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10月26日質問項目3

3.性別変更最高裁判決
〇山陰中央新報(白築):ちょうど最高裁の話が出たので、今日の報道にもありますけども、性別変更の違憲判決についての受け止めも、併せて伺えればと思います。よろしくお願いします。

 

○丸山知事:嫌みを言わせていただきますと、まず、「性別変更の手術要件違憲」とかという見出しは、これは不正確です、不正確。これ多分、どっちかいうと誤報に近いと思いますよ。一部の社で採用されている、「生殖不能手術要件は違憲」なんです。法律上の要件の4番目と5番目のうちの4番目を違憲だと判断してる。5番目は高裁に差し戻してる。それを、性別変更の手術要件全体、この4と5を包含するように読める形で違憲だというふうな見出しを立てるのは極めて誤解を招く報道だと思うので、正確を期してもらったほうがいいと思いますよ。つまり生殖機能を失わせるという手術まで求めるのは適当ではないと、憲法に違反してるという判断が下ったということで、5番目の要件である変更後の性器部分に似た外観があるという要件、この要件についてまで違憲と判断しているわけではない、差し戻して高裁で審議しろというふうに言っているというふうに、正しく報道していただきたいということであります。

 受け止めとしては、4番目の要件を違憲とするというのは違和感がないことですけど、5番については、一部の反対意見、違憲とすべきだという意味での反対意見ですね、高裁への差戻しじゃなくて、違憲だと判断すべきだという反対意見を書かれている判事がおられますけど、大きく問題を捉えると、私は、この問題は性別というものを医学的な客観条件なり外観、準身体的な外観という客観要素で決めるのか、主観要素で決めるのかという、そこの相克なんですよ。いわゆる性自認のずれというケースが生じ得るということは、もうこれは皆さん知られた事実ですし、そういう方々が様々な、社会・経済活動の中で不便だったり、差別があったり、十分な理解がなかったりということになり得る状況を改善していかなければいけないという状況にありますけども、端的に申し上げて、性別という戸籍に記載する客観的な事実が人の主観で決められるのか。主観というのは変わり得ますからね。自分の内心で変えれるものというふうに扱っていいのかどうか。そういうふうにしていいというふうに、この社会がそういうふうになって対応できるかどうかということが、この5番目の要件は問われるんだと私は思います。

 つまり、どうしてもLGBTの皆さんとか、困っておられる方々がおられるのは、これは事実。ただ、例えば女性トイレとか、女性の浴場に女性の方からすると男性と認識せざるを得ない人がおられるかもしれない、おられるといった状況を許容しなさいというふうな社会とするかどうかということでしょう、はっきり言うと。それを、なおかつ、悪意を持ってそれに乗じてわいせつ行為を企図しようという人もいるかもしれない。そういうよからぬ人がいる。犯罪行為を計画しようとする者もいるかもしれないし、捕まっても、主観で自分は女性だというふうに言い逃れようとする、それを認めるのかどうかというシビアな問題があるわけですよね。それが、トイレに入るまでは男性として振る舞っていて、入った瞬間に女性なんだというふうに主観が変わりましたって、要するに主観というのはそういうことだから、究極言うと、悪用されることを考えれば。自分は女性として入ったんだというふうに、極論だけど、でも、実際、みんなが恐れているのはそういうことですから。そういう言い逃れを許すのかということになりますよね。そういう人はいないことを望みますけど、でも、現実問題としていることも想定しなければいけないし、女性の立場からすると、そういう場所に入りたいと思うかどうかってなると、最後はどうなるかというと、女性用の浴場とか女性用のトイレって、女性からすると使えない場所、行きたくない場所、女性以外の人がいてもおかしくない場所となったら、使えなくなっちゃうわけですよ。少なくともそういうリスクを許容し難い方からすると。なおかつ子どもを一人で行かせれるか、トイレに。

 埼玉の条例(案)だと条例違反になりそうだったんですけど、分かりませんけど、そういうことも含めて、そういう性別というものを、いわゆる身体的、医学的な属性と違う自認をされる方がおられるという事実、そして、そういう方が困っておられるという事実、これは正面から受け止めなければいけないでしょう。ただ、それをもって主観で自認のところで性別を決定する。それは自認だから何も制度を設けなければ変更できるとかという扱いにするのかどうか。じゃあ、どこかで決めようとしたら、何歳で決めるのか。何回まで変えれるのか。戸籍は、出生時に医師が診断すれば、今の仕組みでいくと、男性、女性決めて、戸籍で登録するという形でスタートしますよね。だから、それを大幅に転換するという話になって、それは、浴場が工夫すればいいとか、トイレの設置者が工夫すればいいという話じゃない。設置者が困るとかって話じゃなくて、多分どっちかというと、利用者が困るんですよ。そんなトイレ、使おうと思っても使えない、女性にとって、外出して使えるトイレがほとんどなくなるとか、女性しか使わない個室のトイレを整備しないと、そこまで、そういうとこじゃないと入れない、安心して使えない。その施設整備なんて、すぐにできないです。

 もう一つ言うと、浴場なんていうのは営業でやっていますからね、民間のビジネスで。そういうことになれば、事実上、女性がお客さんとして、女性用の浴室を準備したとしても、女性のお客さんが来なくなる。そんなことだって想定されますよね。だから、それって浴場の、浴場法とか分かんないけど、何とか法とか、何とか規則とかで、何かうまく工夫すれば何とかなるって話じゃなくて、人間の予見可能性を奪わないような法制度じゃないと、予見可能性がないところに行けなくなりますよね。だから、結局のところ何が起きるかというと、あまり不安定なそういう仕組みをつくってしまうと、女性がこれまで使えていた設備とか施設を使えなくなるという状況が生じかねないんじゃないかと思いますし、それに伴って、これまでできていた営業ができなくなるということだって発生する。それは、そういう施設とかの設置者が工夫してできることじゃなくて、ある程度きちんと決め事としてこの性別を決定してもらうと。客観的な要素で決めてもらうということがないと、主観で決定するという仕組みを認めてしまうと、そういう混乱が避けられない。そういう混乱は、行政が手当てするべきなんだというふうに司法権が思うのかどうか知りませんけど、そういうとこまで含めて、与える影響というのは大変大きいと思います。要件5の差戻し審と、最高裁が再度判断することになるんでしょうけど、与える影響というのは、私は、ちょっと名前忘れましたけど、反対意見の裁判官が書かれているような簡単な話で、紙で書く話で事が済まない。性自認のずれのない女性の人たちがどういうふうに行動せざるを得なくなるのかということを具体的にイメージして、それを行政府がちゃんと対応できるのか。とか、事業者がそれぞれの責任でやらせるとかという、そんな簡単な理屈で社会が対応できるのか。それで性自認のずれのない女性の方々が困らないのかということを具体的に考えてやってもらわないと、非常に影響が大きいので、机上の空論じゃなくて、最高裁の建物の中で鉛筆やパソコンをたたいて考えるだけじゃなくて、想像力を働かせて、社会がどういうふうになるのかということを具体的にイメージして判断してもらわないといけない論点じゃないかというふうに私は思います。

 私の個人的な感想でいくと、やっぱり主観、自認で性別を決定していくという世界を貫徹していくというのは、非常に混乱が大きいし、国民の皆さんの理解が得られるのは大分難しいんじゃないかと。それを最高裁が強いるのであれば、それこそまた、さっきの話に戻りますけども、それを、そういう判断をした人たちを審査する仕組みがあるから、そういう中で審査していかなければいけない。そういうことだと私は思います。

 

○山陰中央新報:ありがとうございます。

 


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