しまね通vol.11
各分野のプロフェッショナルが、ゆかりの深い島根について語ります。
陸上男子マラソン選手・川内優輝さん
かわうち・ゆうき
学習院大学時代には箱根駅伝に関東学連選抜のメンバーで2度出場。埼玉県庁所属の「市民ランナー」として、公務員の仕事をしながら国内外の大会で活躍し、2018年のボストンマラソンでは優勝を果たした。19年春にはプロランナーに転向、地域活性化の一助になればと各地の大会に出場する。座右の銘は「現状打破」。埼玉県在住。
隠岐が大好きだった父
私は東京と埼玉で生まれ育ったのですが、亡き父は隠岐の島町出身です。実際に父が隠岐に住んでいたのは小学生までで、長い期間ではないのですが、父はいつも「隠岐に行きたい」と言っていました。新聞で高校野球島根大会の結果をチェックし、隠岐高校の記事を見つけては、うれしそうに「隠岐高校勝ったよ」と話し掛けてきたことを覚えています。私も夏休みには、父に連れられて隠岐へ来ていたので故郷のように感じます。
初出場は人生初の途中棄権
そんな縁もあって毎年参加する「隠岐の島ウルトラマラソン」。数あるウルトラマラソンの中でもアップダウンが激しい屈指の難コースです。初めて出場したのは2011年で、世界陸上の日本代表に決まり、長い距離を走る経験を積もうと50キロの一般の部に参加しました。
このマラソンの特徴は、島をあげた応援です。水分や食べ物を補給できるエイドステーションは、運営側が用意した公式のものの他に、地元の皆さんが用意した私設のものがいくつも。スイカやトマト、サザエののり巻きまでも準備されています。沿道の人たちもランナー一人一人の名前を呼んで応援してくれ、地域の温かさを感じますね。
初参加の私の走りはといえば、途中までは快走。様子がおかしくなってきたのは45キロ付近です。足が絡まるようになり、残り1キロからは記憶がありません。結果は途中棄権でした。これまでにフルマラソンをはじめ長距離種目は540回くらい走っていますが、途中棄権したのはこの時だけです。
悔しい思いを抱えながら、大会翌日に町内の小学校を訪問しました。すると、子どもたちが大漁旗を振って、世界陸上に向けた応援をしてくれたんです。元気を与えるつもりが反対に元気をもらい、隠岐の子どもたちに世界陸上での活躍と翌年のウルトラマラソンでのリベンジを誓いました。
縁結びの地を実感
14年からウルトラマラソンの前日には「川内杯ジオパーク隠岐の島ミニマラソン」を開催しているのですが、これは子どもたちに走る楽しさを知ってほしいとの思いから。
その点、島根は恵まれた環境にあると思います。毎年10月には学生三大駅伝の一つ「出雲駅伝」が開かれていて、箱根駅伝で活躍する選手の本物の走りを見られますし、女子では、日本学生女子ハーフマラソン選手権を兼ねた「まつえレディースハーフマラソン」もありますね。19年5月に結婚した妻は、08年のまつえレディースで優勝して、ニューカレドニア国際マラソンの派遣選手になりました。このマラソンには私も出場しており、ここで初めて出会ったんです。妻が松江で優勝しなかったら、結婚もできていなかったかもしれません。やはり島根には縁結びの神様がいます。(談)
2019年6月のウルトラマラソン出場時に開かれた地元の交流会で激励を受ける川内優輝選手
川内杯ジオパーク隠岐の島ミニマラソンで川内優輝選手と一緒に走る子どもたち(2018年)
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