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2015(H27)年 <  2016(H28)年 年報    > 2017(H29)年
目次 I.概要 II-1.発生状況の解析と評価 II-2.定点把握疾患発生状況 III.検査情報
全数把握 週報(インフルエンザ・小児科・眼科・基幹定点) 月報(STD・基幹定点) 精度評価
印刷用ページ 1.発生状況の解析と評価 発生状況 表5.指数(県) 表6.指数(地区) 表7.地区 表8.月(県) 表9-1.月(東) 表9-2.月(中) 表9-3.月(西) 表9-4.月(隠) 表10.年齢

インフルエンザ報告者の年齢区分割合
3)インフルエンザ定点感染症の流行状況:表5から10、図1から4
 1999年4月から小児科、内科、計38の定点で実施されている。2016年のインフルエンザの報告数は8,154件(定点当り214.6件、流行指数1.01)と2006年以降で中位の患者数であった。2013年から連続して8,000件を超えているが、過去3年間と大きく異なった点は、B型が大部分であったことである。
 県全体では、1月に入って流行が始まり、2月から3月がピークで、以後減少に転じ5月末で終息した。
 医療圏域別の定点当り報告件数は、雲南圏域266.3、松江圏域257.1で大きく、次いで出雲圏域が227.4、大田圏域が211.3、益田圏域185.8で、浜田圏域は133.6、隠岐圏域は124.5と小さかった。
 年齢別では、前年よりも5から9歳の患者数が少し多く、その分60歳以上の高齢者の比率は減少し、2014年に類似した年齢分布であった。
4)小児科定点感染症の発生状況
 2016年のインフルエンザも含めた総患者数は27,899件であり、過去10年間では第4位と中上位であり、流行指数も1.05であった。例年よりもインフルエンザ以外の患者が少し多い年であったと言える。
(1) 全県的な感染症の流行状況:表5,図2
流行指数(2016年報告数/(2006から2015年の平均報告数))
ア) 患者報告数が特に多かった疾患 ( )は流行指数
伝染性紅斑 :757件(2.72)
 2016年は、2006年、2011年に次ぐ流行年であった。5から7月の出雲圏域を中心に、1年を通して全県で流行した。
百日咳 : 15件(2.34)
 2008年の19件以外ずっと1桁の患者数であったが、2016年は15件の発生があった。4混ワクチンで撲滅された過去の病気と思われがちであるが、忘れてはいけないと警鐘を鳴らしてくれたのかもしれない。
咽頭結膜熱 :1,203件(1.87)
 過去10年間でもっとも多い患者数であった。代表的なのはアデノウイルス3型によるものであるが、アデノウイルスは遺伝子型が50以上存在すると言われているので、簡単に減ることはない疾患と考えられる。
A群溶連菌咽頭炎:2,737件(1.62)
 全国的に2014年から通年的流行期にあり、島根県も同様であるが、2016年もその傾向の延長と考えられる過去3番目の患者数であった。
RSウイルス :1,040件(1.59)
 2011年10月から非入院の場合の検査も保険適応となっているため、2011年までと2012年以降は分けて見るべきである。2016年は、2012年からの5年間で3番目、ほぼ平均的な患者数であった。前年よりも、10月-11月に患者が集中して発生した。
流行指数(2016年報告数/(2006から2015年の平均報告数))
流行性耳下腺炎:1,125件(1.44)
 過去10年間で4番目に多い患者数であった。2013年が最少の86件で、以後漸増傾向にあり、2016年は前年よりもかなり多い患者数であった。潜伏期が長い疾患であるので、一度流行するとかなりの期間続くと予想される。2017年も流行の持続が懸念される。
感染性胃腸炎:10,396件(1.06)
 過去10年間での報告件数は、7,695から11,753件と変動幅は比較的に小さい。2016年はこの中で4番目に多い患者数であった。原因ウイルスとしてもっとも多いとされているのはノロウイルスである。ノロウイルスの遺伝子型が2016年は変化したと国立感染症研究所から報告されているが、1昨年から昨年の2年間少なかった患者が再増加した原因は、島根県でも同様のことが起こっているのかしれない。解析の結果が待たれるところである。基幹病院定点におけるロタウイルス胃腸炎増加も、注意して今後の経過を見なければならない。
イ) 患者報告数が例年並みであった疾患 ( )は流行指数
突発性発しん :732件(0.91)
 「流行」とする疾患ではなく、2006年以降703件から917件と変動幅は小さい。本疾患が毎年ほぼ一定数登録されているということは、本サーベイランスが安定的に機能していること、定点医療機関が精度的にも問題が少ないことを示していると考えられる。
ウ) 患者報告数が例年より小さかった疾患 ( )は流行指数
ヘルパンギーナ : 531件(0.80)
 2007年(1,030件)以降、大きな流行はみられない。2016年は過去10年間の中で少ない方であった。出雲圏域を中心に、6月ピークで5から9月に流行した。
手足口病:564件(0.42)
 2011年(3,659件)の大流行以来、隔年で流行する傾向にある。昨年が2,680件と流行年であったためか、2016年は564件(0.42)と少なかった。5から6月に松江と出雲圏域で小流行し、10月ピークの9から12月に隠岐を除く全圏域で中流行が見られ、越年した。
水痘:331(0.22)
 2014年10月から水痘ワクチンが1から2歳(2014年度のみ1から4歳)を対象に定期接種化された。2013年までは毎年1,400件を超えていたのが、2014年1,117件(この年のワクチン施行は3か月のみ)、2015年428件、2016年331件と、ワクチンの効果が顕著であることがこのデータからも明らかである。
(2) 地区・圏域別にみた流行指数:表6、7、9、図2
東部(隠岐を含む) :伝染性紅斑(2.48)、A群溶連菌咽頭炎(2.21)、咽頭結膜熱(1.60)
中部 :伝染性紅斑(3.07)、咽頭結膜熱(2.23)、RSウイルス感染症(1.92)
西部 :伝染性紅斑(2.61)、流行性耳下腺炎(1.87)
= 定点当りの報告数が特に多かった圏域 =( ) 内は定点当りの患者報告数
RSウイルス感染症:出雲圏域(85.2)、松江圏域(52.9)、雲南圏域(42.5)
咽頭結膜熱 :出雲圏域(132.8)、松江圏域(56.7)
A群溶連菌咽頭炎 :松江圏域(218.9)、出雲圏域(146.4)、雲南圏域(131.0)
感染性胃腸炎 :松江圏域(666.9)、大田圏域(556.0)、出雲圏域(501.6)、雲南圏域(342.5)、益田圏域(334.3)
水痘 :雲南圏域(23.0)、松江圏域(18.0)、出雲圏域(15.0)、益田圏域(13.0)
手足口病 :出雲圏域(39.0)、松江圏域(27.7)、浜田圏域(24.0)
伝染性紅斑 :出雲圏域(55.2)、隠岐圏域(45.0)、松江圏域(35.1)、益田圏域(33.3)
ヘルパンギーナ :出雲圏域(47.8)、大田圏域(37.5)、隠岐圏域(24.0)
流行性耳下腺炎 :益田圏域(87.0)、雲南圏域(67.0)、松江圏域(66.1)
月別の報告患者数
月別の報告患者数
月別の報告患者数
(3) 感染症患者月別発生状況:表8、9、図4から6
 月別(1か月は4週に換算)にみた県全体の全疾患の患者報告数(インフルエンザを含む)は、インフルエンザの流行を反映した様相で、2月(4,830件)、3月(4,452件)の2月だけ4,000件を超え、その前後の1月と4月そして次のシーズンにかかる12月が2,000を少し超えた件数、逆に夏期の7から9月は1,000から1,200件と少なかった。夏期に少なく、冬期に多いのは例年と同じ傾向であった。
= 流行の季節変動 =(月別報告数は1か月4週に換算)
RSウイルス感染症 :2015/2016年シーズンの後半である1月は126件の患者数であったが、2月46件、3月15件、4月18件と減少し、4月末で終息した。2016/2017年シーズンは、8月後半から始まり、10月の339件がピークで、11月245件、12月65件と、ピーク時の山が大きかった割には早めに収束しそうな気配であるが、2017年1月以降になることは確実である。2016年の総件数は2015年より200件以上減少し、2012年以降の5年間では3位の患者数であった。
咽頭結膜熱 :総件数は1,202で、過去10年で最多であった。出雲圏域を中心に1月から8月に流行したが、ピークは5月と6月であった。9月以降は減少したが、季節によって終息することのない通年性の疾患といえる。
A群溶連菌感染症 :例年と同じく、1から2月の冬期に多く見られた。総件数は2,737と、過去10年間で3番目の患者数であった。
感染性胃腸炎 :例年どおり冬期にピークが認められた。2015/2016シーズンは1月から4月で、ピークの2月は1,243件であった。2016/2017シーズンは10月に始まり、11月には前シーズンのピーク月に近い1,000を超える件数となった。12月は1,171件に増加し越年した。総件数は、過去2年間 8,000台 7,000台と、2年続けて9,000件を切る減少傾向を示していたのが、10,396件と再増加した。全国的に、1番の原因ウイルスであるノロウイルスが遺伝子変化をきたし、そのため流行が大きくなったと言われているが、島根県でも同じことが起こって可能性がある。遺伝子解析の結果が待たれるところである。
基幹病院定点におけるロタウイルス胃腸炎も、前年の76件から240件に増加した。乳児におけるロタウイルスワクチンの普及で、乳児のロタウイルス胃腸炎は減少していると考えられるので、この原因に関しては、注意深く推移を見守る必要がある。
水痘 :2014年10月に始まった1から2歳児の定期予防接種の効果で、2015年はそれまでの3分の1に減少したが、2016年はさらに減少の331件に留まった。もっとも多かった2006年の2157件からみれば著減であり、ワクチンは著効している。季節性変動を云々できないほどの減少である。
流行性耳下腺炎 :総件数1125と、5年ぶりに中流行の年であった。雲南圏域を中心に6月に始まった流行が越年した。
(4) 定点別把握疾患の年齢別患者数の分布:表10
RSウイルス感染症 :RSウイルス抗原検査の保険適用対象が、2011年10月に入院を前提とした患者から、1歳未満という年齢のしばりはあるものの、一般外来患者にも拡大された。そのため、2011年以前とその後を比較しても意味をなさない。
年齢分布は、生後6か月までの乳児17.1%、生後7から12か月の乳児23.6%、1歳代35.8%、2歳代15.0%であり、これらで90%以上というのはいままでと同じであった。RSウイルスは一生繰り返し感染するが、特有の気管支炎鼻炎症状を呈するのは幼若乳幼児のみ、という今までの報告に合致する結果であった。
突発性発しん :生後6か月までの乳児3.3%、生後7から12か月の乳児42.3%、1歳代49.7%であり、これらで95%を超えた。例年と同じであった。
百日咳 :久々に10件を超える15件の報告があった。3件以上は、6か月未満、3歳、20歳以上の年齢に認められた。6か月未満はワクチン未接種または不完全接種、20歳以上は乳幼児期の予防接種から時間が経過し抗体のレベルが低下していたためか、一時期副反応で接種を見合わせた時期があるが、それに該当する年代の可能性がある。総件数は少ないが、忘れてはいけない疾患であると警鐘を鳴らしてくれたともいえる。
○1歳代が最多であった疾患:( )は1歳代の占める割合。咽頭結膜熱(33.6%)、感染性胃腸炎(20.5%)、手足口病(51.8%)、ヘルパンギーナ(35.4%)であり、疾患の種類、割合ともに2014年、2015年と同様である。
○その他の年齢が最多であった疾患 : A群溶連菌咽頭炎(4歳、14.1%)、伝染性紅斑(4歳、17.8%)、流行性耳下腺炎(5歳、16.9%)。
成人の流行性耳下腺炎: 2012年以降一桁で推移していたが、2016年は10件あった。流行性耳下腺炎が流行した年であったので、総患者数増加に伴って成人患者がいたということで、成人だけで流行したわけではない。
2016年の特徴
水痘:2014年10月からのワクチン効果で減少傾向を続けている。好ましいことである。
A群溶連菌咽頭炎:2014年からの流行が持続した。1から2月に特に多かったが、1年を通して認められた。
咽頭結膜熱:出雲圏域の5月から6月を中心に、過去10年間で最多を記録した。通念的に認められた。
インフルエンザ:総件数は、2013から15年より少し少なかった。B型主流、2月から3月ピークの流行であった。
RSウイルス:流行は8月後半から始まり、9月に増加、10月がピークで、12月末にはかなり減少した。
手足口病:前年の5分の1程度の小流行で推移した。
伝染性紅斑:期間の前半、出雲圏域を中心に、かなりの流行を見た。
ヘルパンギーナ:出雲圏域を中心に、6月7月に流行した。
眼科定点の報告患者数
流行性角結膜炎の年齢分布
基幹病院定点の報告患者数
5)眼科定点感染症の流行状況:表5、6、7、8、9、10、図7、8
(1) 急性出血性結膜炎
 非常に強い結膜炎であるが、1992年に全県で113件の報告があった後は急速に減少傾向を示している。2016年は島根県内での報告はなかった。
(2) 流行性角結膜炎
 2016年は、眼科定点報告では全県で78件の報告があり、東部12件、中部37件、西部29件であった。この報告数は昨年の73件を超える大きな流行である。5月から9月にかけて、発症が多くみられた。2015年は、東部で52件と大きな流行を見たが、2016年は12件と報告が大幅に減少しており、前年の経験を踏まえた感染対策が功を奏したのではないかと思われる。発症年齢は、20歳から60歳までの報告が78件中54件と多く、職場での感染、交友関係、夫婦間の感染などが推察される。
 流行性角結膜炎は、感染力が強く、集団感染を起こしやすいので早期の発見、診断が重要であるのはもとより、発症を見た場合の教育施設等への注意喚起が、重要であると思われる。東部地区の感染報告から、感染に対する知識を共有し、対策を整備すれば、大きな流行を抑えることができると思われる。眼科医療機関などでの感染者に対する丁寧な説明と、流行性角結膜炎への理解を深めることが重要であると思われる。
6)基幹定点把握疾患の発生状況:表5、6、7、8、9、10、図9
(1) 細菌性髄膜炎 :2件(0.29)
過去最少タイの2件のみの報告であった。
(2) 無菌性髄膜炎 : 41件(1.04)
7月7件、8月9件と夏期にやや多く、冬期の1月と12月はゼロ、その他の月は散発的認められた。
(3) マイコプラズマ肺炎 :192件(1.88)
2012年に297件の大流行をみた後漸減していたが、2016年は192件と過去10年では2番目に多い年であった。流行の中心は雲南であり、収束に至らず越年した。
(4) クラミジア肺炎 :2件(0.56)
2006年以降、年間1から6件の報告がある。2016年は1月に出雲圏域から2件報告があった。
(5) 感染性胃腸炎(ロタ)
2013年10月から定点報告疾患となり、2016年は今までで最も多い240件の報告があった。

島根県感染症情報センター