地域を守り、のばす
関係人口の拡大/地域を応援する人たち増えています
「関係人口」という言葉をご存じですか。移住した「定住人口」でも、観光などで訪れた「交流人口」でもなく、その中間に位置するのが「関係人口」。県内外の都市部など地域外に住みながらも、その地域と多様な方法で関わりを持ちながら応援してくれる人たちのことを指します。皆さんも関係人口の一人として、あるいは関係人口を迎え入れて、地域づくりに取り組んでみませんか。
島根県では人口減少と高齢化によって、地域づくりの担い手が不足しています。このような中、島根への理解を深めて地域への関わり方を学ぶ「しまコトアカデミー」や、田舎暮らしを体験する「しまね田舎ツーリズム」により、都市部の人々と地域住民との交流を進めてきました。こうした県の取組を通して、地域課題の解決に役立ちたいという思いを持つ人々と連携した活動が始まっています。
今後はさらに「関係人口」を増やすとともに、新たな地域づくりの担い手となってもらうための仕組みづくりを進めていきます。
地域で活動する皆さん
ユタラボ(益田市)
浜田応援団(浜田市)
田んぼで金魚(出雲市)
江の川鐡道(邑南町)
ぼくらの学校(奥出雲町)
出雲古志古民家塾(出雲市)
草刈りを楽しいイベントに
雲南・草刈り応援隊
宇山地区で活動する草刈り応援隊(平成30年7月撮影)
中国山地の山あいにある雲南市吉田町の宇山地区。朝晩の寒暖差ときれいな水によってブランド米の「うやま米」が育ちます。しかし、課題があります。刈っても刈っても、勢いよく伸びる田んぼの草が、高齢化の進む生産者たちを悩ませているのです。
それを逆手に取ったのが「草刈り応援隊」。藤本米穀店(松江市)の藤本真由(ふじもとまさよし)さんが米の産地を盛り上げようと、同地区の住民と議論を重ねる中で、草刈りのイベント化を提案したのがきっかけで生まれました。「やったことがない人にとっては、草刈りも面白いはず」と藤本さん。
応援隊のプロジェクトは平成29年に始まり、島根を中心に、東京、愛知、広島などから多いときには年間で延べ50人が参加。山里に広がる田園風景に「こんな世界があるとは…」と感嘆の声があがるそうです。さらに参加者を引きつけるのは地元の人たちの存在。一緒に昼食を囲むと温かい人柄に引かれていきます。
今年5月の草刈りは、新型コロナウイルスの影響で地元のみで行いました。それでも「草刈り応援隊」をはじめ関係人口の人たちとは、つながっています。うやま米をインターネットで購入してくれるのです。
藤本さんは「生産者の顔が見えたことで、うやま米や地域のファンになる人が多いです。消費者と宇山のつなぎ役になれて嬉しいです」と笑顔を見せます。
宇山地区に関係人口をつなぐ藤本真由さん
地域づくりに向けマッチング
ふるさと島根定住財団
関係人口と地域をつなげるいわゆる「関係案内所」の役割を担っているのが、ふるさと島根定住財団(松江事務局・石見事務所)です。県内各地の事情に詳しく、地域団体が関係人口と一緒に取り組む地域づくりを支援してきました。
さらに今秋には、地域と関係人口のマッチングサイトを開設する予定です。地域のやりたいことや困りごとを「募集票」で見える化し、その解決に向けた取組に興味を持つ関係人口へとつなげます。
同財団の小笠原啓太(おがさわらけいた)さんは「適切なマッチングで持続的な地域づくりを応援していきます。職員一人一人が関係案内人となって、島根に魅力を感じる人を増やしたいです」と意気込みます。
地域づくりをサポートするふるさと島根定住財団のスタッフ
ふるさと島根定住財団のホームページ
●問い合わせ先
ふるさと島根定住財団(TEL:0852・28・0690)
小さな拠点づくり/自家用車でデマンド型送迎サービス
邑南町口羽地区、阿須那地区
中山間地域の公民館エリアでは、地域課題の解決に取り組む「小さな拠点づくり」が進められています。しかし、人口減少と高齢化が進み、単独での取組が困難になることも考えられます。県では複数の公民館エリアの連携による取組を「モデル地区」として支援しています。
邑南町羽須美地域(口羽、阿須那両地区)の人口は、昭和22年の6731人から、令和3年には1339人まで減少しています。また、平成30年には地域内外をつなぐJR三江線が廃止され、重要な交通インフラがなくなりました。
交通や買い物など生活機能の維持が大きな課題となる中、地元住民が設立したNPO法人はすみ振興会は平成31年4月、有料デマンド型送迎サービス「はすみデマンド」を開始。羽須美地域の両地区から住民ドライバーを出し合い、それぞれの自家用車を使って地域内を送迎します。
それまで高齢者が外出するには、バス停まで自力で移動する必要がありましたが、「はすみデマンド」では自宅への送迎が可能となり、移動の負担は大幅に軽減。8割以上が通院目的で、利用者にとって欠かせない交通手段となっています。
予約から配車の手配は全て電話連絡となっていましたが、令和2年4月に実証実験として新しい予約システムを導入。ドライバーが専用のタブレット端末を携帯し、JR西日本と共同開発中の管理システムを利用することで、いつでも配車指示や運行状況、運転記録が確認できるようになりました。情報通信技術(ICT)を活用し、両地区を効率よく運行することで、地域住民の移動を支えます。
昨年度の住民アンケートでは「地域外への交通手段の整備」を求める声が最も多い結果に。今後は誰もが気軽に羽須美地域外へも移動できるよう、地域と邑南町が連携して、バスターミナルを備えた交通拠点を整備していきます。はすみ振興会の小田博之(おだひろゆき)副理事長は「拠点は交通の他にも、買い物やカフェスペースなど住民が自由に利用し、交流できる便利な施設にしたい」と意気込みます。
口羽と阿須那両地区の住民が力を合わせ、生活機能を維持する仕組みを作り上げていきます。
デマンド交通の車両に乗り込む利用者をサポートするドライバー(左)
「小さな拠点づくり」をサポートしています
県では、「小さな拠点づくり」に向けて、市町村の職員と連携して住民の皆さまをサポートしています。
活用しよう「しまねの郷づくり応援サイト」
各地区の人口推計などがご覧いただけます!
「しまねの郷づくり応援サイト」で検索
●問い合わせ先
中山間地域・離島振興課(TEL:0852・22・5065)
スモール・ビジネス/地域資源を活用したビジネスを育てる
中山間地域の自然環境や資源を生かした商品やサービスを作り出して、事業規模は小さくても外貨を獲得する取組「スモール・ビジネス」。県では、中山間地域での起業や雇用創出を目指し、「スモール・ビジネス」に取り組む事業者を支援しています。
連続講座でサポート
「新商品をつくりたい」、「販売先を広げたい」、「販促ツールをそろえたい」、「パッケージをつくりたい」
そんな課題や要望を解決するために、連続講座「もの・ことカレッジ」を開催。講座では、魅力を伝える説明やデザインなど、商品づくりの基礎を学びます。また、個別研修もあり、商品の改良など、一人一人の課題に専門家がマンツーマンでお応えしています。
講座を通して目指すのは“自分でできるようになること”。課題や目標の設定、目標に向けた計画立案の方法を学んでいきます。
本年度は7月頃に受講生を募集します。参加対象者など、詳しくはホームページをご覧ください。
スモール・ビジネスの育成支援についてはこちら
一畑百貨店出雲ゆめタウン店にある「これねしまね」のコーナー。
「もの・ことカレッジ」の卒業生の商品が購入できます
受講生の課題を解決する個別研修
「もの・ことカレッジ」受講生の声
講師のアドバイスで目標明確化
「デザインと販売戦略をプロに学びたかった」と話す福島沙織(ふくしまさおり)さん。Iターンした出雲市伊野地域の「梅」で特産品を作ろうと令和2年度に受講し、梅干しの商品化を目標にしました。
講師からターゲットの明確化をアドバイスされ、訴求できるパッケージデザインを考案。「イメージから作るのではなく、誰に届けたいのかを見据えるようにしました」と振り返ります。
「講座で学んだノウハウを生かし、地域の誇れる資源で新たな産品を作り出したいです」と意欲的に語ります。
講座で学んだことを仕事に生かす
森脇香奈江(もりわきかなえ)さん(松江市)は、平成29年度の受講生。講座で食品表示の大切さを学んだ経験から卒業後に「中級食品表示診断士」の資格を取得しました。昨年度は本講座の講師として食品表示の講義を担当し、後輩の指導にあたりました。
受講する前は商品づくりの経験もなく、「この講座が行動を起こすきっかけになりました」と森脇さん。現在は松江市八雲町で捕れたイノシシ肉を加工・販売していて、「捨てられてしまう地域資源をどう売っていくのかを考え、消費者に手にとってもらえるようにアイデアを形にしています」と新しい商品づくりにも励みます。
●問い合わせ先
中山間地域・離島振興課(TEL:0852・22・5065)
お問い合わせ先
広聴広報課
島根県政策企画局広聴広報課 〒690-8501 島根県松江市殿町1番地 【電話】0852-22-5771 【FAX】0852-22-6025 【Eメール】kouhou@pref.shimane.lg.jp