輝々(キラキラ)しまね・つくるはぐくむ地域ブランド1
女子旅で注目!玉造温泉(松江)
角幸治(すみゆきはる)さん:松江観光協会玉造温泉支部事務局兼町づくり会社「まちデコ」社長
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藤田智加(ふじたちか)さん:美肌研究所「姫ラボ」統括店長
地域の魅力を磨き上げ、キラキラと輝く島根のブランド。全国から注目を浴びる県内各地の取り組みを紹介します。
温泉街を潤した姫神のコスメ
「『姫神の湯』の言葉から、僕たちの進むべき道が見えました」と角さん(右)。藤田さんは「温泉の美肌効果には絶対の自信があったので、PRし続けることができました」
女性の人気を集め、年間105万人が訪れる玉造温泉。かつて、温泉街は団体客の減少で活力を失い、寂れた風情が客足を遠ざける悪循環に陥っていました。平成19年度には4軒の温泉旅館が廃業。「このままでは1300年の歴史を持つ温泉が失われてしまう」という危機感が漂いました。
出雲国風土記が道を開く
再生に立ち上がった旅館経営者らは、まず体制強化に乗り出します。松江観光協会玉造温泉支部に周藤實(すどうみのる)事務局長をすえるとともに、自ら出資してまちづくり会社「玉造温泉まちデコ」を設立。それまで各団体がそれぞれに手掛けて重複もあったイベントやパンフレットを整理し、関係機関の役割分担と連携を図りました。
さらに、新たな観光スタイルの模索も始めました。
ヒントとなったのは「出雲国風土記」です。玉造温泉の美肌効果が1300年前から知られていたことに着目した周藤事務局長が出雲神話を絡めて「日本最古の美肌温泉・姫神の湯」というキーワードを発案。このアイデアで方向性が定まりました。観光協会とまちデコの“二足のわらじ”で改革の最前線に立っていた角幸治さんは「これこそオンリーワンの観光素材になると確信しました。ターゲットを女性に決め、進むべき道が見えました」と話します。
年商3億円「姫ラボ」誕生
「美肌」を「女性」にアピールしようと、温泉水を使った基礎化粧品の土産物開発に取りかかりました。温泉の成分調査を行い美肌効果の裏付けもバッチリ。しかし、思うように売れません。「旅館に物販を負担させるだけで地域振興にならず、滑り出しは失敗でした」と角さんは振り返ります。
その頃、販売員として入社した藤田智加さんが、厳しい指摘をしました。「美肌に関心の高い人は、成分や効果に納得したうえで化粧品を選びます。売店の土産物では商品の良さが分からず、自分なら手に取りません」
そこで女性目線を意識し、温泉街に「玉造温泉美肌研究所姫ラボ」のブランド名で店舗を設置して商品は高級感のあるデザインに一新。「コスメから玉造温泉の魅力を発信しよう」と藤田さんを店長にファンを開拓しました。
現在は年商約3億円にのぼり、まちデコ従業員は2人から約40人に増加。知名度向上と産業創出が、町に活気と誇りを取り戻しました。
利益は神様からの預かりもの
姫ラボ設立と平行して、温泉街の再生にも着手しました。玉作湯(たまつくりゆ)神社と清厳寺(せいがんじ)の願掛けの言い伝えにスポットを当てた町歩きに誘導するため、歩道や神話オブジェ、足湯を整備。折からのパワースポットブームを追い風に、ご縁と美肌の相乗効果で女性の個人旅行客に玉造温泉の名が浸透しました。
観光協会とまちデコの収益は、地元住民が運営する「おもてなし茶屋」の整備やイベント開催に活用し、地域に還元しています。「お金は神様からの預かりもの。おかげさまの精神で、地域が潤い、喜ぶことを第一にしています」と角さんは話しています。
再生のキーワード
- 観光協会を司令塔にして役割分担
- 歴史と科学で美肌アピール
- 目先の利益より地域のために
「誰かに教えたくなる」ユニークな案内板。町歩きを楽しめるよう、温泉街の各地に設置している
自発的に始まった、温泉街のごみ拾い。藤田さんもゴミ袋を持って出勤する
温泉街の姫ラボ専門店。土産物のイメージを一掃したおしゃれな店内
町歩きに誘導する仕掛けの一つとして設置したお湯くみ場
●問い合わせ先
松江観光協会玉造温泉支部(TEL:0852・62・3300)
お問い合わせ先
広聴広報課
島根県政策企画局広聴広報課 〒690-8501 島根県松江市殿町1番地 【電話】0852-22-5771 【FAX】0852-22-6025 【Eメール】kouhou@pref.shimane.lg.jp