輝々(キラキラ)しまね・つくるはぐくむ地域ブランド3
甦(よみがえ)った出雲大社門前町(出雲市)
田邊達也(たなべたつや)さん:神門通り甦りの会代表
地域の魅力を磨き上げ、キラキラと輝く島根のブランド。全国から注目を浴びる県内各地の取り組みを紹介します。
民間の力でにぎわい呼び戻す
メンバーの子どもを抱きながら、打ち合わせをする田邊達也さん。「仲間が開いたこの店で、会の発足当初は夜通しまちづくりについて語り合いました」
平成の大遷宮で全国から注目を集めた出雲市大社町には、現在も600万人を超える観光客が訪れます。その陰には、かつてのにぎわいをよみがえらせようと集まった住民有志の町づくりがありました。
にぎわいの記憶、ほど遠く
平成17年、平成の大合併を機に始まった大社門前町の再開発。市内でホテルを経営する田邊達也さんは観光協会の立場から調査検討会議に加わり、町の様子に焦りを感じました。
「メーンとなる神門通りは空き店舗が連なり、廃れていると言っていいほど。子どもの頃、あこがれを持って眺めた門前町のにぎわいとは、ほど遠い姿でした」
町の再生に向け、裏付けとなるデータ集めを独自にスタート。通りを歩いて空き店舗をリストアップしたり、観光客の動向や郷土史を調べたりして、ヒントを探しました。
足しげく町へ通ううち、大きな収穫がありました。「大社のためになにかやりたい」という人との出会いです。さまざまな年齢や職業のメンバー11人が集まり、「神門通り甦りの会」が誕生しました。
行動してから考える
田邊さんらの調査で分かったのは、「若い女性客の増加」「出雲をぜんざい発祥の地と記した文献の存在」「団体客の滞在時間の短さ」でした。そこで人の流れを呼び込もうと、町歩きマップの製作を皮切りに空き店舗を活用した観光案内所の開設、通りへのだいこくさまの設置、朝市やビアガーデンの開催など、情報発信やイベントなどを次々と実行。田邊さんも自らぜんざい店をオープンさせました。
「『行動してから考える』をモットーに、メンバーが各自できることを形にしています。会費を集めていないので資金がないのですが、各店舗に協力してもらうなど、その都度工夫して活動しています」
空き店舗も、既存店舗も
追い風もありました。平成20年に出雲大社の大遷宮が始まり、その前年には県立古代出雲歴史博物館の開館、平成24年には「神話博しまね」と、大きな話題が続きました。その間、神門通りの駐車場開設など行政がハード整備を進めたこともあって、観光客の流れが出雲大社だけでなく周辺部に拡大。会には空き店舗の問い合わせが相次ぐようになりました。
出店希望者には必ず町を歩いてもらい、既存店を含めて検討してもらうといい、「高齢などの理由で店を閉めたい方もいます。廃業は寂しいですが、店舗の入れ替わりは町の新陳代謝でもありますから」と田邊さん。22店舗まで落ち込んだ店の数も、現在は70~80店舗で安定。会のメンバーは60人を超えるまでになっており、かつて危機感を覚えた空き店舗だらけの通りは、姿を消しました。
「ようやく神門通り復活の兆しが見え始めました。これからは周辺部の活性化や、住みよいまちづくりを目指したいですね」
思い描く門前町の実現へ、会はさらなる目標に向かっています。
再生のキーワード
- 「観光客に対する事業」「地域と協働する事業」「出店者と一緒にする事業」の3本柱で、地域全体の“甦り”を追求
- 再開発事業を追い風に
「神門通り甦りの会」発足メンバー
店舗が連なる門前町
出店者らに協力を仰ぎ、神門通りに設置しただいこくさま
道路整備には、観光客の目線で意見を出した
メンバーを中心に毎月開催する「軽四朝市」
●問い合わせ先
神門通り甦りの会(TEL:0853・27・9898)
お問い合わせ先
広聴広報課
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