報告第21号
(和田管理監)
報告第21号石見銀山遺跡の世界遺産登録についてご報告する。
5月12日にユネスコの諮問機関であるイコモスから評価結果と勧告が出たが、勧告としては登録延期ということであった。その後、文化庁が中心になり推薦書を補足するような資料を作成した。そういう資料を基にして、外務省、ユネスコの日本政府代表部が、ユネスコ世界遺産委員会の構成国の日本以外の20カ国に対して、石見銀山の価値について説明を続けてきたということである。一方で、イコモスの報告書の中にある点について、事実誤認を指摘することができるルールになっているので、事実誤認を指摘する文書を作成して、ユネスコの世界遺産委員会に送付したと同時に、諮問機関であるイコモスにも送付して受理されたということである。そういった経過を踏まえて、6月28日にニュージーランドで開催されていた世界遺産委員会で石見銀山遺跡が審議をされたということである。
これについては、最初にイコモスから勧告内容の説明があり、かなり厳しいものであった。その後、各委員国からは石見銀山というのは16世紀の頃から環境に配慮し、自然と共生した鉱山経営がなされてきたと高く評価をしてもらった。全部で7カ国ぐらいから発言があったと思うが、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、アジアの各大陸の委員国から押しなべて高い評価をもらい石見銀山遺跡は登録延期ではなく、登録にすべきだという評価をもらうことができた。そのようなことから結果として、登録延期勧告を覆して登録となった。
7月2日の最終日に登録内容が世界遺産委員会で決定されたが、資料6の2はその概要である。4点あり、第1点目は登録基準が10ほどあって、そのうち最低1つは該当しないといけないという基準がある。石見銀山の場合、10の基準のうち3つの基準に該当することを説明してきたが、いずれも認められた。
基準該当の1つ目は、東アジアとの間、あるいは洋の東西、そういう間の経済文化交流に大きな影響を与えたということである。2つ目は、鉱山技術などその考古学的な遺跡として非常によく残っているという点が評価された。3つ目は、文化的景観という観点で、鉱山とか山城、街道、港、港町、そういった適地的な土地利用の全体像が非常によく残っているということが該当するとされた。
第2点目と第3点目は、さらに登録後はこうした方がよいという、いわゆる勧告であるが、保存管理計画を確実に実行していくこと、あるいは歴史的な建造物の保存事業を継続してやっていくこと、それから、竹とか樹木の根が地下遺構を侵食しないように保護対策を考えていくことなどである。
第4点目は、これはいわゆる勧告よりもう一段強い要請ということであるが、今後さらに石見銀山遺跡や、より広域の国内外にわたったほかの鉱山遺跡と比較研究することなど、いろいろなテーマを設けて、テーマに基づく研究を今後とも力を入れて行うよう指摘がなされている。
いずれにしても、こういったことについては、今後、国とも協議しながら、登録を新たなスタートとして、取り組んでいきたい。
なお、石見銀山遺跡は正式には7月2日に世界遺産登録されている。
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