったりするものだが、実際に考えてみると、委員が言われるように一人一人の子供たちの状況を把握してやる必要があるというように思う。

(石井委員)

 中学校の子供というのは本格的に学校へ行きたくないという子供が出てくるんだろうと思うが、小学校の子供というのは、不安感から学校へ行けなくなるという子供が意外に多いような気がしてならない。根本的に不安感が取り除けないような子供というのは、何回出てきてもやはり不登校に戻ってしまうと私は思うので、その根本的なところ、どこの辺りに不登校の原因があるかということを、きちんとみんなで相談すべきではないかと思う。

(佐藤生徒指導推進室長)

 各学校の先生方はそれぞれの生徒の状況により、登校刺激を与えた方がいいか悪いかをきちんと判断してやってもらっているところである。

(藤原教育長)

去年も言ったが、病欠の割合が島根が0.1なのに鳥取は0.51、全国平均だと0.43である。病欠なら大体そろってくるべき数字であるのが、極端に少ないところと、多いところで差がある。これはやはり分析上の問題というのもこの中には内包しているということは了解いただきたい。

(北島委員長)

回答の仕方が、県によって病気ととるか不登校ととるかというのは、多分あろうかと思うので、あながちこれがきちんと1から47までが全くきれいに並んでいるというのは私も思っているわけではない。だが、実際に、やはり高いのは事実だろうという気がするので今後も努力願う。

 


お問い合わせ先

島根県教育委員会

〒690-8502 島根県松江市殿町1番地(県庁分庁舎)
島根県教育庁総務課
TEL 0852-22-5403
FAX 0852-22-5400
kyousou@pref.shimane.lg.jp