11月4日質問項目10

10.高等学校等教育改革促進事業の不採択

○山陰中央新報(原田):国の政策の話が出ましたので、島根県にも関わるところで、1問だけお願いしたいんですが、文部科学省が10月23日に島根県教育委員会が再申請した江津と江津工業の統合新設校の事業を不採択としました。知事はコメントも出されていて、納得し難いということもコメントでおっしゃられていますけれども、そしてまた、再度、追加の公募を求めていくということです。今月中には、重点要望もあって、国に出向かれる場面もあるかと思いますが、国に対してどのようにこの件について訴えていきたいのか、お考えをお願いします。

 

○丸山知事:もともとは、2月に示されて、ばたばたで物事が進んできた中で、再申請を認めるということがあったので、不採択となったとしても、不採択理由を確認をして、そこを是正していけば、採択に至るだろうというふうに思っていましたが、残念ながら、ばっさり切られて、はい、終わりという、残念というか、理解し難い結果になっているという状況でありますから、もう一度、追加の公募を実施をしてもらうということを強く求めていきたいというふうに考えております。

 ただ、江津の話は江津の話なんですけど、私は全体として、この江津の話を見て思うのは、これまで学校の環境改善にかける予算って微々たるものだったものが、いきなり1校当たり20億なんていう大盤振る舞いをいきなりするって決めて、何をやってるかって確認すると、例えばですよ、例えば、今の採択分野でいうと、工業高校とか農業高校をイメージしてつくられている柱の一つは、アドバンストエッセンシャルワーカーの育成なんですよ。じゃあ、アドバンストエッセンシャルワーカーって何って定義は注意書きで書いてあって、デジタル技術なども活用して、現在よりも高い賃金を得るエッセンシャルワーカーの育成というふうになってます。これぐらいだったらまだ分かるんだけど、じゃあ、具体的に何かグランドデザインとかという中でどういう要件が設けられているかというと、例えば、これ、さっきのことを具体化していってる内容は何かというと、AIやデジタル技術を駆使しながら地域産業や社会の課題を解決できる人材、地域発のイノベーションを興すことができる人材。これは極めて立派な人材像ですよ。でも、AIやデジタル技術を駆使しながら地域産業や社会の課題を解決できる人材って、申し訳ないけど、大学卒業して、理系だから、修士ぐらい出たとして、そういう人材になれるかどうかという水準ですよね、普通。普通、大学で教わることをきちんと吸収するとか、研究をする上で必要な実習とか、検証みたいなことをきちんと自分でできるようにするとかということで、理系の人たちって、学部のときから、アルバイトができないぐらい一生懸命やって、文系に比べて勉強しなきゃいけなくて、学ぶことがたくさんあって、それで、地域産業や社会の課題を解決できるというとこまで求められても、みんなができるわけじゃないですよね。大学院まで行ったってできるかどうか分かんない人材育成の目標を提示させられてる。

 もう一つ言うと、地域発のイノベーションを興すことができる人材って、地域発だからちょっとスモールなスケールにしてあるけど、イノベーションって、何か申し訳ないけど、私、57にもうすぐなるんだけど、57年間のうち、22からだから、35年ぐらい仕事してるけど、自分の仕事でイノベーションを興したって言えることないのよね。ありますか、皆さん、イノベーションって。イノベーションを興すって、それは何か業務改善とか、何かそういうのだったらあれだけど、イノベーションって、そんな誰もが興せることなのか。そんなもん、ちょっと四文字熟語で言うと大言壮語、実際にできるかどうかにかかわらず、口先だけで大きなことを言う様子なんだけどね。本当に、いや、イノベーションを興せって、高校生ですよ。16歳から18歳までの教育の中で、それをやらなきゃいけないって、誰が本当に担保できるんですか。

 だから、3党合意から始まって、私学の無償化からスタートして、3党合意という政治家の皆さんの合意でスタートしている事業なんだけど、本当に政治家の皆さんが決めてた内容って、こんな何か、本当にできるのかという内容を20億とかけて、お金かけたらできるんだったらいいよ。設備造るんだったら20億あればできる。でも、設備をかけたからってできるかどうか分かんないぐらいの高い目標を要件としてるということに、私は何か寒けを感じる。うまくいかなかったらどうするの、その教育を受けた子どもたち。ゆとり教育を受けた子どもたちって、そのゆとりを取り戻すのには、教育でやってくれないわけだから。教育って、今受けてる子どもたちにうまくいかない教育を受けさせないようにしなきゃいけないと思うのよ、私。できるかどうか分かんないことを、お金渡すんだからやりなよというやり方で、申し訳ないですけど、お金渡すんだからこれぐらいやんなきゃっていって進めようとしている高校教育改革って、大丈夫なんだろうか。うまくいくんだろうか。

 本当に高校教育改革をやるんだったら、高校教育全般を改革しなきゃいけないし、それは、今回の対象は、私学無償化の対象になった私学は対象外で、私学以外で公立をどうやって充実していくかという政策なのに、そういう多額の補助金をやるんだから、富士山より高いような目標を立てて、それをやります、やる絵を作りましたというところをいっぱいつくって、何かリスクの高い教育改変をやっていくということを強いてるという姿が、私はもうこの江津の内容を見て見えてきたので、私はこの江津の、私は、もうちょっと地に足のついたことをやるべきだと思って、島根県の教育委員会もそういう姿勢で臨んで出しましたけど、こういう仕組み自体がおかしいと。私は、採択基準自体をこんなに引き上げてるというやり方自体が、実現可能性のある高校教育改革になってないんじゃないか。こんなことを強いられたら、補助金でお金渡すんだから、これぐらいのことをやれよといって、できるかどうか分からないようなことをチャレンジさせられるというふうなことで、高校生が本当にいい教育を受けられるのか、私は甚だ疑問。

 もう一つ言うと、それはつまり、高校の教育をする側も受ける側も、そういううまくいかないリスクを負わされるんですよ。ゆとり教育みたいな、全く逆の方向だけど。何で私学の無償化という形で私学に対しては大きなお金をみんな一律にお金を入れてくれるのに、何で公立高校になった途端に、そういう無理をして、無理を重ねるようなことに取り組まないと充実させてくんないというふうな、そういう高いハードル、非現実的なハードルを課すのか。つまり何かというと、公立高校を底上げするということを認めないという政策になってるということが大変よろしくない。

 なぜかというと、大都市はもともと人口急増期があったんで、公立高校を生徒数の増加に合わせて整備していくことが難しくて、非常に私学の定員増で高校進学者の増を賄ってきたので、私学率高いんですよ。私学率が高いの。片や、鳥取とか島根とかいうところは、そういう人口急増がなかったので、基本、私立よりも公立のほうが比率が高いわけです、入学定員でいうと。ということは、どういうことかというと、私学に対しては、言ってみれば、授業料は高くて設備もいい、県立高校は、授業料安いけど設備はそんなによくないという中でのバランスが保てたのが、授業料の水準は同じになって、設備水準は私学とかのほうがよくて、公立は低いままだというふうになってしまうと、公立高校がどんどん志望者減で生徒数が減っていく、志望されなくなる、閉校に追い込まれるみたいなことにならないかという懸念を我々持ってるから、公立にもきちんと支援してくれというふうに我々、知事会でも言ってきましたけど、まさにそういう懸念が実現する、しかねない。

 つまり、ちょっと表現が何かちょっと派手かもしれないけど、言うてみたら、私学栄えて公立滅ぶみたいな政策を本当にやるんですか。それは、私学比率が高いところはまだ受け止められるかもしれないけど、我々のような地方で、公立比率が高いところでそんなことやられたら、我々、地方の高校教育を廃れさせていくという政策決定を3党合意でやられてるんですか。こんなこと誰が決めたんですかって言いたいです。本当に何で無条件で私学には国費、公費を投入していくのに、県立高校になった途端に、できるかどうか分かんないことをやるといって取り組まないと支援しないよという、そういうハードルを設けるのか。それが理解できない。

 例えば、これはどういうことかというと、江津の新設校だけの話ではなくて、公立高校全体、日本の公立高校全体がひどい目に遭うんじゃないかと。その先鞭なのではないか。私は、採択されたところもすごいリスクを負って採択されてると思いますよ。20億あるからできるでしょ、余裕でできるでしょってだけじゃなくて、20億あったってできるかどうか分からないことにチャレンジさせられてるという状況だと思うんで、これを、こういうやり方でほかのところに横展開していくというのは、公立高校の衰退につながり、とりわけその影響が大きいのは、私学比率の低い、公立比率の高い地方部だと。そういうところの高校教育の衰退ということを、なぜ私学の無償化を契機にして、我々の地域が引き受けなきゃいけないのかと。そんなことだったらもう、やってほしくなかったというふうに言いたくなる。そんなことまで、そんなことをやるっていう政策決定を政治は本当にやってるんですか。3党合意がやられた、まとめられた当事者の方々が、公立がどんどん衰退していくような政策を展開しようという意味で3党合意なるものを決められたとは思えないんだけど、それを役所が勝手に換骨奪胎してこんなことをやってるんだったら、それは改めなきゃいけないんじゃないかというふうに思っています。

 なので、江津の話というのは江津の話として推論として申し上げますけど、江津の話から具体的に今回の制度をよくよく見て、やっぱり確認できた懸念というのは、公立高校は本当にこういう仕組みの中で、文部科学省の政策の中で本当に大丈夫なんだろうかと。というか、大丈夫じゃないんじゃないかという懸念があるので、やっぱりもうこの基金事業における反省点、問題点をきちんと反省して、公立高校全体を底上げしていくというやり方での、私立と同じようなやり方で高校教育の充実をしてほしい。

 私は、何度も申し上げてるけど、役所が言う改革などというのは、大体ろくでもないんだよ。何かもう小泉内閣以降、何かこの言葉を使わないと何かいけないみたいな雰囲気が蔓延してるけど、大事なのは改善なんですよ。地道な改善なんです。一遍に改革なんて、改革って一遍に何か、マジシャンのこうやって閉じたやつが、ぴっとやったら何か鳩が飛んでいくとかさあ、そんなことないわけよ。鳩を置かないと鳩は飛んでいかない。そんな何か杖をぴゅっと振ると、ハリー・ポッターじゃないけど、魔法の杖を振ると、何かそこら辺にケーキが並ぶとか、そんなことないわけだから、地道な改善を地道に取り組んでいくということをベースに、やっぱり教育環境の改善、教育内容の改善を地道にやっていくということを公立高校で展開できるような財政措置をしてほしいというのが私の考えでありまして、これはそういう意味で、江津がうまくいって採択されてると気づかなかったかもしれないんだけど、私は今回の江津の件を詳しく聞いてみて、やっぱりこのやり方の横展開とか、こういうやり方で全体として学校を選別して、なおかつ、選別されたところもものすごいリスクを負って、結果が出るかどうか分かんないことにチャレンジしなきゃいけないということを強いる補助制度、支援制度というのは、高校教育をよくしていくものとはとても考えられないので、もうちょっと地道な改革をやってほしいと。

 私は思うけど、そういう改革を本当にしなきゃいけないんだったら、私学だってやんなきゃ駄目だよ。何で公立だけやんなきゃいけないんですか。普通科比率が高過ぎて、これからの需要に合ってないというんだったら、私立だって普通科からエッセンシャルワーカーの学科に切り替えてもらわなきゃいけないんじゃないんですか。そうでしょう。何で私学はそのままで、県立だけが変わっていかなきゃいけないの。何でそういうリスクを公立比率が高い地方の教育の中でそういうアバンギャルドなことをやんなきゃいけないのかということを含めて、高校教育改革という何か補助金からスタートした、いきなり出てきたこの言葉、普通で考えれば、高校教育改革を本当にやるのであれば、高校教育改革はやっぱり学習指導要領とか学習の教える内容の中身の標準を決める中で、その標準として変えていかないと、高校教育改革なんかにならないと思う。それを補助金であめ玉ぶら下げて、やることを強いるみたいなやり方でやるというのは、教育の本旨にもとるんじゃないかと。だから、私学だってやんなきゃいけないとならなきゃおかしいし、公立だけがやんなきゃいけないという構造は正しくない。高校教育を本当によくしていくというやり方じゃないと私は思うので、そういうことも含めて訴えていかなきゃいけないなというふうに思ってます。

 ちょっと重点要望をまとめたときにはそこまで気づいてなかったんで、そこまで書いてませんけど、ただ、要するに、この再募集をしなきゃいけないようなやり方はおかしいし、基金事業と言われるやつですけど、基金事業でやられてるやり方というのを横展開していくというのは、そういう問題点を単に拡散させていくことになるので、再考すべきだと。やはり私学と同じように全体の底上げ、みんながプラスになるようなことを、当然何かの取組を求めていくというのはいいと思いますけど、やっぱり何かできるかどうか不安があるようなことを求めて手を挙げさせるというふうなやり方を、お金、補助金を使ってやっていくやり方というのは厳に慎むべきだというふうに思います。すみません、長くなりました。

 

○山陰中央新報:ありがとうございました。

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