島根で活躍する人たちの「視点＝eye」で語ってもらいます。

技能グランプリで内閣総理大臣賞

今年2月に開催された第31回技能グランプリ。住宅に壁紙を張る「壁装」の技術を競う壁装職種で、池田謙志さん（出雲市）は島根県勢初の金賞に輝いた。さらに壁装職種を含む建設部門10職種の中で、特に優秀と認められ、内閣総理大臣賞が授与された。「3度目のグランプリ挑戦で目標だった金賞が取れた上、内閣総理大臣賞にも選ばれ、とてもうれしい」と満面の笑みを見せる。

20歳で内装会社に入ったが、先輩の技術力を前に、自分の力のなさを痛感した。そんな時、技能グランプリの存在を知り、職人の全国一を決める大会があることに衝撃を受けた。「グランプリに出たい」という目標ができると、気持ちに変化が表れた。「仕事が楽しく、ワクワクするようになった」。しかし、簡単には技術は向上しない。

33歳で独立して池田内装を立ち上げてから、グランプリ銀賞の経験がある職人の元へ通い、一緒に全国の現場を回った。寺院などの文化財も担当し、特殊な技法を学んだ。請け負う数を増やせば収入も増えるが「時間がかかっても、お客さんにいいものを受け取ってほしい」と仕事への取り組み方も変わった。その心構えがミリ単位の技術が問われる技能グランプリで発揮され、栄冠へとつながる。

「次は会社にいる20代の若手職人に同じ舞台に立ってほしい」と話す池田さん。「スポーツ選手が1位になれば憧れの存在となるように、職人にも技を競い輝ける世界があることを、若い人や子どもたちに知ってほしい」と願う。次世代への技の継承も見据え、壁装に興味を持ってもらえるよう、子ども対象の体験教室の開催も考えている。