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実事求是〜日韓のトゲ、竹島問題を考える〜

第18回

荒唐無稽な保坂教授の珍説と「子どもと教科書全国ネット21」等の暴走

 

 「竹島の日」の記念式典は、今年で4年目を迎えた。それと同時に、韓国側の主張に同調する人々の動きも露骨になった。2月21日、東京では韓国の政府機関である東北アジア歴史財団の後援を受け、「子どもと教科書全国ネット21」(事務局長俵義文氏)による日本・韓国共同シンポジウムが開催され、「竹島の日」の式典当日、同じ松江市内で外務省批判を続ける内藤正中島根大学名誉教授の出版記念講演と銘打ったシンポジウムが開かれた。

 さらに23日付けの韓国の中央日報は、世宗大学独島総合研究所の保坂祐二氏のインタビュー記事を載せ、19世紀初の「海東輿地図」と19世紀中頃の「海左全図」に描かれた于山島を竹島と決め付け、「日本よこの地図を見よ、独島がどこの領土か」と報じた。

 保坂氏によると、日本側はこれまで、欝陵島の東2キロにある竹嶼を于山島としてきたが、「海東輿地図」と「海左全図」の于山島には山の峰が描かれている。平坦な島である竹嶼に山の峰が描かれるはずはないので、于山島は竹島に違いないとしていた。

 だがそれは、荒唐無稽な珍説である。「海東輿地図」と「海左全図」に描かれた于山島を見ると、山の峰は欝陵島と同じく緑色で彩色が施されている。それを岩礁に過ぎない竹島と決め付けるのは無理がある。それに竹島は、男島(西島)と女島(東島)の二島からなり、元禄図や享保図の「竹島松島の図」の段階で、すでに日本側では二島と認識していた。

 保坂氏は、一島だけが描かれた于山島を今日の竹島とするが、地図上の于山島は1711年の朴錫昌の欝陵島捜討を経て、竹嶼を指すようになった。それは「欝陵島図形」で、朴錫昌が竹嶼に「所謂于山島」と注記したからで、「海東輿地図」と「海左全図」もそれを踏襲している。その証左となるのが1882年、欝陵島踏査に赴いた李奎遠の「欝陵島外図」である。「欝陵島外図」に竹島として描かれた小島は、朴錫昌の「欝陵島図形」で「所謂于山島」と注記された小島である。その小島が竹島とされたのは1881年、北澤正誠が日本の天城艦による欝陵島の測量を根拠に、『竹島考証』と『竹島版図所属考』で竹嶼を竹島としたからである。1711年以後、地図上の于山島が竹嶼であったことは明白である。

 それを韓国側が、于山島を今日の竹島と強弁し続けるのは、『東国文献備考』(1770年)の分註が『輿地志』を引用し、「于山島は所謂倭の松島(現竹島)なり」としているからである。だが分註に引用された「輿地志」の文言は後世の捏造によるもので、于山島が松島(現竹島)であった論拠にはならない。それは原典の『輿地志』には「于山欝陵本一島」とあって、于山島は欝陵島のこととされ、松島については何も書かれていないからだ。

 外務省が昨年2月に刊行した『竹島問題を理解するための10のポイント』では分註の改ざんの事実を指摘したが、外務省批判を続ける内藤正中氏はそれを異説とするだけで、竹島が韓国領であったとする実証ができずにいる。その事実無根の内藤氏の主張に付和雷同し、敢えて「竹島の日」に合せてシンポジウムを開催した「子どもと教科書全国ネット21」等の目的はどこにあったのだろうか。それも韓国の政府機関の後援を受けての活動であった。領土問題では歴史的権原が問題となる。それは歴史を捏造し、故意に日本を貶めてもよい、ということではない。領土問題を論ずるには、確かな歴史的根拠が必要である。

 以下は、2月23日の韓国中央日報に掲載された「海東輿地図」(上)と「海左全図」(下)。欝陵島の東側に位置する于山島には、朝鮮半島や欝陵島と同じく、緑色で彩色された山の峰が描かれている。これを樹木のない竹島にこじつけるのは、無理がある。

(下条正男)

2.23

 

 


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