輝々(キラキラ)しまね・つくるはぐくむ地域ブランド9
バブルリング(浜田市・江津市)
大辻功(おおつじいさお)さん:しまね海洋館副館長
藤井梨紗(ふじいりさ)さん:しまね海洋館トレーナー
地域の魅力を磨き上げ、キラキラと輝く島根のブランド。全国から注目を浴びる県内の取り組みを紹介します。
シロイルカが繰り広げる世界でここだけのリング
トレーナーの藤井梨紗さんの合図にあわせて口を開くシロイルカ。水中に突然生まれた泡の輪に、来館者から拍手と歓声が起こります。県立しまね海洋館アクアス(浜田市・江津市)を全国的に有名にしたのが、この「バブルリング」です。
シロイルカが作り出すバブルリングは子どもたちを夢中にさせる
遊びの中からの発見
アクアスは平成12年に開館。身近な生き物から世界の海獣まで約400種、1万点を超える展示をし、シロイルカを見ることができる西日本唯一の水族館として人気を集めました。初年度は目標の40万人をはるかに超える134万人が来館。しかし、その状況は長く続かず、翌年度からは右肩下がりの状況に。関係者は何とか人を呼び込もうと頭を悩ませていました。
転機が訪れたのは平成17年の春。閉館後のひっそりとしたプールで、偶然トレーナーたちが目にしたのは、自分で作った泡の輪を追いかけて遊ぶシロイルカの楽しそうな姿でした。「お客さんにも見せたい!」。シロイルカの作るリングは居合わせた全員にそう思わせる美しさでした。トレーナーたちから話を聞いた大辻功さん(現副館長)は、すぐさまパフォーマンスに取り入れることに決めたのです。
挑戦の先に広がる世界
トレーナーたちの挑戦が始まりました。まずはどのように泡の輪を作っているのかを突き止めなくてはなりません。行動をつぶさに観察し続けると、その謎はとけました。シロイルカの鼻は、頭の上部にあります。そこから出した空気の泡を、口で「ぱくっ」とくわえ、再び吐き出すと、泡は見事な輪になったのです。
次は指示にあわせて吐き出す訓練です。シロイルカへの合図や、上手に輪ができたときのOKサインを出す基準などを統一して、5人のトレーナーが交代で訓練しました。トレーナーのタイミングで泡の輪を作るとなると、遊びの時と同じようにはいきません。最初のうちは泡の塊が出るだけでした。しかし、口を開ける大きさなどを変えて訓練を繰り返すうちに、徐々にきれいな輪を出せるようになっていったのです。
平成17年12月、ついにお披露目の日がやってきました。客席の入りはいつもと同じ。しかし、いつもと違うトレーナーの合図で雌の「アーリャ」が泡を吐き出すと、全ての観客の視線がくぎ付けになりました。水中に現れたのはキラキラと輝くリング。大成功です。この技はたちまち人気となり、マスコミの取材が増え、携帯電話会社のテレビCMにも登場。バブルリングを見ようと、再び多くの人が訪れるようになりました。
現在はバブルリングのほかにも、「マジックリング」、「ミラクルリング」があり、いずれも世界では唯一アクアスでしか見ることができません。
大辻さんは「若いトレーナーには行動観察の大切さを教え続けています。この観察と、お客さんに見せようと一丸となったチームの努力なしにはバブルリングは誕生しませんでした」と当時を振り返ります。
島根の魅力を発信
アクアスの評判が高まると、ここで働きたいと島根に移住する若者が現れるようになりました。トレーナーの藤井さんもその一人です。
現在は、シロイルカのパフォーマンスを担当しています。はじめはぎこちなかった合図の手振りも、経験を重ねるうちに、様になってきました。「自分が楽しむとシロイルカたちも楽しそうにパフォーマンスします。何よりも、それを見てお客さんが笑顔になることが一番の幸せ」と藤井さん。「これからもアクアスから島根の魅力を全国に発信していきたい」と話します。
再生のキーワード
- 偶然の発見を育てたチーム力
- 世界ではここでしか見られないパフォーマンス
シロイルカのトレーニングをする藤井梨紗さん(右)
観覧席でシロイルカの話を聞く園児たち
餌やりをしながらのペンギン解説は人気
海底トンネルを楽しむ親子連れ
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