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5月(第2回)定例記者会見(5月16日)

石見銀山の世界遺産登録に係るイコモス評価報告について


■知事コメント

 

 石見銀山の関係につきまして、これは知事コメントというのを評価書の発表のあった日に出させていただいておりますが、改めて私のコメントを申し上げますと、ああいう評価になったことが意外でありましたし、まことに残念なことでありましたが、登録の最終的な可否は6月末のニュージーランドの世界遺産委員会の審議によって決まるわけでありますから、それに向けましてできる限りの努力をしていきたいと、文化庁、外務省、日本のユネスコ代表部の大使等々と協議を既に進めておりますが、一致協力して県としても全力を挙げまして、この問題に取り組んでいきたいというふうに思っております。

 

■質疑応答

 

○山陰中央新報

 石見銀山のことについて、お伺いしたいんですけれども、ああいう結果になりまして、県としてできることというのをいろいろ検討しておられると思うんですけれども、そこで直接、間接的に、いわゆるロビー活動的なものも必要なのかなと思いますけど、その辺、知事御自身、あるいは県が今具体的に動いたこと、これから動くこと、具体的にあれば教えてください。

 

○溝口知事

 一つは、県庁内でこの問題を推進していくという体制をとるために、県庁幹部、政策企画会議でこの話をいたしました。それから、私自身は関係者にお会いしたり電話をしたりして協力をお願いしております。特に登録をどうするかという問題は世界遺産委員会で決まるわけでありまして、これは21カ国が委員になっておるわけです。大体半分ぐらいがパリにありますユネスコ代表部、各国代表部を持っておるわけですけども、代表部の大使のような方であります。それから半分は本国の文化関係の専門機関の長のような人が出るわけでございます。その人たちがイコモスの評価書を参考にしながら、これは登録、これは延期、これは不可というような決定をするわけですね。イコモスの評価書は議論のための参考資料であります。しかし、専門家の意見ですから、これは重要な、大事な情報なわけであります。したがいまして、私どもとして何をしたらいいかということになりますと、石見銀山の文化的な価値、普遍的な価値を関係者によく理解をしてもらうということが大事なわけですね。その一つが遺産委員会に出られる人々、日本ですとユネスコ代表部の近藤大使であります。それから各国も大使の方がおられるわけですが、これはパリに在住しておられます。

 それからもう一つは、イコモス自体に対して意見が言える仕組みになっているわけですね。イコモスの評価書が出ますが、十分現地の意見、あるいは情報が反映されていないときは推薦国が修正を求めることができるわけであります。イコモスの代表自身もニュージーランドの会合には出て、評価をつくった者の立場としていろんな説明をするわけですから、2番目の対応としては、やはりイコモスの人々に対して、このイコモスの今回の評価が、十分我々の意見を反映してない部分、あるいはデータが十分反映されてない部分をよく説明をしていくということですね。これもパリに出かけていきまして、やる予定でございます。

 それで、私は発表になってから、発表の前も文化庁の長官、それから文化庁の次長、担当課長、会って話をし、長官、次長にも発表の後、電話をして対応を協議してます。それから外務省は広報文化交流部長というのがこの問題の責任者でありまして、この方は私もよく知っている人でありまして、一度東京に行ったときに会って話をし、この後も電話で話をしております。それから近藤大使も、やや私ごとになりますけれども、彼がワシントンで公使をしていたころ、私も一緒にワシントンの大使館で公使をしておりまして、よく知った人です。近藤大使は、今のこのユネスコ問題を外務省で取り扱っている広報文化部長というのをされていますから、数年前に。このユネスコの問題はよく御承知だと思います。それから彼はOECDの、パリにありますけど、国際機関の次長をやっておりまして、その後、ユネスコ代表部の大使になっていますから、文化の関係、あるいは国際交渉の関係、ユネスコの関係、非常に熟知した人です。彼と電話で話をしまして、今週初めですけども、日本に帰る予定があるようなので、ぜひそのときに石見銀山までもう一回といいますか、大使としては初めてだと思いますが、来てくださいと。よくごらんいただいて、我々もよく説明したいということを言っておりましたが、彼自身、自分で行かなきゃいかんという考えでございまして、多分今月の末になると思いますけれども、大使が帰郷されて、それで島根に参りまして銀山を見る。そのときは文化庁の専門家、それから県、大田市の専門家も同行しまして、よく説明をすると。それから多分外務省の広報交流部長も一緒に来られて現地を見る予定になっています。私も都合のつく限り一緒に行きまして、相談をしたりしようと思っています。政府の関係者、あるいはユネスコの代表部の近藤大使などと話をしまして感ずることは、やはり日本のためによく関係者に理解を求めなきゃいかんと、そういう気持ちでいっぱいな様子でありまして、日本としての体制はしっかりできているという感じがいたしております。

 問題は、関係国ですね、先ほど言いました21カ国、特に21カ国の委員会のメンバー国の出席する人、あるいは今度は出席する人に文化の関係の人たちがアドバイスをするわけですね。当国としてはこの案件はいい案件なので登録に賛成とか、あるいはまあまあちょっとありますねというような、文化の専門家の人がそれぞれいてアドバイスをして、それに基づいて各国の委員、大体大使なわけですけれども、意見を言うわけですから、専門家の方々にも働きかけないけん、よく説明しなきゃいけん。その点につきましては、文化庁も、それから島根県、大田市もパリへ出かけていきまして、この問題をユネスコの各国で、委員会国の各国で担当している方々と会いまして、あるいは資料をお渡ししてよく説明をすると、このようなことを考えているわけですね。

 その準備はずうっとやってきておりますから、ペーパーを英文に直して、そういうものも準備が進んでいますから、5月の末から、多分大使が帰られてからになるでしょうが、6月から会議の前まで集中的にやっていくということになると思いますね。過去の例を見ましても、登録延期、あるいは照会といったレベルから登録に至ったケースもあるわけですから、私は一生懸命対応し、各国によく説明すれば理解を得られる可能性は相当あるというふうに考えておりますので、関係者と力を合わせまして、一生懸命やっていきたいということであります。

 

○山陰中央新報

 その辺、各国への対応というのが重要になるかと思うんですけど、その意味で外務省あたりもしっかり動いてくれてるなという感じが......。

 

○溝口知事

 してますね。外務省は、先ほど申しましたように広報文化交流部の中にユネスコを担当する室がありますよ。正確な名前はあれですが、室があって、その人たちにも東京に行ったときに会いましたけども、この問題について一生懸命やっておられるということは私自身感じておりまして、山本部長も近藤大使が銀山に視察に来られるときは同行したいと言っていましたから、多分来られることになるんじゃないですか。

 それから、文化庁の方も長官、長官は4月におかわりになった青木東大教授でありますけれども、その下に次長が文科省の事務官として補佐をされていまして、その人にも会って話をしたり、電話でもしております。それから記念物課長というのが課長としては文化庁で担当者ですが、その人にも会って様子を聞きましたが、準備は、いろんなインフォーマルな情報もこれまでありましたから、あるいはインフォーマルな情報というか、イコモスの方からいろんな照会がありましたからね、数多くあって、それに対応する過程で、やはり準備をさらに進めなきゃいかんということはよくわかっておられて、そういう準備を進められているという印象、感じを持っておりまして、こういう方々が力を合わせてやろうという体制になっているというふうに感じております。

 

○毎日新聞

 今回のイコモスの評価報告書の詳細な内容ですが、これを公表されるお考えはありますか。

 

○溝口知事

 これはユネスコの方の方針があるようですね。私どもが文化庁から聞いているとこでは、現物そのものはユネスコの方で公表は差し控えてもらいたいという話になっていると文化庁から聞いております。しかし、概要、この主要なポイントは文化庁の方の記者会見でも資料としてお配りされておって、主要な論点は5つだったと思いますけども、キーになるのはその5点だろうというふうに思っております。

 

○毎日新聞

 県としては把握しているということでよろしいんですか。

 

○溝口知事

 把握してますね、もちろん。現物ももちろん見てるわけですね。そうでないと、何が問題なのかというのが対応できませんからね。

 

○毎日新聞

 今回見たんですが、具体的な課題というよりは、どちらかというと価値そのものの根底を問うような指摘がほとんど多かったように感じるんですけれども、詳細な内容でもやっぱりそういうことなんですか。それとも詳細なものでは、やはりある程度具体的なものに踏み込んだ指摘をしているんでしょうか。

 

○溝口知事

 こういうことですね。イコモスに事務局というのがあるわけですね。事務局は各案件ごとに担当者を委嘱して調査をして、現地調査をしたり、あるいは文献調査をしたりするチームを構成しているわけですね。その内容を見ると、一つは現地に行きまして遺跡がちゃんと保存をされているかどうかということ、あるいはそういう、例えば今回の石見銀山でいいますと産業の発展によって、それがその地域の景観にどういう影響を及ぼして、それが価値のあるものになっているかどうか、そういう現地を見て決める部分と、それから文化遺産ですから、それはその地域にとどまらなくて、いろんなところと交流して、ほかの地域に影響を与えている、それがあるわけですね、そういう側面が。それは現地調査とは別な話なんですね。そういうことをやるチームがやっぱりあるんです。銀の石見銀山における生産が世界、あるいはアジアにどういう影響を及ぼしたかと。それは文献的なものを見ないとわからないですね。それから石見銀山でいいますと、そういう鉱山がほかの地域の鉱山と比べて傑出したものであるかどうか、それはほかの鉱山のものと比較をしなきゃいかんですね。そういうやつは現地調査とは別な話になるわけです。だから、2つの分野があって、その2つの分野の意見が出されているということですね。5つのやつがありましたでしょう。一番上は文物、あるいは文明の交流がどういうふうにあったのかと、これはだから現地じゃわからないですよね。それは結局文献に残されているようなもので銀の生産、販売が世界にどういう影響を及ぼしたかと、他の地域にどういう影響を及ぼしたかということになりますね。それから2番目は銀の生産を証明する遺跡は残っておって、それは価値があるのかと。それは龍源寺間歩だとか、そういうものですよね。それは現地を見なきゃいけない。それから3番目は、銀山に関する土地利用の総体をあらわす文化的景観としてどういう価値があるか。だから、あそこでいえば町並みとか、あるいは間歩の周辺の建物とか、あるいは銀を積み出すときの港湾とか、そういうものの価値があるかどうかというのが3番目。2番目、3番目は現地でないとわからないでしょうね。それから構成資産の範囲についてということがありますが、構成資産が全部発掘されているのかいないのか、こんなようなこともあるわけですね。これも現地で見なきゃわからない。5番目は同種の遺産と比較しての価値はどうかということで、これは現地というよりも文献的に見なきゃいかん。ただ、こういう問題になると、比較のできる対象が、例えばアジアなんかにちゃんと記録として残って、既に解明されているのかどうかという問題がありますね。そうなると、そういうところが十分でないと評価がしにくいといった面があるんじゃないですか。だから、現地とそういう文献等から推察される価値、両方がイコモスの評価の対象になっているというふうに私は報告を受けまして理解しておりますが、実際にイコモスの作業もそういう形で行われて、現地の調査、文献的な調査を合体したペーパーがイコモスの中でつくられて、それがイコモスのパネルというのがありますけども、理事会のようなものですね。そこで承認をされて、それでイコモスとしてユネスコの本部に、ユネスコから委託を受けた調査の結果、評価はこうですよというのを出した、それが5月の12日になったと、こういうことです。

 

○毎日新聞

 これまでよく指摘されている点で、例えばちゃんと見学ルートが整ってないとか、まだ遺跡の発掘がほとんど進んでないとか、そういった点はこれまでの国際会議でもかなり指摘された点なんですが、イコモスは今回、そういう点まで踏み込んで、結構クレームをつけているんでしょうか。それともそういう具体的なケースというのは言われてないんでしょうか、どっちなんですか。

 

○溝口知事

 どの部分のことですか。

 

○記者

 イコモスの今回提出された評価報告書の内容なんですが、これまでの国際会議とか専門家の話だと、実際に観光ルートが整ってないとか、あるいは観光客の受け入れ体制がちゃんとできてないとか、そういうところまで結構指摘をされてるんですけれども、今回の報告書でそういった内容まで踏み込んで書いてあるんでしょうか。

 

○溝口知事

 それは別の話ですよね。イコモスがやっているのは、遺産がちゃんと保存をされているか、それが価値があるかということが主体であって、それをどう見せるかなというのは、このイコモスの評価の対象外でしょうね。だから、イコモスがやっているのは専門的な観点から遺跡の保存、完全性、そういうものをチェックしていると、現場の調査では。

 それから、イコモスがやるのは、この銀山が持つ文化的な価値ですね、文化的価値というのは、やはり他と比較しての話でしょうね。あるいは文化的な価値というのは、他の地域にどういう影響を及ぼしたか、銀の生産が出ることによって、世界の文物の交流にどういう影響を及ぼしたか、あるいはほかと比べてどうだったか、これは現地調査とは別な話ですね。だから、その2つが評価のファクターになっているということです。

 

○山陰中央新報

 ちょっと抽象的になるんですけれども、島根県にとって石見銀山がどういう存在か、それから世界遺産登録されることでどういう意味があるのか、持つかというのを。もう1点、あと登録を見据えて歴博での銀山展や東京でのシンポジウムとか、あるいは式典とかが予定されてると思うんですが、それの対応はどのようにしていかれるのかを教えてください。

 

○溝口知事

 石見銀山は県の中央の地域にありまして、東には出雲、松江を中心とした古代から続く文化、歴史があり、また西に参りますと津和野のような武家文化といいますか、あるいは近代になってからの文化までありますけども、そういうものをつなぐ大きな役割を果たすだろうと。島根県全体、あるいは山陰全体が圏域として観光の資源になると、その圏域の中の大きな文化資産、観光資源を構成すると。構成、現実にしているわけですね。それから文化遺産に登録されますと、やはり文化遺産に登録されたということで知名度が上がり、観光客の見学の意欲を高めるという効果がありますから、それはやはり大事なことでありますね。

 それから、3番目は何でしたっけ。

 

○山陰中央新報

 歴博での銀山展やったり、あるいはシンポジウム......。

 

○溝口知事

 あれがどうなるかって。それはちょっと技術的なことなんで、私も実際にどう発表したかというのは、まだしてませんけども、既に予定しているものはやり、また登録を前提にしていたシンポジウムのようなものは、まだアイデアの段階で、スタートしてませんから、作業が。そういうものは状況に応じて、これからどうするか考えるということでありますね。

 

○読売新聞

 文化庁の資料を見る限り、5つの指摘のうちの3つが、そもそも世界遺産として価値があるのかという本質的な問題を突かれているんですけれども、これは、これまでの県としての説明が十分であって、しかも資料を十分提出しているけれども理解されなかったのか、あるいはそれが不十分だったのか、どうお考えでしょう。

 

○溝口知事

 特に文献的に、これは証明していかないとわからない部分があって、そういう過去から残された情報、文献がそもそも十分収集することは難しいという問題はもともとあったんだろうという気がしますけどもね。例えばアジアの鉱山と比較してどうかというのは、日本の石見銀山のことはわかりますけども、アジアの鉱山でどういうものがあって、それがどういう影響を持ってて、それが石見銀山と比較してどうかというのは、例えばインドなり東南アジアで、その国の出た情報が整理されてないと、比較は難しいですよね。だから、それはそういう現実的な限界をやはりイコモスの当局が理解をしてくれることも必要なんですよね。これは石見銀山に限らず、きっとほかでも同じような問題が私はあるんだと思いますね。

 それから、どういう世界の文化、文明の交流の中で役割を果たしたなんていうのも、昔のことですから文献的にどれだけここに輸出されて、どれだけそれによってというのは難しいところがあるわけですよね。だから、そういう現実を踏まえた評価というのが私は必要なんじゃないかと。他方で、そういう問題についてできる限りの情報を集めて説明するということも我々の義務ですから、その両方をやっていくということじゃないでしょうかね。


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