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7月25日質問項目3

3.最低賃金
○山陰中央新報(高見):最低賃金の関係を伺えればと思います。

 厚生労働省の審議会が昨日の夜で決着をして、最低賃金の引上げ額を50円アップの1,054円という目安を定められました。物価高の対応とか、必要な引上げだというのは理解がある一方で、地方の経営の苦しい企業関係者にとっては高いハードルになる部分もあって、地域間格差にも影響が広がりかねない部分でもあると思います。これから島根の最低賃金がどうなるかは検討されるところだと思いますけれども、引上げ額のこの目安の評価を知事はどのように見ておられますでしょうか。

 

○丸山知事:今、高見記者がおっしゃったように、こういう数字、昨日決まった数字というのは、この社会にとって望ましい、望まれる、私は数字だと思うんです。これだけ物価高が進んでる、実質賃金が下がり続けてるという中で、こういう最低賃金が引き上げられる状況というのは目指すべき姿だと思うんですけども、問題は何かというと、それに対応できる体力を中小企業側が持っていないんじゃないかということです。

 つまり、つまりというか、もう私、具体的な数字申し上げますけど、これ、山陰中央新報さんの記事で申し訳ないんだけど、ほかの社には申し訳ないですけど……。失礼、朝日新聞さんだ。朝日新聞さんの7月の11日の経済面で、中小賃上げ過去最高2.3%っていう見出しの記事があります。これは、いろんな連合とか日本商工会議所が出してきた数字があるんですけど、これが一番、多分実態を表してると思います。なぜならば、厚生労働省のこの数字は、これ最低賃金を議論するために調べた数字だそうです。厚生労働省が従業員30人未満の1万6,373社を抽出して調査し、5,149社から回答を得た。その平均が過去最高の2.3%だったということです。つまり、恐らく従業員30人未満という中企業とか小企業が自力で上げられる正社員に向けた賃上げ率というのの平均は2.3%なんです。これが法規制ではない、民間に任せて出てくる数字なわけですね。

 それに対して、今回、言ってみれば904円を島根ですと954円にするような数字ですよね。これアップ率5.5%ですよ。5.5%って、大企業の賃上げ率より高いんですよ。最低賃金の議論のために2.3%という数字が出ながら、5%の最賃を上げてくるって、もう破綻してるわけです。5%上げるって決めてるっていうぐらいの、結論から決めてやってるってことですよ。でも、要するに自力は2.3%しかできないんですよ。それを最低賃金のとこだけ5%上げれるわけがない。つまり実力以上の賃上げを、過去最高なんですよ、これ2.3%が。だから、中小企業、少なくとも小企業の体力を超えた賃上げを、これは、最低賃金は強行法規ですからね、義務だから、強制的に賃上げをさせるってことを今回やるってことです。

 だから、少なくともこの従業員30人未満の平均的な企業は対応できない。収益を悪化させる。黒字が僅かだったら赤字になるということが見えてるわけですから、つまり何を言いたいかというと、数字は正しいけれども、この数字を達成できるような状況を政府がつくらなかった。つくれてないということです。つくれてないけど強行してる。賃上げ5.5%かな、最低賃金、島根の数字でいうと。904円が954円だから5.5%で望ましい数字なんだけど、これが実現できる環境を政府はつくってないってことですよ。私はさんざん、ぐだぐだぐだぐだ言ってるけど、こんなことにならないようにしなければいけなかったんだけど、やれてないと。結果、強行法規で法律違反にするぞといって5.5%、最低賃金上げてくる。

 だから、悪代官みたいな感じです、鬼みたいな感じ。できないっていうか、やったら苦しむって分かってることを、もう、あなたたちは法律違反にするぞといって最低賃金引き上げてくる。これは政治の責任ですよ。

 だから、私は本当に中小企業の経営者、怒ると思いますよ。いや、その賃上げ原資を渡してくれてるんだったら、私がさんざん言ってるように、大企業との取引関係を改善してやるって言ってるのは、まだ下請法の改正を今検討してるとか、そんなレベルですよ。そんな環境を実現できてなくて、それを前提とするような賃上げをやれって命令するってことでしょ。だから、やるべきことだけども、やるべき環境をつくれてないのに強行してるっていうところが最大の問題ですよ。

 労働界の皆さん、また、働く立場の皆さんが望まれる内容だし、社会にとっていいことだと、こういう数字が実現できるのはいいことだと思う。ただ、実現できる環境をつくれてない。つまり地域における労働者の生計費及び賃金を考慮して決定するという原則もありますけど、同時に通常の事業者の賃金支払い能力を考慮しなければいけないと。それが最低賃金が課せられているルールなんです。後者の通常の事業者の支払い能力を考慮しない決定をしない限りは、こんな数字、実現できないと思いますよ。

 だから、労働者の生計費、特に生計費が上がってるってことを踏まえた望ましい数字ではありますけど、要するに経営者側がのみ込めない数字であると。これをもう数字決めちゃってるから、恐らく強行してくるんでしょう。もうこれは、少なくとも私、厚生労働省の調査でいうと、従業員30人未満の数字なので、小企業という言い方をしますけど、日本中の小さな企業にとっては、収益の悪化、赤字みたいなことを招きかねない。厳しいというか、受け入れ難い企業もたくさん発生するような決定になってしまうということです。

 なので、やるべきことだけど、やる準備ができてない。やる環境をつくれてない。私は再三申し上げてきましたけど、こんなことにならないように、中小企業の価格転嫁が進むような状況をもう1年2年早く実現しないといけなかったんじゃないかということですよ。順番が逆だと思う。こういうことができるようにするために何が必要かといったら、価格転嫁ができてない中小企業の環境を変える、それを阻害してる人たちをきちんと摘発する、それを現行法律で最大限やる、現行法律で対応できなかったら行政指導を含めてやる、それでもできなかったら法律改正する。やるべきことを全部やるって総理言ってきたわけだから。やってないからこんなことになる。いや、それをやってもできなかったかもしれないけど、やりもしてないってことじゃないんですか。

 長い話になっちゃいましたけど、この数字自体は、労働者側から、生活者側から求められてる適切な数字だと思いますが、それを実現するため、これを実現するのは、最低賃金を支払う側。支払う側が実現ができるかどうか分からない数字になっちゃってる状況になってるということで、危機的だと思います。

 それを、こういう厚生労働省の審議会が決めたからっていうふうに物事が進んでる状況が異常ですよ。これは政治が本当にこんなことでいいのかと、こんなことで国内の小さな企業が立ち行くのかっていうふうに考えて、何か単純に、えらいことをやってる、大変なことをやってるっていう危機感が全くないのがさらに問題です。大変なことをやろうとしてるんですよ。

 だって、実力は2.3%なんだから。2.3%が、法規制がない中で、個別の企業が頑張って出せた数字は2.3%なんです。それを2倍超えるパーセンテージで最低賃金のところを上げましょうって、それはむちゃでしょうって、悪代官みたい。悪代官が悪いことやってるって思ってないから怖いとこだけどね。という感じです。

 

○山陰中央新報:ありがとうございます。

 

○丸山知事:もうちょっと本当ね、こんな厚生労働省の審議会で決まりましたとかっていうレベルの話じゃないですよ。こんなしんどい、小規模企業にとって大変な決定をしなければいけないっていう、しなければいけない、本当にするのかっていう議論を政治の側でちゃんとやっているのかっていう問題です。

 

○山陰中央新報:分かりました。ありがとうございます。

 


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