●発生状況
クラミジア トラコマティス肺炎はクラミジア子宮頚管炎を持つ母親の分娩時に高率に感染し、
新生児肺炎をおこしますが、成人での発症は極めてまれです。
クラミジア ニューモニエ肺炎は小児から高齢者までにみられます。一般に高齢者に多くみられますが、
家族内や集団発生もみられる事があります。クラミジア肺炎は市中肺炎の約1割を占めますが、
感染力は呼吸器感染症の中でもインフルエンザほど強くなく、爆発的な発生はみられません。
●病原体
クラミジア トラコマティス肺炎:クラミジア トラコマティス(
Chlamydia trachomatis)
クラミジア ニューモニエ肺炎:クラミジア ニューモニエ(
Chlamydia pneumoniae)
●感染経路
クラミジア トラコマティス肺炎:罹患年齢は新生児から乳児であり、クラミジア子宮頚管炎を持つ母親から分娩時に
産道感染をします。
クラミジア ニューモニエ肺炎:罹患年齢は小児期から高齢者までで、ヒトからヒトへ咳嗽により飛沫感染します。
●潜伏期
クラミジア トラコマティス肺炎:新生児は産道感染から1〜2か月後に肺炎に進展します。
クラミジア ニューモニエ肺炎:3〜4週間です。
●臨床症状
クラミジア トラコマティス肺炎:発熱をみない間質性肺炎像を呈し、結膜炎、鼻炎の症状に続いて、
発作性咳嗽、喘鳴、呼吸困難があります。
クラミジア ニューモニエ肺炎:上気道炎、急性気管支炎、胸膜炎などです。38℃以上の高熱をみる症例は少なく、
肺炎は異型肺炎像を呈しますが、高齢者に多い傾向がみられマイコプラズマ肺炎と異なります。
通常は軽症ですが、高齢者や呼吸器系の基礎疾患を持つ場合は遷延と重症化することがあります。
また、
C.pneumoniaeの感染が冠動脈疾患、動脈硬化症の発症との関わりで注目されています。
●検査室診断
肺炎患者の検査所見では白血球増多、CRP上昇、赤沈亢進が約半数みられますが、上気道炎や気管支炎では炎症所見は
低率です。胸部X線陰影は特徴的ではなく、臨床所見のみでウイルスやマイコプラズマ感染症と鑑別するのは困難で、
特異的な病原体の分離、抗原、遺伝子検出や抗体の検出を行います。
●治療と予防
クラミジア トラコマティス肺炎:エリスロマイシンの点滴静注。
クラミジア ニューモニエ肺炎:テトラサイクリン系薬の点滴静注、軽症例ではテトラサイクリン系薬、
ニューマクロライド系薬、ニューキノロン系薬の内服。小児ではマクロライド系薬を使用します。
●感染症法での取扱い
5類基幹定点把握感染症として指定されていて、診断した基幹定点医療機関の医師は、
最寄の保健所に届出る事になっています。