しまねeyeVol.4
島根で活躍する人たちの「視点=eye」で語ってもらいます。
柿田兼志(かきたけんじ)さん(浜田市)
石見神楽・柿田勝郎面工房・石州長浜面職人
粘土型に柿渋入りののりで石州和紙を何層も貼り合わせる。和紙の枚数が面の厚さを決めるため、このとき完成した姿をしっかりと思い浮かべるのが肝心。乾燥後に型を壊して念入りに彩色すれば、表情豊かな石見神楽の面が完成だ。軽くて丈夫な和紙が石見神楽の速く、勇壮な舞を可能にする。
全国的に木彫りの神楽面が多い中、和紙を使った面作りは珍しい。そのきっかけを作ったのは、浜田市長浜地区で長浜人形を手掛けた人形師。「脱活乾漆(だっかつかんしつ)」の技法を応用し、和紙面が生み出された。
柿田兼志さんは、その長浜地区で生まれ育った。小さい頃から、面職人の父が作った面をつけ、神楽を舞った。野球にも打ち込み、浜田商業高校では甲子園に出場。社会人になってからは、神奈川県のチームに所属し、日本選手権では全国制覇にも貢献した。レギュラーでプレーするほどの選手だったが、「現役10年を機に、やり切った」と引退。家を継ぐため帰郷し、この道に入り20年以上となった。
浜田市では神楽面の他に、蛇胴(じゃどう)と衣裳も作られており、いずれも石州和紙が使われている。地元、長浜小学校の児童たちに神楽面の作り方を教える柿田さんは「子どもたちには、誇れる伝統産業が浜田市にあることを自慢してほしい」と願い、今日も神楽面作りに励んでいる。
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