しまね通vol.1
各分野のプロフェッショナルが、ゆかりの深い島根について語ります。
日本旅行「おもしろ旅企画ヒラタ屋」代表・平田進也さん
ひらた・しんや
昭和32年生まれ、奈良県出身。昭和50年に日本旅行(大阪市)へ入社し、現在は社内に設立した「おもしろ旅企画ヒラタ屋」代表。他にない旅行企画と接客術で「ナニワの観光カリスマ」の異名をとり、顧客らによる会員数2万2千人の個人ファンクラブを持つ。石見の国おおだ観光大使、島根県のふるさと親善大使「遣島使」を務める。
島根は観光資源の宝庫
全国各地に行きますが、島根は観光資源の宝庫です。石見銀山の清水谷製錬所跡はペルーの空中都市マチュピチュのようだし、温泉津温泉の高い効能は素晴らしい。エンターテインメント化された石見神楽は、全国に誇る伝統芸能。神社の境内で見たときは、異世界に引き込まれるようでした。
三瓶の埋没林や琴ケ浜の鳴き砂、出雲の割子そばの食べ方も興味深いです。松江フォーゲルパークでは満開の花の下で、管弦楽団の生演奏を聴きながら食事をしていただき、「最高のロケーションで楽しめた」とお客さんに喜ばれました。すべて「言葉なしで感動が伝わる」ので、外国人客へもアピールできます。
観光資源のピースをつなぐ
ただ島根では、「出雲・石見」などの地域やジャンルの線引きに、こだわりすぎではないでしょうか。すべてを「島根の観光資源」というパズルのピースとしてつないで発信する「新たな視点」が必要だと思います。
例えば隠岐で、4町村の線引きにこだわって「すべての島を巡るべき」と考えては、海の荒れる冬の誘客は難しくなります。私が企画した「冬の隠岐レストランツアー」は、滞在地を1町に絞ぼる代わりに松葉ガニや黒アワビ、隠岐牛などの隠岐自慢を集めて味わってもらうもので、過去7回とも完売しました。高級食材を産地で食べる感動から、「豊かな隠岐諸島」を関西のグルメ層に印象づけた一例です。
島根との縁は、友人である大田市出身のフリーアナウンサー・宮根誠司さんに声をかけられ、講演やモニターツアーをしたことから始まりました。私たちのように「島根の力になりたい」人はいるはず。遠慮せず協力を呼びかけましょう。
経済・地域振興へジャンプ
今年は、石見銀山が世界遺産登録10周年を迎えました。このチャンスに「世界遺産のある島根」として関心を集めるよう、周囲も一体となってうまくピースをつなぎ、情報を発信すべきです。
観光客が増えると、「静かな暮らしができなくなるのでは」と心配されるかもしれません。私たち旅行業者も、地域を乱すことは望んでいません。必要なのは都市化ではなく「島根ならでは」を体験できる仕組みです。それなら、地域と観光が共存できるはずです。
また、観光客が訪れても「見て楽しかった」にとどまり、地域にお金が落ちないことも問題です。ホップ・ステップの次のジャンプができていません。経済が潤えば地域振興につながり、子や孫の世代の定住も期待できます。
(談)
平田さんが企画した「冬の隠岐レストランツアー」
ツアーで振る舞われた隠岐諸島の海の幸
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