輝々(キラキラ)しまね・つくるはぐくむ地域ブランド12
人と人をつなぎ、街を元気に(出雲市)
平野裕二(ひらのゆうじ)さん:平田本町商店街振興組合理事長
田中寛(たなかひろし)さん:出雲まちあそび研究所理事長
地域の魅力を磨き上げ、キラキラと輝く島根のブランド。全国から注目を浴びる県内の取り組みを紹介します。
商店街の店舗がマス目・リアル版人生ゲーム
大人から子どもまで楽しめる人気ボードゲーム「人生ゲーム」。このゲームを現実世界で行うユニークなイベントが開催されています。
舞台は出雲市平田町の平田本町商店街。マス目に見立てた実際のお店を参加者がルーレットの目に従って回る「まちあそび人生ゲーム」です。行く先々のお店ではさまざまなイベントが発生。これをクリアしてお店と専用通貨をやりとりし、ゴール時の所持金の多さを競います。
玩具メーカー「タカラトミー」の公認をもらい開催される「まちあそび人生ゲーム」。ルーレットが生み出す偶然によって店内には笑顔があふれる
人生ゲームが共通の遊び
仕掛け人は、2011年当時に出雲市役所の職員として産業振興に携わっていた田中寛さん。きっかけは、商工会議所の友人から商店街の活性化について相談されたことでした。それまでにも商店街の広場にステージを設け集客を図るイベントはあったものの、一過性のものに過ぎず、お店に来る人が増えたわけではありません。また、お店の店主がスタッフとして運営に当たるため、その間は店の営業ができないという課題もありました。
なかなか良いアイデアが浮かばない中、ある日の飲み会で出た話題が「人生ゲーム」。性別や年代を問わず誰もが遊んだ経験があり、話は盛り上がりました。この時の会場も商店街の中。田中さんは、ふと気づきます。「そういえば商店街の店舗の配置って、人生ゲームのマス目に似ているな」。そのひらめきはすぐに「ここでリアル版をすれば、商店街を楽しみながら歩いてくれるのでは」というアイデアに変わりました。
店の魅力を改めて認識
しかし、酔った勢いで生まれた突拍子もない思い付きに賛同してくれる商店街は市内を見渡してもなかなか見つかりません。
そんな中、このアイデアに興味を示したのが平田本町商店街振興組合の平野裕二理事長でした。直感で商店街の活性化につながる可能性を感じたのです。
さっそく準備に取りかかり、ゲーム内で発生するイベントはそれぞれのお店が考えることにしました。「自身の店の特徴や看板商品が何かを見つめ直すきっかけにもつながった」と平野理事長。ゲームで使う専用通貨の単位は出雲市の無形民俗文化財・一式飾りにちなんだ『かざり』に決め、商店街に一体感も生まれました。
こうして迎えた本番は大盛況。それまで商店街で買い物をしたことがないという地元の親子連れでにぎわいました。
お店で発生するイベントは「本屋さんで本の陳列を手伝う」や「薬を買いに行くと親切な薬剤師さんが対応」などで、参加者は「こんなお店があったんだ」「こんな店員さんがいるんだ」と認識できます。もちろん実際に本を購入することもできるので、ゲームをきっかけに商店街での買い物にもつながりました。「このゲームの狙いはお店に入ってもらうこと」と田中さんは言います。
人気の定番イベントに
第1回の参加は123チーム406人。とても評判が良く、その3カ月後には第2回、翌年からは毎年10月に開催し、2016年には628チーム2503人もの参加がありました。
現在は、地元高校生が各店舗を取材してイベント内容を作成するなど、取り組みの輪は広がっています。平野理事長は「全国の商店街からもゲームをしたいという声が掛かる」と話します。
ルーレットが示す目は、人と店の新しい出会いを生み、商店街に活気をよみがえらせています。
再生のキーワード
- 大胆な発想で地域を取り込む
- 地域が自分の強みを認識する
「まちあそび人生ゲーム」はゲームマップや職業カード、給料袋などを持って商店街に出かける
商店街に展示されている「平田一式飾り」は、陶器などの日用品を針金で組み合わせたもの
2019年の開催時には406チームが参加。このうち約8割のチームが実際に商店で買い物をした
●問い合わせ先
NPO法人・出雲まちあそび研究所(TEL:0853・27・9278)
お問い合わせ先
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