輝々(キラキラ)しまね・つくるはぐくむ地域ブランド11
町並み活用で地域に活力(江津市)
黒川聡(くろかわさとし)さん:本町地区歴史的建造物を活(い)かしたまちづくり推進協議会会長
地域の魅力を磨き上げ、キラキラと輝く島根のブランド。全国から注目を浴びる県内の取り組みを紹介します。
若者とタッグを組んで魅力あるまちづくり
江の川河口にほど近く、白壁と赤瓦の町並みが印象的な江津本町地区。江の川と日本海の海運を結ぶ要衝として栄え、今も豪商屋敷などが残るこの地区で、昨年6月、街歩きイベントが開かれました。古い町並みに合わせた昭和レトロな服装や着物を着てまちを自由に歩き、気に入った場所で写真を撮ってもらう「レトロコスプレ」もあり、800人を超える参加者でにぎわったといいます。
江戸時代から昭和初期にかけての建造物が多く残る江津本町地区。黒川聡会長(中央)たちは「夢」と「瓦」の文字に思いを込め「天領江津本町甍(いらか)街道」と呼ぶ
人口減少の荒波に
このイベントは、町並みの保存と活用を目的として、「本町地区歴史的建造物を活かしたまちづくり推進協議会」(黒川聡会長)が平成18年に始めました。今では地区を代表する催しへと成長。平成30年には地域活性化の取り組みが評価されて、「住まいのまちなみコンクール」(一般財団法人住宅生産振興財団)で表彰も受けています。しかし、そこにたどり着くには長い年月が必要でした。
専門家の指摘で奮起
かつては江津の中心地として栄えていた江津本町地区。それが昭和の町村合併や市庁舎の移転によって人口がどんどん減少し、住民たちの間には「このままでは埋没する」という危機感があったといいます。
転機は平成11年。建築物を視察する島根県建築士会江津支部の「街並みウォッチング」がこの地区で開催されたことでした。建築士たちは明治時代建造の旧江津郵便局などを見て、歴史的価値の高さを指摘。さらに平成14年から学術調査を行った神奈川大学の西和夫教授も「これだけ古い建物が集積して残っているのは貴重」と高く評価したのです。この一言が地域を見つめ直すきっかけになりました。
「貴重な建物を子孫に継承することで、みんなが住みたくなる魅力ある地区を作ろう」。江津本町の価値が認められたことをチャンスと捉える住民有志が声をあげ、地区のほぼ全世帯を会員としたまちづくり推進協議会を発足させたのです。
まず手を付けたのは、建物や史跡を載せたマップの作成でした。散策スポットが決まると、協議会メンバーがボランティアガイドもするようになりました。
若者引き付ける魅力
平成26年には、街歩きイベントの一環として、県内外のこだわりパンを集めた「いわみパン祭り」を開催。2千人もの来場があり、交通渋滞が発生するほどの盛況になりました。この企画は地域の若手がアイデアを出し、高齢者中心の協議会が実行の根回しを行うことで実現したのです。
「これからのまちづくりは、若い人の力がないと難しい。そのための土台作りは協議会がやらなければ」と黒川会長。若手住民として江津本町のまちづくりに携わる竹内希さんも「自由奔放にやれるのは、黒川さんたちが耕した土壌があるからこそ」と話し、互いの強みが生かせていると感じています。
「まちづくりは失敗を恐れず行動しないと始まらない」がモットーの黒川会長。地域で頑張る先人の姿が若者を惹きつけ、今の江津本町を輝かせています。
再生のキーワード
- 住民が地域の魅力を共有
- 若者のアイデアと高齢者のネットワークを活用
多くの観光客でにぎわう街歩きイベント「ふらり」
擬洋風建築の旧江津郵便局は、協議会の打ち合わせにも使われる
伝統的な町並みに彩りを添える旧江津郵便局
若者たちが参加しやすい環境を作り出している黒川聡会長
●問い合わせ先
本町地区歴史的建造物を活かしたまちづくり推進協議会(TEL:0855・52・3552)
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