感染症流行予測調査の一環として、ポリオウイルスの浸淫状態を把握する目的でポリオウイルス感染源調査を 実施した。調査方法は2002年７〜10月に浜田市内の一定点医療機関を受診した0〜6歳児の糞便58検体を対象に培 養細胞を用いてウイルスの分離、同定を試みた。58検体中19検体からウイルスが分離されたが､ポリオウイルスは 分離されなかった。分離ウイルスの内訳はコクサッキーB2型2株、エコー13型8株、エコー18型5株､アデノ1型1株、 アデノ5型1株､未同定2株であり､型別されたウイルスは同時期に調査対象地域で流行していたウイルスであった。

　（豚の新型インフルエンザウイルスＨＩ抗体調査）
　鳥に由来する新型インフルエンザウイルスは、豚を経由して人の世界に侵入してくるため、豚における新型 ウイルスAH5およびAH9に対する抗体保有調査を行った。
　島根県食肉公社において2002年（平成14年）７月上旬から９月中旬にかけて各旬10頭ずつ、計80頭(全て８ヶ 月齢）から採血した。血清を前処理した後、国立感染症研究所から送付された下記の３種類の抗原に対して、 0.5％ニワトリ赤血球を用いてマイクロタイター法によりＨＩ試験を行った。
　80検体のうち８月下旬に採血した１検体のみがＡ/pa/千葉/１/９７（Ｈ９Ｎ２）に対して陽性(1:10)反応を 示し、他は全ていずれの抗原に対しても陰性であった。陽性検体を国立感染症研究所へ送付し確認検査を依頼 したところ、同抗原に対する陽性反応は確認されたが、詳細な検査により「Ｈ９ウイルスがこの陽性例の豚に 感染している可能性は低い」との結果であった。この調査は1998年（平成10年）以来毎年行われており、Ｈ５ については全例陰性であったが、Ｈ９については2001年（平成13年）に広島県で１検体の陽性例が認められて いる。

表26　豚の新型インフルエンザウイルスHI抗体保有状況：2002年（平成14年）

採血月日	検体数	ＨＩ抗体価
		A/HongKong/9-1-1 (H5N1)			A/pa/千葉/1/97 (H9N2)			A/turkey/Wis/66 (H9N2)
		<10	10	陽性率 (≧10)(%)	<10	10	陽性率 (≧10)(%)	<10	10	陽性率 (≧10)(%)
7月9日	10	10		0	10		0	10		0
7月17日	10	10		0	10		0	10		0
7月30日	10	10		0	10		0	10		0
8月6日	10	10		0	10		0	10		0
8月20日	10	10		0	10		0	10		0
8月27日	10	10		0	9	1	10	10		0
9月3日	10	10		0	10		0	10		0
9月17日	10	10		0	10		0	10		0

　2002年（平成14年）7月から9月の間に島根県食肉公社（大田市）で採取した豚血清についてJaGA#01株に対す るHI抗体の推移および2ME感受性抗体を測定した。結果は下表に示すとおり9月上旬（9月3日）に20頭中9頭（45%） が抗体陽性となり、その内8頭に2ME感受性抗体が認められた。また、9月中旬（9月17日）に20頭中1頭（5%）が 抗体陽性となり、併せて2ME感受性抗体も認められた。
　なお、県下において日本脳炎患者の発生が10月に１例認められた。
＊本調査は平成14年度感染症流行調査実施要領（厚生労働省）に基づき行った。

表27　豚の日本脳炎ウイルスＨＩ抗体保有状況：2002年（平成14年）

採血月日	検査頭数	HI抗体価								HI抗体陽性率 (≧10)%	2ME感受性抗体*１
		<10	10	20	40	80	160	320	≧640		検査数*２	陽性数(%)
7月9日	20	20								0
7月17日	20	20								0
7月30日	20	20								0
8月6日	20	20								0
8月20日	20	20								0
8月27日	20	20								0
9月3日	20	11	1		1	1	1		5	45	8	8(100%)
9月17日	20	19			1					5	1	1(100%)