ペリット狩人の落とし物

 令和7年5月15日(木)晴れ

 

「ペリットが落ちとんのやけど見に来る?」

鳥獣対策科の研究員、田川さんが生き物に関心の強い他科の研究員に声をかけてい ます。

ペリットとは、鳥類学の業界用語で、鳥が食べたもののうち、消化されずに口から吐き出されたものを指します。

 

「中には虫も入っているようなんだけど」

虫という単語に興味をひかれて同行すると、いつの間にか好奇心旺盛な研究員が集まり 5人の小集団になっています。

案内されたのは所内の山手に近い構内のアスファルト上で、ペリットはころん、と転がっています。外見は紡錘形で、

大きさは長さ5cm、太い部分は2cmほど。

 

未消化の色々な物が固まっています。陽光を受け、緑色の金属光沢に輝く部分あり 、工芸品の螺鈿細工(らでんざいく)

のような美しさがあります。

 

 緑色に輝く部分はコガネムシ科の昆虫、恐らくはコアオハナムグリと思われます。他にどのような虫が入っているか

調べると面白そうなので、持ち帰ることにしました。

 

 ペリットを崩して内容物を観ると、おびただしい量の昆虫が確認され、その多くは硬い外骨格を持つ甲虫類の脚や胴体

でした。また、長さ3cmあまりの獣の体毛も少数含まれていました。

 

 種類は特定できませんが、ペリットのサイズや、長い獣毛が入っていることから、カラス以上の体サイズの鳥類と思われ

ます。確認された昆虫は小さなものが多く、大きな鳥がこれらをちまちま、直接捕食したことは考えにくく、昆虫類を食べ

た小型の鳥獣類が、このペリットを落としたハンターに捕食されたと推測されます。

 

 一つの痕跡(フィールドサイン)から、色々なことが想像され、面白いものです。それにしても、小さな昆虫が小型動物

に食べられ、より大きな鳥に食べられ、、、という食物連鎖。大きな捕食者は、いかにたくさんの生物によって維持されて

いるか。これは人間も同じですが。

 

 多くの生物の種類と個体数を維持している中山間地域の環境のすばらしさを、改めて実感します。

 

ペリットの写真画像1

ペリット。ちょっとした芸術品です。

 

ペリットの写真画像2

 

崩したペリット。黒っぽいの物のほとんどは昆虫のパーツ。

一体どれだけの数の昆虫が入っているのか見当もつきません。

 

農林技術福井

 

 

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